JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図―投影法―第4部:透視投影

      製図―投影法―第4部:透視投影

         JIS  Z 8315-4

 

 この規格は前ページの軸測投影と同じく、機械製図ではほとんど使われることはな

い。参考としての掲載であるので、本文(JISでは本体)の一部、図の多くを省略し

てある。

 

序文 前部略 透視投影(中心投影)とは、投影面(通常、製図面)から有限の距離に

ある点(視点)から対象物を投影して、実物に近い絵画的な表現を与えるものである。

透視投影は、対象物を眼に見えるように表現(単眼画像 monocular vision)できるの

で、しばしば建築関係の製図に使用される。

 

1. 適用範囲 この規格は、JIS  Z  8315-1  に規定された一般規則に従って、すべての

技術分野であらゆる種類の製図に対して透視投影を行う場合の基本的な規則を規定す

る。

 

2. 引用規格 次に掲げる規格は、この規格に引用されることによって、この規格の規

定の一部を構成する。これらの規格は、その最新版(追補を含む。)を適用する。

  JIS  Z  8114   製図―製図用語

   備考 省略

 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は、JIS  Z  8114  及び次の定義を適用す

る。

3.1 アライメント線alignment line)投影中心(視点)(projection centre)を通

る与線に平行な線。投影面との交点は、与線に平行なあらゆる直線の消点(vanishing

point)になる。

3.2 視高height of projection)基準面(basic plane)から視点までの垂直距離。

3.3 視距離horizontal distance)視点と投影面(projection plane)間の距離。

3.4 投影角度projection angle)投影面と地平面(horizon plane)のなす角度。

3.5 測点scale point)水平なアライメント線と地平線のなす角度を二等分する線に

直交する水平方向にある消点。これによって、ある特定する線の投影の実長が分かる。

3.6 停点station of observation)視点を基準面上に正投影した点。

    参考 立点と呼ぶ場合がある。

 

4. 記号 透視投影で用いる用語、文字記号と参照図番を表1図1及び図2に示す。

表1の中の参照図番は、文字記号を参照できる図の番号を示す。

 

5. 透視投影法 透視投影の種類は、表現される対象物と投影面との位置によって分類

される。
5.1 一点透視投影法One-point method) 一点透視投影法は、対象物の主面が投

影面に平行な場合の透視投影である。この方法では、投影面に平行な対象物の外形線及

びりょう(稜)線は、すべて向きを変えない(水平な線は水平、垂直な線は垂直のまま

である。)。投影面に直角なすべての線は、消点Ⅴに収束する。この消点は視心Cに一

致する(図3及び7.2.17.3参照)。

5.2 二点透視投影法Two-point method)二点透視投影法は、対象物の外形線及び

りょうの垂直部分が投影面に平行な場合の透視投影法である。この方法では、投影図の

すべての水平な線は、地平線上の相対する消点Ⅴ₁、V₂、V₃・・・に収束する(図4及び

7.2.27.4参照)。

5.3 三点透視投影法Three-point method)三点透視投影法は、対象物のいずれの

外形線やりょう線も投影面に平行ではない場合の透視投影法である。投影面が視点の反

対方向に傾いている場合、すなわち β>90° の場合には、垂直線の消点は、地平線の下

側になる(図5及び7.5.17.5.2参照)。

5.4 座標計算法Coordinate method)座標計算法による投影は、単純な比例関係

に基づいている。

 描かれる対象物のすべての点の主投影線を基準とする座標は、基準面及び立面図によ

って与えられ、これらの座標から図式解法によって求める。これらの点の座標から、尺

度を考慮した計算によって透視投影図の座標を求められる。これらの点を結ぶことによ

って、対象物を明確に表現できる(図6参照)。

 

6. 原理

6.1 投影面の位置と姿勢 対象物の透視投影図の大きさは、投影面を平行に移動する

ことによって変化する。対象物が投影面の前に置かれている場合は、投影図は大きくな

る。投影面の背後に対象物がある場合には、投影図は対象物よりも小さくなる。図7

は、投影面に対する対象物の位置によって像の大きさが変化する様子を示す。

 図8は、垂直又は傾斜した投影面に対する透視投影像の大きさの変化を示す。β は、

投影面と基準面のなす視点側の角度である。

            図1 透視投影の模式図

 

    図2 透視投影の模式図における視円すい及び視角度―省略

    図3 投影面に対して平行に置かれた対象物と垂直な投影面の模式図―省略

    図4 投影面に対して垂直に置かれた対象物と垂直な投影面の模式図―省略

    図5 投影面に対して任意の向き( β>90°に置かれた対象物と傾斜した投影

       面の模式図―省略

       参考―省略

    図6 投影面に対して平行に置かれた対象物と垂直な投影面の模式図

       透視像の計算のための長さを表示―省略

    図7 投影面の位置と像の大きさ―省略

    図8 投影面の傾きと像の向き―省略

6.2 視円及び視円すい 投影面上の周辺部でゆがみが生じない有用な透視投影図を得

るには、対象物を頂角が60°以内の視円すい内に置かなければならない。

 この範囲を超えると、透視投影図の周辺部に大きなゆがみを生じ、対象物の長さ、幅

及び高さの比率が合わなくなり、有用な透視投影図に見えない(図9参照)。

 投影線が主投影線を中心に30° 以内に収まれば、対象物はほとんどゆがみを生じない

で描くことができる。

 主投影線は、視覚的に重要な部分を通るように選ぶべきである。そうすることによっ

て、対象物は最小の視円すい内に収まる。

 

     図9 視円の内側と外側に置かれた対象物―省略

 

6.3 距離 相対距離の違いは、透視投影図の大きさと見え方に影響する。視点と対象

物が投影面を挟んで反対側にある場合には、対象物と投影面の距離を固定して視点と投

影面の距離(視距離d)を増大させると、投影面には拡大された平たん(坦)な形状が

得られる。視距離(d)を固定して対象物と投影面の距離を増大させると、縮小された

平たんな形状が得られる。

 

7. 作図原理及び方法

7.1 直接法Piercing method)直接法では、投影線と投影面の交点は、基準面(平

面図)と立面図に示される。この点は、作図によっても計算によっても求めることがで

きる(図10参照)。

 直接法によれば、複雑な形状の対象物(丸やら旋形状など)でも簡単に表すことがで

きる。

 

    図10 側面図とともに製図面へ展開する場合の模式図

7.2 消点法Trace-vanishing point methods)消点法では、対象物の外形線及びり

ょう線は基準面(平面図)と立面図から描くことができる。

7.2.1 消点法A(対象物が投影面に対して平行に置かれた場合) 消点法Aは、対

象物の一つの垂直面が垂直な投影面に対して平行に置かれる場合である。したがって、

投影面に平行なりょう線の消点の位置は無限遠となり、投影面に垂直なりょう線の消点

は視心となる(図11参照)。

   参考 消点法Aは、一点透視投影法と同じである。

7.2.2 消点法B(対象物が投影面に対して斜めに置かれた場合) 消点法Bは、対

象物の水平面が垂直な投影面に対して直角に置かれる場合である(対象物が、投影面に

対して斜めの位置に置かれる。)。したがって、水平面上の線は、投影面上の交点及び

消点によって描くことができる(図12参照)。

   参考 消点法Bは、二点透視投影法と同じである。

 

     図11 消点法Aによる投影面に対して平行に置かれた対象物の作図―省略

     図12 消点法Bによる投影面に対して斜めに置かれた対象物の作図―省略

7.3 距離点法Distance point method)(対象物が投影面に対して平行に置かれた

場合) 距離点法は、基準面を使わずに格子状の透視画面を設定することによって対象

物の透視投影図を描く方法である。外形線及びりょう線は、投影面に対して平行又は直

角な位置にある。視心から距離点までの距離は、視点から投影面までの距離に等しい。

投影面に対して45° 傾斜したすべての水平な線は距離点を通る。画面の奥行き方向の消

点は、視心である(図13参照)。

 

     図13 投影面に対して平行に置かれた対象物の作図―省略

7.4 測点法Scale point method)(対象物が投影面に対して斜めに置かれた場

合) いかなる消点も、それに対応する測点がある。測点を用いることによって、描か

れる対象物のある寸法を、投影面の基準線から奥行き方向の線上に移すことができる

図14参照)。基準面上に、対象物の透視図と対象物自体の一定の関係を求めることが

できる。

 

    図14 投影面に対して斜めに置かれた対象物―省略

7.5 傾斜した投影面に対する消点法Trace point method with inclined projection

plane)

    参考 これは、三点透視投影と同じである。

7.5.1 β90° で傾斜した投影面 地平面に対して投影面が傾斜しているため、対

象物の垂直線の消点は無限遠ではなく有限になる。垂直線の消点の位置は、水平面に対

する投影面の傾斜角 β によって地平線の上に定まる。対象物の垂直線は傾斜した線にな

り、視覚的なひずみが生じ、先細りに見える(15参照)。

 

    図15 視点方向に傾斜した投影面の前に置かれた対象物―省略

7.5.2 β>90° で傾斜した投影面 投影面が視点と反対側に傾斜しているため、対

象物の垂直線の消点は無限遠から有限になり、地平線の下に移る。したがって、投影さ

れた垂直線は傾斜し、視覚的にひずみが生じ、先細りに見える(図16参照)。

 

    図16 視点から離れる方向に傾斜した投影面の前に置かれた対象物―省略

7.6 座標計算法Coordinate piercing method)座標計算法は、単純な比例関係に

基づいたもので、各投影線の投影面との交点を作図によってではなく、計算によって求

める。この方法は、二つの参照面によって空間を四つの象限に分けることが基本にな

る。一つの参照面は水平で、もう一つの参照面は垂直である。両面は直交しており、そ

れらの交線が主投影線になるように定める。水平参照面及び垂直参照面と投影面の交線

を、それぞれ投影面上に設定された直交座標系のX軸とY軸とする。その原点は視心で

ある。――以下省略

  備考1 省略

     

        図17 座標計算法―省略

 

8. 透視投影の展開図 基準面を投影面に展開する(図1参照)ことで、基準面上の投

影図を同一面(作図面)上に表し、さらに、立面図の寸法が表現された完全な透視図を作

成できる。

 基準面を展開させるのに、二つの方法がある。

8.1 基準面を下向きに回転させる方法 停点(Sp)は基準線(X)の下側で、C点

から距離dの位置にある。基準線の上側に透視投影図が、下に基準面がくるので、互い

に重なり合うことはない。この配置は正規配置(regular arrangement)と呼ばれ、最も

適しているが、製図面にかなりのスペースが必要である(図18参照)。

 

            図18 正規配置―省略

               (透視投影図は基準線Xの上にくる。)

8.2 投影面を基準線の下側に配置する方法 この方法による配置は頻繁に使われてい

る。製図面のスペースを節約できるため、省スペース配置(economy arrangement)と呼

ばれている(図19参照)。

 

            図19 省スペース配置-省略

               (透視投影図は基準線Xの下にくる)

 

    附属書A(参考) 各種の透視投影法による作図例

 次のA.1からA.17までの図は、本体の7.で規定している各種の作図方法の幾つか

を例示したものである。

   ―図はすべて省略―

    附属書B(参考) 参考文献

 [1]~[6]及び備考すべて省略

 

 最初に述べたように、この透視投影法は機械製図において、ほとんど使われないも

のである。

 したがって、規格中の図はほとんど省略した。附属書Aの作図例も一点を除いて、建

築に関するものなので、すべて省略した。

 機械製図に使用するとすれば、取扱説明書などに使用する、見取り図的なものがある

が、この場合も、この規格のような正式な透視投影を適用して作図する必要はない。

 機械製図の規格でも、立体図を描く必要がある場合は、等角投影、斜投影、透視投影

などを用いて描く、となっており、等角投影、斜投影による製図は、JIS Z 8313-3、透視

投影による製図は、JIS Z 8313-4 による、と規定されているだけである。