JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図―幾何公差表示方式―最大実体公差方式及び最小実体公差方式(3)

     第2部 最小実体公差方式

序文 この規格は、図面上に記号Ⓛを用いて指示する最小実体公差方式(LMR)の定義

 及び適用例を示す。

 最小実体公差方式は、最大実体公差方式に密接に関係し、最小厚さの管理、破断防止

などに用いられる。

 参考 この規格のこの部分は、ISO 2692-1988に追加する技術的事項を日本工業規

格として、JIS  B  0023 の規定事項として追加するものである 。

1. 適用範囲 この規格は、最小実体公差方式とその適用について規定する。

2. 定義 用語の定義は、この規格の第1部によるほか、次による。

2.1 最小実体実効状態(least material virtual condition)(LMVC) 完全形状で、最小実

体実効寸法の境界の状態。

2.2 最小実体実効寸法(least material virtual size)(LMVS) 最小実体寸法(LMS)と記

号Ⓛが付いた幾何公差との総合効果によって得られる寸法。

    備考1. 軸に対して:LMVS=LMS-[幾何公差」

         穴に対して:LMVS=LMS+[幾何公差]

3. 最小実体公差方式(LMR) 最小実体公差方式は、対象とする形体がその最小実体

状態(LMC)から離れるときに、指示した幾何公差を増加させることができる(附属

書A参照)。

 最小実体公差方式は、公差枠の中の公差付き形体の後、又はデータム文字記号の後に

付ける記号Ⓛによって図面上に指示され、次の事項が指定される。

  ー 公差付き形体に適用する場合には、最小実体実効状態(LMVC)は、実際の公

    差付き形体の実体の中に完全に含まれなければならない。

  ー データムに適用する場合には、最小実体寸法ににおける完全形状の境界は、

    (実際のデータム形体の表面に干渉することなく)実際のデータム形体の実体

    の中で浮動してもよい。

4. 適用例 最小実体公差方式(LMR)の適用例を、附属書Bに示す。

 

       第2部 附属書A

        (参考)

       最小実体公差方式の説明

 最小実体公差方式図A.1によって説明する。完全形状の形体がその最小実体寸法から

離れたときには、その離れた寸法分に等しく位置度公差を増加することが許容される。

f:id:moriumm:20211020152612p:plain

   

       第2部 附属書B

        (参考)

       図示例及び説明

f:id:moriumm:20211020171605p:plain

f:id:moriumm:20211021164816p:plain

f:id:moriumm:20211022113841p:plain

f:id:moriumm:20211022145510p:plain

f:id:moriumm:20211022173817p:plain

f:id:moriumm:20211023111613p:plain


※ 最小実体公差方式も、最大実体公差方式と同じく、多くの方が解説しているのでそ

ちらを見ていただきたい。

 JISによらないを念頭に置いた感想も同様である。規格が適用できるのは、同軸度

が多いだろうし、最小実体公差方式を指示しなくても、ほとんどの場合、何の問題もな

い。

 最小実体公差方式は、最大実体公差方の対極をなすものと思われがちだが、考え方は

ともかくとして、その用途は全く別なものである。名称を変えて別な規格としたほうが

良いと思えるくらいである。

 用途としては規格文中にあるように、最小厚さの管理、破断防止があげられる。製品

の小型化、軽量化が検討される場合、最小実体公差方式は、必要なものとなってくるだ

ろうが、この規格を当てはめるだけが小型化の方法ではない。

 最大実体公差方式、最小実体公差方式を適用して得られた幾何公差の増加分を、アメ

リカなどでは、ボーナス公差というらしい。ボーナスが得られるためには、その対価と

なった何かが必要であることは、言うまでもない。給付金のように、申請すればもらえ

るというものではない。