JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図―投影法―第1部:通則

       製図―投影法―第1部:通則

          JIS Z 8315-1

 

序文 前部略

 技術の広い分野で、種々の投影法が対象物を表現するために使われている。これらの

投影法は、独自の長所があるが不都合な面もある。

 通常の製図では正投影がよく使われる。正投影による製図では、二つ以上関連する投

影図を使い、断面を適切に選ぶことによって、対象物を完全に定義できる(JIS  Z 

8315-2  を参照)。

 しかし、二次元の図面を描くためには投影法とその解釈が必要になる。それによっ

て、読図者は個々の投影図から三次元の対象物を総合することができる。

 多くの技術分野では、その進歩とともに、読図者が簡単に分かる絵画的表示が必要で

ある。絵画的表示と呼ばれるこのような図面は、読図者に分かりやすいように対象物を

三次元の図にする。絵画的表現を理解するために、技術的に特別な訓練を必要としな

い。絵表示は、それ自身で対象物を表現してもよく、又は正投影を補足してもよい。

 各種の絵表示法が存在するにもかかわらず、それらの名称(用語)は不統一で、矛盾

した使われ方もされている。

 三次元の各種の図表示法ができるCAD製図の進歩発展に伴って、地球規模の技術交流

が増え、ISO/TC10は、この問題を整理することにした。

 この規格を、機械製図、土木製図、建築製図、マニュアル、操作説明書、X線投影

図、及び分解立体図などの技術分野で使用することを推奨する。

 なお、この規格で点線の下線を施してある箇所は、原国際規格にない事項である。

 点線の下線については省略しています。

 

1. 適用範囲 この規格は、投影法の種類と幾何学的関係を規定する。第2部から第4

部までは、種々の投影法の選び方と使い方についての詳細を規定する。

 

2. 引用規格 次に掲げる規格は、この規格に引用されることによって、この規格の規

定の一部を構成する。この引用規格は、その最新版(追補を含む。)を適用する。

  JIS  Z  8114  製図ー製図用語

   備考 省略

  JIS  Z  8315-2  製図―投影法-第2部:正投影法

   備考 省略

  JIS  Z  8315-3  製図―投影法-第3部:軸測投影

   備考 省略

  JIS  Z  8315-4   製図―投影法-第4部:透視投影

   備考 省略

  JIS  Z  8907  方向性および運動方向通則

   備考 省略

 

3. 定義 この規格で用いる用語の定義は、JIS  Z  8114  及び次による。

3.1 絵画的表現pictorial representation) 平行投影又は透視投影で平面上に表し

た対象物の三次元像。

3.2 図示図形true view) 対応する対象物と幾何学的に同じ図形になるように、

投影面平行な面上に置いた対象物の形体図形。

3.3 分解立体図exploded view) すべての要素を分離したのち、互いに関連づけ

られている軸に沿って各要素を同じ尺度で、かつ、組立順に描いた組立図。

   備考 分解立体図を、切断によって外部を取り除き、部品の内部を示した断面

(切断面)と混同しないようにする。

3.4 主投影図principal view) 対象物の主要な特徴を表す図形をいう。主投影図

の選択は、設計、組立、販売、サービスまたは保守の都合から決めてもよい。

4. 投影法 投影法を以下の要素によって定義する。

― 投影線の種類:平行投影線又は収束投影線を使う。

― 投影線と投影面の位置関係:正投影又は斜投影で決まる。

― 対象物(その主となる形体)の位置:投影面に対して平行又は直角若しくは斜めの

  位置のいずれかでよい。

  投影法の種類と相互関係を表1に示す。

5. 座標関係(Geometrical orientation) 空間における対象物の位置関係は、座標軸

及び座標面によって与えられる。座標軸と面は、右手の法則( JIS  Z  8907  参照)によ

って決められる。

5.1 座標軸Coordinate axes) 座標軸は、原点で互いに直交する想像上の線であ

る。

 座標軸は3本あり、大文字X、Y及びZ軸で示す(図1参照)。

5.2 座標平面Coordinate planes) 互いに直交する空間上の三つの平面をいう。

一つの座標面は、二つの座標軸で構成され、原点を含む。各座標面を、それぞれXY、

YZ及びXZと表示する(図2参照)。

  備考 座標面と投影面はいつも同じ面になるとは限らない。必要な時、適切な指示

     又は表示を、図面上でするのがよい。

6. 変わらないものInvariables) 投影法の選び方によって、対象物の実体が次のよ

うに表示される。

6.1 透視投影法で変らないもの 透視投影法では、投影面に平行な面内の角度は変

わらない。したがって、投影面に平行な面内の図の形は同一である。

6.2 斜投影法で変らないもの 斜投影法では、以下のものが不変的である。

― 投影線に平行でない線群同士の平行性

― 線分の分割比の値

― 角度の数値、線の長さ及び投影面に平行な面内の図の形

6.3 正投影法で変らないもの 正投影法では、以下のものが不変的である。

― 投影線に平行でない線群同士の平行性

― 線分の分割比の値

― 角度の数値、線の長さ及び投影面に平行な面内の図の形

― 対象物内の直角部分で、投影線に平行な部分

 

      附属書A(参考) 参考文献

[1] ISO 128:1982, Technical drawings-General principles of presentation

    備考 JIS  Z  8316:1999 製図ー図形の表し方の原則が、この規格に対応す

       る。

 

 製図といえば、正投影で描かれたものが一般的である。あるいは、正投影で描かれ

たものが、製図であると認識されているのではないだろうか。

 したがって、正投影以外の投影法についてはさほど気にしておく必要はないだろう。

この規格も、正投影以前の基本的な考えであるので、機械製図の実務には直接関連する

ことはないであろう。

 しかしながら、座標軸、座標面については、以後出てくる第三角法、第一角法を理解

するの必要不可欠である。

 この規格の 5. 座標関係 にある右手の法則は、JIS  Z  8907  参照 である。

この JIS  Z  8907 は、"空間的方向性および運動方向ー人間工学的要求事項" とい

う規格であるが、右手の法則がここで定義されているわけではなく、用語及び定義の中

の軸線の項の注記で、"右手直交座標系とは、三次元空間中の直交する三つの軸(X

軸、Y軸及びZ軸)の正の方向を、右手の互いに直交させた親指、人差し指及び中指の

指す方向にそれぞれ取った3軸からなる座標系をいう" と説明されているだけであ

る。

 5.1 座標軸の図1と、5.2 座標平面の図2の座標軸は、当然同じである

が、見る位置が違うので、右手の法則を絡めて考えると、手首が痛くなってしまう。