このブログは、JIS規格の製図、なかでも機械製図に関するものを説明していま
す。
まず、JIS規格本文を掲載し、それについて解説やコメントがある場合、※を付け
てJIS規格とは違う観点からの考えを述べています。
機械製図
JIS B 0001
8 投影法 (続き)
8.5 矢示法
第一角法及び第三角法の厳密な形式に従わない投影図によって示す場合には、矢印を
用いて様々な方向から見た投影図を任意の位置に配置することができる。
主投影図以外の各投影図は、その投影方向を示す矢印及び識別のために大文字のラテ
ン文字で指示する。その文字は、投影の向きに関係なくすべて上向きに明りょうに書
く。
指示された投影図は、主投影図に対応しない位置に配置してもよい。投影図を識別す
るラテン文字の大文字は、関連する投影図の真下か真上のどちらかに置く。一枚の図面
の中では、参照は同じ方向で配置する。その他の指示は必要ない(図17及び図18参
照)。
注記 図18a)は、投影法を示すための図であり、製図では部分的に省略されるこ
ともある(10.3参照)。
図18-矢示法の例
※ 図面の中でよく見かけるのは、”A矢視“ と記入してあるもの。矢印と大文字のラ
テン文字(前に述べた線と文字の項参照)でよいのだが、余計なものをつけてさらに矢
示と矢視と誤用している。
旧規格で矢視というのがあったらしく、それが延々と使い続けられているのだろう
か。
他にも、”Aより見る” ”A View“ あるいは目玉マークなどがあるが、いずれも規
定にはなく間違いであるが、様々な方向から見た投影図ということなので、意味は正し
く通じる。さほど目くじらを立てることでもない。
文字の向きは投影の向きに関係なくすべて上向きである。文字は投影図の真下か真上
のどちらかで、横には置かない。アンダーラインも不要である。間違いの例を下に示す
が、間違いというより正しくないというべきか。
ついでながら、”矢示法゛は何と読むか。”やしほう” が一般的であろうが ”やじほ
う” という人もいる。
手元にある国語辞典、漢和辞典には掲載されておらず、JIS規格の中にも読み方の
規定はない。
″やしほう” であろうと ”やじほう” であろうと作られるものに変わりはないが、
いらぬ混乱を避けるために読みを分かるようにしてもらいたいものである。
と思っていたら、前頁の 投影法 8.1 一般事項 のなかに 矢示法(”やしほ
う”と読む。)との記載があった。どこで説明がされているか全く油断がならない。ど
うせなら、この項目の 矢示法 の中にも書いておいてもらいたいものである。
では、雲形定規はどうであろうか。 ”くもがた” か ”うんけい″ か。これは製図
用語の、用語索引で【く】の項目にあるから ”くもがた” で間違いない。今や製図で
使われることは少ないので雲形定規など知らない人が多いだろう。以前は劇画などで日
本刀の曲線を雲形定規で書いていた。今は知らないが、意外なところでの使い方がある
かもしれない。この項目には全く関係のない話であるが。
8.6 その他の投影法
対象物の形状を理解しやすくする目的などから、立体図を描く必要がある場合には、
等角投影、斜投影、透視投影などを用いて描く。等角投影、斜投影による製図は JIS Z
8315-3 、透視投影による製図は JIS Z 8315-4 による。
※ 立体図を描く必要がある場合には、等角投影、斜投影、透視投影などを用いるが、
実際にはそのような正確な投影図ではなく、見取り図が描かれる。
見取り図は、かつてはフリーハンドでも描かれた。形状を素早く理解するための補助
であるから正確なものはいらない。