製図―図形の表し方の原則
JIS Z 8316
序文 省略
1. 適用範囲 この規格は、正投影法による製図に適用される一般原則を規定する。
正投影法以外の表現方法に関する規格は、現在準備中である。
この規格は、あらゆる種類の製図(機械、電気、建築、土木など。)に適用する。し
かしながら、幾つかの特殊な技術分野では、一般的な規定や慣例は、特別の業務の要求
に対して十分に対応できない。そのような場合には、別の規格で規定される付属事項で
規定することは認められている。しかし、これらの分野においても、国際的な図面の交
流の促進や幾つかの技術部門に関係するような総合的なシステムにおける図面の統一を
実現するために、この規格の一般原則を守らなければならない。
この規格では、マイクロコピーを含む図面の複製に必要な事項にも注意を払っている。
※ 機械製図では、例えば、次の2.の項目の投影図は第三角法によると規定されてい
る。
しかしこの規格では、第三角法、第一角法、二つの投影法は同等である。どちらかが
優先されるということはない。
このことはどのように理解すればよいか。適用範囲の文面から判断すれば、国際的な
関連の図面なら、この規格が適用される。海外では、第一角法が主流なところもあるの
で、相手国の状況に合わせて、第一角法か、第三角法で描くことになる。国内だけのも
のならば、機械製図の規定を取り入れて第三角法で描くのが良いだろう。
2. 投影図
2.1 投影図の名称
a方向の投影=正面図
b方向の投影=平面図
c方向の投影=左側面図
d方向の投影=右側面図
e方向の投影=下面図
f方向の投影=背面図
正面図(主投影図)が選ばれると(2.4参照)、慣例による他の投影図は、正面
図及びそれらのなす角度が90° 又は90° の倍数になる(図1参照)。
2.2 投影図の相対的な位置 二つの正投影法を同等に用いることができる。
― 第一角法(従来のE法に対応)
― 第三角法(従来のA法に対応)
備考1. 第一角法と第三角法は、同等に用いることができるが、この規格に示す
図例は、統一をとるために第三角法で描いてある。
参考 ISO 128では、図例は、第一角法で描かれている。
2. この規格に示す図は、規定内容の理解を助けるために必要な事項だけを
表した例であって、設計の例として示すものではない。
2.2.1 第一角法 正面図(a)を基準とし、他の投影図は次のように配置する(図
2参照)。
平面図(b)は、下側に置く。
下面図(e)は、上側に置く。
左側面図(c)は、右側に置く。
右側面図(d)は、左側に置く。
背面図(f)は、都合によって左側又は右側に置く。
第一角法の記号は、図3のように表す。
2.2.2 第三角法 正面図(a)を基準とし、他の投影図は次のように配置する(図
4参照)。
平面図(b)は、上側に置く。
下面図(e)は、下側に置く。
左側面図(c)は、左側に置く。
右側面図(d)は、右側に置く。
背面図(f)は、都合によって左側又は右側に置く。
第三角法の記号は、図5のように表す。
※ 第一角法、及び第三角法については、以前の頁、投影図 及び 製図―投影法―第
2部:正投影法 を参照してください。
そこでも述べているが、この頁のように、第三角法と第一角法の違いを、図の配置だ
けにとらえていると、投影法を正しく理解することができない。
この規格でも、投影法の基本を説明しておく規定があった方が良い。
2.2.3 矢示法 第一角法と第三角法の厳密な形式に従わない投影図によって示す場
合は、矢印を用いて様々な方向から見た投影図を自由な位置に置くことができる。
主投影図以外の各投影図は、その投影方向を示す矢印と識別のために大文字のローマ
字で指示する。
指示された投影図は、主投影図に対応しない位置に配置してもよい。投影図を識別す
るローマ字の大文字は、関連する投影図の真下か真上のどちらかに置く。一枚の図面の
中では、参照は同じ方向で配置する。その他の指示は必要ない(図6参照)。
※ 矢示法(やしほう)についても、以前のページ 矢示法、その他の投影法 の矢示
法の項目を参照願います。
これもそこで述べているが、矢示法の投影図の識別記号は大文字のローマ字だけであ
る。方向も同一図面内では同じ方向となる。
識別記号に関しても、いろいろな表現が見られる。理解されやすいと思ってのことで
あろうが、規定どうりにシンプルにしておいた方が良い。
異なった指示がそのままになっているのは、違った表現でも違う解釈をされてしまう
恐れはなく、したがって規定の指示ではないと指摘して訂正させる人もいないからで
あろう。
2.3 投影法の指示 2.2.1及び2.2.2で指定した投影法の一つを用いる場合には、
用いた投影法を図3又は図5に示す投影法を表す記号によって図面上に明示する。
記号は、図面上の表題欄の所定の位置に記入する。
2.2.3に示した参照矢印を用いて投影図を配置する場合には、投影法を表す記号は
必要ない。
※ 投影法を表す記号についても、以前の頁 図面の大きさ、および様式 の 図面の
様式 の項を参照願います。
投影法を表す記号の寸法等については、同じく、以前の頁 製図―投影法―第2部:
正投影法 の附属書A 図記号の比率及び寸法 を参照願います。
2.4 投影図の選択 最も対象物の情報を与える投影図を、正面図又は主投影図とす
る。一般的に、この投影図は機能的な姿勢で描く。あらゆる姿勢で用いることができる
部品は、加工や組付けを考慮した姿勢で描くのが望ましい。
他の投影図(断面図を含む)が必要な場合には、次に示す原則に従って選ぶ。
―あいまいさがないように、完全に対象物を規定するのに必要、かつ、十分な投
影図や断面図の数に限る。
―隠れた外形線やエッジを必要としない投影図を選ぶ。
―不必要な細部の繰り返しを避ける。
※ この項目についても、以前の頁 図形の表し方の 投影図の表し方の項を参照願い
ます。
2.5 特殊な投影図 2.1に示した投影方向と異なる投影面が必要な場合又は2.2.1
及び2.2.2に示した投影法を用いても正しい投影図の配置ができない場合には、それ
ぞれの投影図を2.2.3に示した参照矢印で指示しなければならない(図7及び図8参
照)。
いずれの投影方向でも、投影図を参照する大文字は図面に垂直に記入する。
※ この場合の、参照用の大文字は、垂直方向だけである。位置については特に指示は
されていないが、矢示法と同じく図の真上か真下にしておいた方が無難である。
2.6 部分投影図 部分投影図は、完全な投影図が与える情報より減ることがない場合
に用いることができる。部分投影図は、フリーハンドの細い実線(線の種類C)又はジ
グザグの直線(線の種類D)によって切断して示す(図7、図9、図10、その他参
照)。
※ 切断線は、機械製図では、明確な場合には省略してもよいとなっている(図形の
表し方 の頁 部分投影図の項 参照)。
2.7 局部投影図 間違いを生じない場合には、対称な部分に対して、完全な投影図の
代わりに局部投影図で示してもよい。局部投影図は、第三角法で示すのがよい。
局部投影図は、太い実線(線の種類A)で描き、主投影図との投影関係を中心線(線の
種類1G)で示す。局部投影図の例を図41、図42、図43及び図44に示す。
図9
※ 局部投影図は、対称な部分に対して適用される。中心線上に示されるので、矢印や
識別記号は不要となる。