JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

はじめに

 JISは定期的に改訂され、機械製図においても2010年の改定で寸法補助記号の Φ(まる)の読み方に ”ふぁい” が追加された。


 PCで素早くΦ記号を表示するために、ギリシャ文字のφを代用していたのだが、呼びまで”ふぁい”も認めるということであろうか。


 しかし、実際に直径を呼ぶ場合、例えば  "Φ10"  は、正しくは ”まる10” と読むのだが、現在でもほとんどの人が ”10パイ” と言っている。

 なぜそうなっているのかは諸説あるようで詳しくは後述するとして、これはJIS規格に規定されていることと実際に行われていることが全く違っていることの典型的な例ではないかと思う。

 

 機械製図のなかにも Φ の読み方のように実際と違っている、あるいは規定と違っていたほうが混乱しない、正しく理解されるということが見られ、これらがまかり通ってていることもあるようなので、このことをまとめてみようと思った。

 題名の「JISによらない…」とは無論根底からJISの規定を無視して全く別の描き方をしようとするものではなく、一つの見解、問題提起である。

 

 正しい描きかたはいろいろな方が説明しているので、こう描いちゃっていますよ、規定とは違うけどダメかな、という疑問であり、いわゆる製図あるあるというところである。しかし、「ここがだめだよ JIS製図」ということではない。

 

 なかには、わたくしなりの見解を述べたものもあるが、言い換えれば、JIS規格に対しての、いちゃもん、言いがかり、難癖、八つ当たり、であり、茶々を入れる、といった類のことである。気楽に見ていただきたいと思います。

 

 しかし、現在のJIS規格を説明しないわけにはいかないので、JIS規格を載せてわかるようにしています。とはいえJIS規格の説明になってしまっているのが、大部分なのですが。

  なお、参考にしているJIS規格は、JISハンドブック、製図、2014年版であるので、疑問がある場合は最新版で確認をお願いします。

 

 ※ 日本工業規格は、2019年7月1日の法改正で、日本産業規格に変わっていま

す。英語名は、Japanese Industrial StandardS で

変わっていません。略称の JIS も同じです。

 

 

 

機械製図 線と文字 (改訂版) 続き

        機械製図

        JIS B 0001

 

 この頁は、以前の頁 線と文字の改訂版で、文字についての頁となります。線につ

いては、直前のページになります。

 

 

7 文字及び文章

7.1 文字の種類及び高さ

7.1.1 文字の種類

 文字の種類は、次による。

 

) 用いる漢字は、常用漢字表(昭和 56 年 10 月 1 日内閣告示第1号)によるのがよ

   い。ただし、16 画以上の漢字はできる限り仮名書きとする。

) 仮名は、平仮名又は片仮名のいずれかを用い、一連の図面においては混用しな

   い。ただし、外来語、動物・植物の学術名及び注意を促す表記に片仮名を用いる

   ことは混用とはみなさない。

     外来語表記:ボタン、ポンプ

      注意を促す表記:塗装のダレ、コトコト音

) ラテン文字、数字及び記号の書体は、A形書体又はB形書体の何れかの直立体又

   は斜体を用い、混用はしない(JIS  Z  8313-0  参照)。ただし、量記号は斜体、

   単位記号は直立体とする。

 

 図面の中の文章に使われる仮名文字は以前は片仮名が多かった。鉛筆書きしていた

時は力が入りやすくかけるため、コピーした時もにじんだりせず鮮明に見えるからであ

ろう。

 現代はコピー技術も進化しており、コピーして不鮮明になるようなことはない。平仮

名でも問題はない。

  漢字の場合も同様の理由からか16画以上の漢字はできる限り仮名書きとする、となっ

ている。16画以上となると ”整” “機” “鋼” などが当てはまる。規定にもとずく

と ”機械製図” は ”キ械製図“ ”鋼材” は“コウ材” となり キカイ(奇怪)なこと

になる。画数などを数えて書くことなどないのだから気にすることはない。この規定の

コウザイ(功罪)はどんなもんであろうか。

 

 量は、物の大きさ広さなどのことで、量記号はそれを表す記号のこと。例えば機械

製図では、長さの l 、角度の α や β など。 単位は量を数値で表すための基準で、単位

記号はそれを表す記号。例えばメートルのmや角度の rad や  ° 、′ 、″  などのことであ

る。

 

7.1.2 文字高さ

 文字高さは、次による。

) 文字高さは、一般に文字の外側輪郭が収まる基準枠の高さ h の呼びによって表

   す。

    注記 漢字、平仮名及び片仮名の文字高さは、 JIS  Z  8313-10  に規定する基

       準枠の高さ h で表す。

       また、ラテン文字、数字及び記号の文字高さは、 JIS  Z  8313-1  に規定

       する基準枠の高さ h で表す。

) 漢字の文字高さは、呼び 3.5 ³⁾ mm,5 mm,7 mm  及び 10 mm の4種類とす

   る。また、仮名の文字高さは、呼び 2.5 ³⁾ mm、3.5 mm、  5 mm、7 mm 及び

   10 mm の5種類とする。ただし、特に必要がある場合には、この限りでない。

    なお、既に文字高さが決まっている活字を用いる場合には、これに近い文字高

   さで選ぶことが望ましい。

     ³⁾ ある種の複写方式では、この大きさは適さない。特に、鉛筆書きの場合

       には注意する。

) 他の漢字及び仮名に小さく添える"ゃ"、"ゅ"及び"ょ"[よう(拗)音]、

   つまる音を表す"っ"(促音)など小書きにする仮名の文字高さは、この比率に

   おいて 0.7 とする。

) ラテン文字、数字及び記号の文字高さは、呼び 2.5 ³⁾ mm、3.5 mm、  5 mm、7

   mm、及び 10 mm の5種類とする。ただし、特に必要がある場合には、この限り

   ではない。

 

 ついでながら ”A” “B” ”C” は、ローマ字あるいはラテン文字である。JIS

では英文字という表現は使われない。正式にはラテン文字ということらしい。PCのキ

ーなどは英字、英数文字となっているのに。

 

 

) 文字間のすき間(a)は、文字の線の太さ(d)の2倍以上とする。

    ベースラインの最小ピッチ b は、用いる文字の最大の呼びの 14/10 とする(

   8参照)。

) 漢字の例を図9に、仮名の例を図10に、ラテン文字及び数字の例を図11に示す。

 

  この図では書体は游ゴシックを使用した。

 図9以下のフォントは、MSゴシック及びMSゴシックを一部修正したものを使用

した。

7.2 文章表現

 文章表現は、次による。

) 文章は、口語体で左横書きとする。

    なお、必要に応じて、分かち書きとする。

) 図面注記は、簡潔明りょうに書く。

    例 図面注記1 測定の標準温度は、JIS  B  0680  による。

           A面は、す(摺)り合わせとする。

 

 図面中の文章は意外と読まれないものである。長々と書かれているものほどその傾

向にある。もちろん、目を通さないことはないが加工中まで完全に理解されていること

はない。加工中寸法を追っているときに文字は追わない。できるだけ図示して、図では

充分に表せないもの、特に強調したいものにとどめておいたほうが良さそうである。

 

 文章は、左横書きと規定されているが、図面のスペースにより縦書きの方が良い場合

もある。横書きにこだわる必要はない。

 

 必要に応じては分かち書きにする。分かち書きとは、文章において語と語の間をあけ

て書く書き方である。例えば、「必要に 応じては 分かち書き にする」 などの書

き方である。読みやすくわかりやすいものとするには、一つのやり方である。

 

 句読点(くとうてん)もその一つであるが、規定には何もない。最近では句点に拒否

反応があるようでもある。

 句読点には、区切るということからお祝い事には使用しないというマナーがある。

また、句読点をいれた場合、入れないと読めないだろうということから、見下してい

る。逆に、入れない場合は、入れなくても読めるでしょうという尊敬の気持となる、な

ど場合により様々な作法があるようである。

 技術文書においてはこのようなことは、考慮する必要はない。図面として正しく伝え

られることを考えておけばよい。

 

 図面注記の例にある、摺り合わせは、おそらく摺が、常用漢字ではなので、す(摺)

り合わせとしたのだろうが、この程度の専門用語に、このような表記をする必要はな

い。

 常用漢字の担当官庁が文科省かどうかは知らぬが、技術用語については官庁にすり寄

る必要はない。

 句読点は、技術専門用語ではないので、くとうてん と読みを入れておきました。