JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

スプライン及びセレーションの表し方

     製図ースプライン及びセレーションの表し方

        JIS B 0006

  

 この規格は、スプライン及びセレーションの製図方法である。

 スプラインの規格としては、 JIS B 1601 角形スプラインー小径合わせー寸法、

公差及び検証方法、 JIS B 1603 インボリュートスプラインー歯面合わせー一般事

項、諸元及び検査 があるが、セレーションのJIS規格は見あたらない。

 この規格自体が、まえがきにあるようにISOの規格を翻訳したもので、参考や備考の

なかにISOの規格が多く出てくる。詳細を説明するにはISO規格が必要になるので、ここ

ではJIS規格だけで説明できる要点のみを述べることにする。参考や備考文も省略する。

 

1.適用範囲 この規格は、図面にスプライン及びセレーションを表す方法並びに図記

号を規定する。規定する表し方は、次の二つである。

 (a) 忠実な表し方

 (b) 簡単な表し方

 

 他の規格では、簡略図示方法とあらわされているが、この規格だけやさしく簡単な表

し方となっている。些細なことだが、統一しておいてよいと思うのだが。統一するなら

ぜひやさしいほうでお願いしたい。

 

2.引用規格

 省略

 

3.定義 この規格に用いる用語の定義は、次による。

3.1 スプライン継手(spline joint) 円筒状の軸の外周に設けられた等間隔の歯

と、関連する円筒状の穴の内周に設けられた軸と同じ間隔のはまり合う溝とが、同時に

か(噛)み合うことによってトルクを伝達する結合した同軸の機械要素。

 

3.2 インボリュートスプライン(involute spline) 歯面の輪郭が、インボリュート曲線の歯若しくは溝をもつスプライン継手の軸又は穴。

 

3.3 角形スプライン (straight-sided spline) 歯面の輪郭が、平行平面の歯若しくは

溝をもつスプライン継手の軸又は穴。

 

3.4 セレーション(serration)  歯面の輪郭が、一般に60° の圧力角の歯若しくは溝

をもつスプライン継手の軸又は穴。

 

4 呼び方 スプライン継手の呼び方は、種類の図記号及び該当する規格、またはこの

主題を扱うその他の規格に規定する継手の呼び方で構成する。

4.1  図記号 スプライン継手の種類は、図記号で示す。

 角形スプラインの図記号を図1に、インボリュートスプライン及びセレーションの図

記号を図2に示す。

 図記号の比率及び寸法を、附属書Aに規定する。

 

4.2 呼び方の指示方法 呼び方は、その形体の付近に、必ずスプライン継手の輪郭か

ら引き出し線を引き出して指示するのが良い(図3参照)。

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 スプライン継手が上記の規定によらない場合、又はその要求事項を修正した場合に

は、必要事項をその図面の中、または他の関連文書に、表の形で示すとともに、適用す

る輪郭に引き出し線及び図面記号を用いて照合させなければならない。

 

 必要事項の表は、歯車製図における要目表のようなものであろうか。インボリュート

スプラインの場合は歯車と同じような項目が必要となる。

 

5. スプライ

ン継手の完全な図示 正しい寸法ですべての細部をスプライン継手の完全な図示は、通

常は技術図面には必要でなく、避けるほうが良い。

 以下文章および図4~図6省略。

 

6. 簡単な図示

6.1 一般 表1に示すような角形スプライン及びインボリュートスプラインの簡単な

図示は、通常、すべての必要な情報を伝えるために適している。

6.2 細部の図示(軸及びハブ) 基本原則に従って、スプライン継手の部分は歯が切

ってない中実の部分として図示し、これに細い実線で歯底面を、または細い一点鎖線で

ピッチ面を図示する。

6.2.1 輪郭及び端部 軸(外側スプライン)又はハブ(内側スプライン)の輪郭及び端部

は、次の状態を描く。

 ・外形図では、歯先面で表す円筒(外側スプラインでは例えば外形面、内側スプライン

  では例えば内径面)によって作られる中実の部分の状態。

 ・長手方向の断面図では、実際の歯の間隔に関係なく、正反対側に相対して2枚の歯

  (ただし、歯は切断しない。)をもつ軸又はハブの状態。

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 6.2.2 歯底面 角形スプラインに対しては、歯底面(外側スプライン部の小径面、内

側スプラインの大径面)を、細い実線で描く。ただし、スプラインを切った軸又はハブの

長手方向の断面図では、歯底面は表1によって太い実線で描く。

6.2.3 ピッチ面 インボリュートスプライン及びセレーションに対しては、ピッチ

面(ピッチ円)を、細い一点鎖線で描く。

6.2.4 有効長さ スプラインを切った部分の有効長さは、太い実線で図示する(図7

参照)。

 通常はスプラインを切った部分の有効長さだけを描く。

6.2.5 工具の逃げ 必要な場合には、工具の逃げを歯底面に用いた線と同じ線を用いて、斜線又は円弧で図示してもよい(図7および図8参照)。

 

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6.2.6 歯の位置 中心軸に直交する平面に関して、歯の位置を指示する必要がある

場合には、1枚又は2枚の歯を太い実線で描いてもよい(図9参照)。

6.2.7 歯の輪郭の詳細図 呼び方だけでは明確に表現できない場合には、歯の輪郭

の詳細な図を追加するのが良い(図10参照)。

6.2.8 面の肌 接触面(歯底及び歯先の円周面は含まない。)の面の肌を指示する必要

がある場合には図11に示すように図記号、呼び方及び面の肌に用いる図面指示を、共通

の引出線上に示すのが良い。

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7. 組立図 前項の細部の図示のための規定は、組立図にも適用できる(図12

照)。 組立図では、図13および図14に示すように、両方の部分(ハブ及び軸)の呼び

方を組み合わせる。

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      附属書A(規定) 図記号の比率及び寸法

 この規格に規定した図記号の大きさを、他の図面指示事項の大きさと整合させるため・・・・・

  

 以下こまごまとした規定が示されているが、ISOに基づいたたものであり、比率の

図は横方向の目盛りがないなど、不明確な点がある。

 図記号や寸法指示は通常の寸法記入で問題はないので、この附属書、規定にはなって

いるがあまり意味はない。

 スプラインの製図自体、ねじや歯車の製図を参考にして描いておけば充分である。