JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図―公差表示方式の基本原則

    製図ー公差表示方式の基本原則

       JIS B 0024

 

※ この規格は、2019年の改正で、「製品の幾何特性仕様(GPS)ー基本原則―GPS

に関わる概念、原則及び規則」となり大幅に変更,というより全く別なものとなって

る。しかしここでは旧規格をそのまま掲載することにする。

 

1. 規定範囲

 この規格は、寸法公差(長さ寸法  及び  角度寸法)と幾何公差との間の関係の原則

について規定する。

2. 適用分野

 この規格で規定する原則は、図面  及び  それに関する技術文書における以下の項目に

適用する。

   ― 長さ寸法  及び  その公差

   ― 角度寸法  及び  その公差

   ― 幾何公差

 これらの項目は、部品の個々の形体に対し、次の四つの特性を定める。

   ― 寸 法

   ― 形 状

   ― 姿 勢

   ― 位 置

     参 考:ここでは形状、姿勢  及び  位置を幾何特性 (geometry) という。

3. 参考規格

  ISO 規格 3項目省略

4. 独立の原則

 図面上に個々に指定した寸法 及び 幾何特性に対する要求事項は、それらの間に特別

の関係が指定されない限り、独立に適用する。

 それゆえ何も関係が指定されてない場合には、幾何公差は形体の寸法に無関係に適用

し、幾何公差と寸法公差は関係のないものとして扱う。

 したがって、もし、

   ― 寸法と形状 又は

   ― 寸法と姿勢 又は

   ― 寸法と位置

との間に特別な関係が要求される場合には、そのことを図面上に指定しなければならな

い(6.参照)。

5. 公差

 5.1 寸法公差

  5.1.1 長さ寸法公差

 長さ寸法公差は、形体の実寸法(actual local size)(2点測定による)だけを規制

し、その形状偏差(例えば、円筒形体の真円度、真直度 又は 平行二平面の表面の平面

度)は規制しない(ISO 286/1 参照)。

 形状偏差は、次のもので規制する。

   ― 個々に指示した形状公差

   ― 普通幾何公差

   ― 包絡の条件

    備 考 ― この規格では、単独形体は一つの円筒面 又は 平行二平面の表面

    で構成されているものとする。

    長さ寸法公差は、個々の形体間の幾何学的な関係を規制しない。例えば、長さ

    寸法公差は、立方体の側面の直角度を規制しないので、直角度公差を設計上の

    要求によって指示する必要がある。

  5.1.2 角度寸法公差

 角度の単位で指定した角度寸法公差は、線 又は 表面を構成している線分の一般的な

姿勢だけを規制し、それらの形状偏差を規制するものではない(図1参照)。

 実際の表面から得られる線の一般的な姿勢は、理想的な幾何学的形状の接触線の姿勢

で決まる(図1参照)。このとき、接触戦と実際の線の間の最大間隔できるだけ小

さい値でなければならない。

 形状偏差は、次に示す公差で規制する。

   ― 個々に指定した形状公差

   ― 普通幾何公差

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 5.2 幾何公差

 幾何公差は、形体の寸法に無関係に、その形体の理論的に正確な

   ー 形状 又は

   ー 姿勢 又は

   ー 位置

からの偏差を規制する。

 そのため、幾何公差は、個々の形体の局部実寸法とは独立に適用する(4.参照)。幾

何偏差は、その形体の横断面が最大実体寸法であるかどうかにかかわらず、最大値を採

ることができる。

 例えば、ある任意の横断面において最大実体寸法をもつ円筒軸は、真円度公差内でひ

ずんだ形の偏差(lobed form deviation)をもつことができ、また真直度公差の大きさだ

け曲がることも許される[図2)及び図2)参照]。

f:id:moriumm:20211106113655p:plain

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6. 寸法と幾何特性との相互依存性

 寸法と幾何特性との相互依存性は、

   ー 包絡の条件(6.1参照)

   ー 最大実体公差方式(6.2参照)

を用いて指示することができる。

 6.1 包絡の条件

  包絡の条件は、単独形体、つまり円筒面又は平行二平面によって決められる一つの

形体[サイズ形体(feature of size)]に対して適用する。この条件は、形体がその最大

実体寸法における完全形状の包絡面を越えてはならないことを意味している。

 参 考 単独形体については、5.1.1備考を参照のこと。

 包絡の条件は、以下のいずれかによって指定される。

   ー 長さ寸法公差の後に記号Ⓔを付記する[図3)参照]。 

   ー 包絡の条件を規定している規格を参照する。

    :円筒形体に適用した包絡の条件

       () 図面指示 図面指示の例を図3)に示す。

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       () 機能上の要求事項
         図3)で指定される機能上の要求事項は、次のとおりである。

        ― 円筒形体の表面は、最大実体寸法Φ150における完全形状の包絡面

     を超えてはならない。

        ― いかなる実寸法もΦ149.96より小さくてはならない。

      これは、形体の実際の各部分が以下の要求を満たさなければならないとい

     うことを意味する。

        ― 円筒軸の個々の実直径は、寸法公差0.04内に収まっていること、

     したがって、Φ149.96からΦ150の間を変動できること[図3)参照]。

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        ― 円筒軸全体が、完全形状でΦ150の包絡円筒の境界の内部にあるこ

     と[図3)及び図3)参照]。

f:id:moriumm:20211108155148p:plain

     したがって、すべての個々の実直径が最大実体寸法Φ150である場合には、軸

    は正確に円筒形状でなければならない[図3)参照]。

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 6.2 最大実体公差方式

 機能的、経済的理由から形体(群)の寸法と、姿勢 又は 位置との間に相互依存性に

対する要求がある場合は、最大実体公差方式(を用いて表す)を適用する(ISO 

2692 参照)。

7. 図面への適用

 7.1 図面の完全性

 図面には、部品の機能を完全に検査するために必要な寸法公差 及び 幾何公差が指示

されていなければならない。

 7.2 表示方式

 独立の原則を適用する図面には、図面の表題欄の中 又は 付近に次のように記入して

おかなければならない。

   公差表示方式 JIS B 0024 (ISO 8015

 この指示は、普通幾何公差に関する適切な規格 又は 他の関連文書を参照して補足し

なければならない。

 幾つかの国家規格(図面に引用しなければならない)では、単独形体に対して包絡の

条件が標準であり、したがって、個々に図面に指定しないと定めているものもある。

 

 旧規格をそのまま掲載したのは、以前紹介した、製図-幾何公差方式-最大実体公

差方式の頁の 1. 適用範囲 の備考で、JIS B 0024 参照となっているのにもかか

わらず、改定後の規格には、参照すべき項目が見当たらないからである。

 この最大実体公差方式 JIS B 0023 は1996年に改訂されたままである。B 0024 

が先に改訂されたのでこのようなことになっているのであろう。GPSに関する国際規格

自体が改正中でありこのようなことは、しばらく続くのではないか。

 

 ともあれ、寸法と幾何公差は独立して適用されるが、両者を関係づける場合は、6.に

示すように、包絡の条件と最大実体公差方式がある。これらについては以前にも記載し

たように様々な方が解説しているので、そちらをご覧になってください。

 

 なお、包絡の条件を規定する記号ⒺのEは、封筒を意味する envelope から来てい

るらしい。

 規格中の名称は、できるだけ日本語を使ってもらいたいが、幾何特性仕様をGPSと

するなら、包絡の条件は、エンべロープ コンディションとでもしたほうがイメージが

湧きそう。ただし、JIS Z  8114 製図-製図用語 での 包絡の条件の対応英語は、

envelope requirement  である。