JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図―寸法及び公差の記入方法―第1部:一般原則 (用語及び定義、寸法記入及び公差記入の原則)

   製図―寸法及び公差の記入方法―第1部:一般原則

        JIS Z 8317-1

 

 

 寸法の記入方法は、機械製図の規定の方が詳しくなっています。以前の頁 寸法記

入方法(1)~(7)を参照願います。

 公差の記入についての規格は、JIS  Z  8318 製品の技術文書情報(TPD)―長さ寸法

及び角度寸法の許容限界の指示方法 になると思われるが、これについての説明は後の

頁になります。

 

 

序文 省略

 

1. 適用範囲 

 この規格は、すべての工業分野での製図に用いる寸法及び公差記入方法の一般原則に

ついて規定する。

 寸法記入法に関するルール、特殊なルール及び詳細事項については、土木の分野で

は、JIS A 0101、建築の分野では  JIS A 0150、機械の分野では  JIS B 0001 がある。

  注記1 この規格で用いる図は、本文を説明するためのものであり、実際の用途に

      反映することを意図していない。したがって、図はすべての工業分野に適

      用できる一般原則を示すために簡略化してある。

  注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を、次に示す。

       規格番号以下省略

 

2. 引用規格

 本文及び7項目の規格番号、規格名称、注記、省略

 

3. 用語及び定義

 この規格で用いる主な用語及び定義は、次による。

 

3.1 形体feature

3.1.1 

幾何形体geometrical feature

 点、線又は面(JIS B 0672-12.1参照)。

  注記 "幾何 (geometrical)"は誤解される恐れがない場合には省略でき、この規格

     でも"形体"だけで表す。

3.1.2

サイズ形体feature of size

 長さ寸法又は角度寸法によって定められる形状( JIS B 0672-12.2参照)。

  注記1 サイズ形体は、円筒、球、二つの対向する平行平面、円すい、くさびなど

      である。

  注記2 JIS B 0401-1 及び ISO/R 1938-1 の"単純な加工物 (plain workpiece)"及

      び"単独形体 (a single feature)"の意味は、"サイズ形体"の意味に近

      い。

 

 JIS  B  0672-1  は、製品の幾何特性仕様(GPS)―形体―第1部:一般用語及び定義

である。その2.1が(幾何)形体であり、2.2がサイズ形体である。

 そこでは、幾何形体は、"点、線又は面"でありこの規格と全く同じ文面であり、参

照する意味はない。サイズ形体になると"大きさ寸法又は角度寸法によって定義される

形体"となり、長さが大きさになっている。

 

 

 

3.1.3基準形体reference feature

 他の形体を設定するための、基準となる形体。

3.1.4

繰り返し図形repeated feature

 一つ以上の基準形体に対して、同じ間隔又は同じ角度で設定される形体。

 

3.2 寸法記入に用いる線  (lines of dimensioning)

3.2.1 

中心線 (centre line)

 対象とする形体の、幾何学的な中心を示す図面上の線。

3.2.2 

寸法線 (dimension line)

 寸法を示す二つの形体間、形体と寸法補助線間、2本の寸法補助線間を直線又は曲

線。

3.2.3

寸法補助線 (extension line)

 寸法を示す形体と、寸法線の端部とを結ぶ線。

3.2.4 

引出線 (leader line)

 情報、要求事項、参照線と形体又は寸法線とを結ぶ線。

  注記 JIS Z 8322 による。

3.2.5

対称図示記号  (symbol of symmetry)

 対称である平面又は軸線を表す直線に付加する記号。

 なお、この対称図示記号は、短い2本の平行直線であり、""と表す。

3.2.6 

起点記号 (symbol of origin)

 累進寸法又は座標寸法の開始点に付加する記号。

3.2.7

端末記号 (terminator)

 寸法線又は引き出し線の端末を示す記号。

 

3.3 寸法 (dimension)

3.3.1

寸法 (dimension)

 二つの形体間の距離又はサイズ形体の大きさ。

  注記 寸法には、長さ寸法、位置寸法及び角度寸法がある。

3.3.2

基準寸法、寸法数値 (basic dimension, basic size, dimensional value)

 指示された単位で示し、線と適切な記号によって図面上に示された寸法数値。

  注記1 公差が付いていない基準寸法は、寸法数値と呼ばれる。

  注記2 寸法の単位は、長さではミリメートル、角度では度、分、秒又はラジアン

      である。

  注記3 公差域クラス及び/又は寸法許容差は、基準寸法に適用される。

3.3.3

長さ寸法 (linear dimension)

 二つの形体間の距離又はサイズ形体の大きさを表す長さ。

  注記 機械の分野では、長さ寸法は大きさを表す寸法、位置を表す寸法、直径及び

     半径に分類される(ISO/TR 14638 参照)。

3.3.4

角度寸法 (angular dimension)

 二つの形体間の位置を表す角度又はサイズ形体の大きさを表す角度(サイズ角度)。

  注記 機械の分野では、角度寸法は大きさを表す角度及び位置を表す角度に分類さ

     れる(ISO/TR 14638 参照)。

3.3.5

寸法公差 (tolerance of dimension)

 上の寸法許容差と下の寸法許容差との差。

3.3.6

補助寸法 (auxiliary demension)

 他の寸法から導かれる寸法で、情報提供を目的とする寸法。

 

3.4 寸法の配置 (arrangement of dimensions)

3.4.1

直列寸法記入法 (chain dimensioning)

 各寸法を一列に配列して記入する方法。

3.4.2

座標寸法記入法 (coordinate dimensioning)

 座標系において、基準形体からの寸法を記入する方法。

   座標系とは、直交座標系又は極座標系である  ( ISO 10209-2  参照 )。

3.4.3 

並列寸法記入法 (parallel dimensioning)

 並列する寸法線又は同心円弧の寸法線によって基準形体から各形体までの寸法を記入

する方法。

3.4.4

累進寸法記入法 (running dimensioning)

 基準形体から各形体までの寸法線を累進させて記入する方法。

3.4.5

表形式寸法記入法 (tabular dimensining)

 形体及び/又は寸法を照合番号又は照合文字によって示し、数値表によって寸法を表

す方法。

 

4 寸法記入及び公差記入の原則

4.1 一般事項

 すべての寸法、図示記号及び注記は、図面の下側又は右側から見て読むことができる

ように示す。

 寸法は、形体又は部品を明りょうであいまいさがないように定義するための幾何学

な要求事項の一つである。あいまいさのない形体の定義に用いる他の要求事項は、例え

ば、機械の分野では、幾何公差(形状、姿勢、位置及び振れの公差)、表面性状及びか

ど(かどの丸み)に関する事項がある。

  注記 建築の分野では、公差は別の文書で与えられることが多い。

 すべての寸法情報は、必要で十分なものでなければならない。また、関連文書に規定

していない限り、図面上に示さなければならない。

 各形体の寸法又は形体間の寸法は、重複指示を避ける。

 図面又は関連文書には、使用する単位をもっていても、すべての長さ寸法の単位が同

じ場合には、使用する単位を省略してもよい。

4.2 寸法記入位置

 寸法は、関連する形体が最も明りょうに示される投影図又は断面図に記入する(図1

参照)。

  注記 3D画面には、180° を超える円弧又は全円であっても直径の数値の前に記号

Φ を記入する。

 幾つかの部品からなる組立図に寸法を記入場合には、読みやすくするために各部品ご

とにまとめて寸法群とし、出来る限り切り離して配置する(図2参照)。

 

 この項目の注記は、説明不足である。機械製図の同項目の注記は、"ISO  129-1 に

は、3D CADで図形を回転させて表示した場合、円形図形がだ円になることを考慮し

て、180° を超える円弧又は円形の図形においても直径の寸法を、Φをその前に付けて記

入するように規定している。"となっている。

 一般に、製図の規定は、機械製図の規定に比べ大まかなものとなっている。

 

 

4.3 寸法の単位

 寸法は、一種類だけの単位を用いて示す。複数の単位を一つの文書で用いる場合に

は、それらを明確に示す。

 寸法にはSIの単位を用いる(JIS Z 8203  又はSI単位に関連する他の JIS 参照)。

 公差は、基準寸法と同じ単位によって表す。

 

 

 冒頭に述べたように、この頁の内容は、機械製図の寸法記入方法、特に(1)~

(3)を参照願います。

 この頁の内容は、一般事項や定義等であり、図面を作図する上で特に注意する項目は

ないが、重複寸法については述べておきたい。

 

 図面上で重複寸法があるのは、図面の描き方として誤りであるとしていることがある

が、これは、よくない。

 重複寸法についての本文中の表現は、"各形体の寸法又は形体間の寸法は、重複指示

を避ける。"であり、禁止事項ではない。

 製図、特に寸法記入についての考え方の一つに、情報過多、あるいは、過剰情報を、

嫌うということがあるようだが、寸法の一つや二つのダブリなど過剰情報とは言えな

い。

 むしろ、機械製図の寸法記入方法(1)にも述べたように、図面を読むとき寸法を捜

す無駄が少しでもなくなる方が、よいと思う。