JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図ー幾何公差表示方式―位置度公差方式

    製図ー幾何公差表示方式ー位置度公差方式

        JIS B 0025

0. 序文  省略

0.1 この規格は、JIS  B  0021  に規定する位置度公差方式の概念をさらに詳しく規定

する。

 この規格の中の図は、位置度公差方式を説明するだけのものであり、必ずしも完全な

ものではない。

 この規格を適用する際には、JIS  B  0022 JIS  B  0023 などの関連する規格を考慮

する。

0.2 この規格では、図面上のすべての寸法及び公差は直立体の文字で印刷してある。

これらの指示は、手書きであっても斜体文字で書いてあっても、その意味は変わらな

い。

 文字(書体及び大きさ)の表し方は、JIS  B  8313-1  及び JIS  Z  8313-10  を参照。

1. 適用範囲 この規格は、規則正しい形状をもつ形体及び不規則な形状をもつ形体の

位置を決めるための位置度公差方式の原則について規定する。しかし、理解しやすくす

るために、この規格では穴、ボルト、植込みボルト又はピン、平行側面を持つ溝、キー

及びキー溝などのような規則正しい形状をもつ形体の場合だけについて示す。

 位置度公差方式は、点、直線又は平面に適用される。線が直線ではない場合、及び面

が平面ではない場合には、輪郭度公差方式を用いる。ISO  1660:1987参照。

2. 引用規格

  引用規格及び備考 省略

3. 位置度公差の設定

3.1 一般事項 主要な構成要素は、理論的に正確な寸法、公差域及びデータムであ

る。

3.2 基本原則 位置度公差方式において、理論的に正確な寸法及び位置度公差は、各

形体の相互関係又は一つ以上のデータムに関連する点、軸線、中心面などの形体の位置

を定める。公差域は、理論的に正確な位置に対して対称に置く。

   備考 この原則によって、理論的に正確な寸法が直列寸法記入法で記入されてい

      ても、位置度公差は累積されない(図4参照。これは、直列寸法記入法で

      記入された寸法公差域の場合と異なる。)。位置度公差方式は、一つ以上

      のデータムによって形体の公差域を明確にすることができる。

3.3 理論的に正確な寸法 角度及び長さの理論的に正確な寸法は、JIS  B  0021に従

い長方形で囲んで指示する。これを図2図3a)、図4a)、図5a)、図7a)及

図8a)に示す。

 図面上で直角と判断されるものは90°とみなし、習慣として90°の角度寸法は指示しな

い。理論的に正確な90°、及び0°から90°、180°などのように順番に直角方向が与えられ

た角度寸法も同様である。これらは、次のように適用される。

 ― データムに関連しない位置度公差付き形体[図4a)参照]。

 ― 同じデータムに関連する位置度公差付き形体[図2a)参照]。

 ― 位置度公差付き携帯とそれに関連するデータム[図1参照]。

 異なったデータムに関連する場合、又は図2b)のように図面に必要な注記がない場

合には、同じ中心線又は軸線を共有する位置度公差付き形体は、理論的に正確な関連形

体とみなす。

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3.4 円周上の位置度公差 位置度公差付き形体が円周上に配列されている場合には、

特別な指定がない限り、等分に配置されていて、理論的に正確な位置にあると解釈す

る。

 二つ以上の形体グループが同一軸線上に示されているときには、特定の注記がない限

り、それらは一つのパターンと考える[図2a)及び図2b)参照]。

  参考 ここでいう一つのパターンとは、二つ以上の形体グループ(図2のΦ8穴の

     グループおよびΦ15穴のグループ)の相互位置関係を崩すことなく、図示さ

     れたとおりの位置関係を保つことを意味する。

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   参考 図2b)の"4×Φ15穴のグループとの角度任意"という表現は一つの例

      であって、他の適切な表現をしてもよい。現国際規格では " angular

      location optional " としている。

3.5 位置度公差の方向

3.5.1 一方向の位置度公差 公差値は、一方向だけに指定できる。そのときの公差

域の幅は、寸法線の矢の方向である[図3a)及び図3b)参照]。

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3.5.2 二方向の位置度公差 公差値は、互いに直角な二方向に指定することができ

る。二方向の公差値が異なる値をとる場合は、図4a)及び図4b)参照。二方向の公

差値が等しい値をとる場合は、図5a)及び図5b)参照。

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3.5.3 方向を定めない場合の位置度公差 公差は、円筒公差域によって指定する

図5a)及び図5b)参照]。

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  備考 円筒形体のはまり合う部品に対しては、通常、公差は理論的に正確な位置か

     らいずれの方向にも等しいので、公差域は円筒形となる。この公差方式によ

     る公差域は、直角座標方式によって形成される正方形(又は長方形)断面の

     直方体公差域よりも大きくなる(図6参照)。

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4. 公差の組合せ

4.1 ある形体グループを構成する各形体が位置度公差方式によって個々に位置付けら

れ、さらにそのパターンの位置が直角座標方式の公差によって位値付けられているとき

には、それぞれの要求事項は独立に満たさなければならない[図7a)参照]。

4.1.1 図7に示す左側の個々の穴の実際の軸線と左側の側面との距離は、許容限界

寸法17.5mmと18.5mmとの間になければならない(2点測定、JIS  B  0024参照)。

 図7に示す下側の個々の穴の実際の軸線と下側の側面との距離は、許容限界寸法

15.5mmと16.5mmとの間になければならない[図7a)及び図7b)参照]。

4.1.2 個々の穴の実際の軸線は、図示するように直径0.2mmの円筒公差内になけれ

ばならない。

 なお、その位置度公差域の軸線は、互いに理論的に正確な位置にある[図7c)参

照]。

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   備考 この方法は別の解釈がされる可能性があるので、より明確な解釈が必要な

      場合には、位置度公差方式及びデータムの指示をする(4.2参照)。

4.2 ある形体グループを構成する形体が位置度公差方式によってそれぞれ位置付けら

れ、さらにそのパターンの位置も位置度公差方式によって位置付けられているときに

は、それぞれの要求事項は独立に満たされなければならない[図8a)参照]。 

4.2.1 図8に示す四つの穴の実際の軸線は、直径0.01mmの円筒公差域内になけれ

ばならない。

 なお、個々の穴の位置度の公差域は、互いに理論的に正確な位置に配置され、データ

ムAに対して垂直である[図8b)参照]。

4.2.2 図8に示す各穴の実際の軸線は、直径0.2mmの円筒公差内になければならな

い。

 なお、その位置度公差域は、データムAに対して垂直であり、かつ、データムBとC

に対して理論的に正確な位置にある[図8c)参照]。

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 JIS B 0021 は、製品の幾何特別仕様(GPS)-幾何公差表示方式-形状、姿勢、

位置及び振れの公差表示方式。B 0022 は幾何公差のためのデータム。B  0023 は製

図-幾何公差表示方式-最大実体公差方式及び最小実体公差である。

 いずれも以前のページで参考のために掲載してある。

 この規格は、製図とタイトルがついているが、内容は、方式が付いているように、や

り方、つまりは、設計である。

 以前にも述べたが、これらの公差表示方式、最大実体公差などは、多くの方が解説し

ているのでそちらを見ていただきたい。

 では、この規格、どの程度適用していくべきか。

 この公差方式の利点の一つが、図6に示すように公差域が大きくできることである。

図では公差域は、57%も大きくなるが、これは言葉の綾ならぬ数字の綾であって、対角

線上(45°の方向)の公差域は同じである。誤差が一方向だけということはないで、こ

のことにあまり期待はしないほうが良い。

 それよりも、肝心なことは、どのような測定をするのか、どのような測定ができるの

かということである。

 このことを抜きにして、公差域を大きくしたいために、位置度公差方式を適用しても

意味はないといえる。位置度公差方式の適用は特殊な場合を除いて,考える必要はない

のでは、というのが一般の人の感覚であろうか。