製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状の図示方法
JIS B 0031
序文 省略
1. 適用範囲 この規格は、製品技術文書(例えば、図面、仕様書、契約書、報告書な
ど)に、図示記号及び文書表現によって表面性状を指示する方法について規定する。
この規格は、次のパラメータを用いることによって、表面に対する要求事項を指示す
る方法を規定する。
a) JIS B 0601 による輪郭曲線パラメータ
ー 粗さ曲線(粗さパラメータ)
ー うねり曲線(うねりパラメータ)
ー 断面曲線 (断面曲線パラメータ)
b) JIS B 0631 によるモチーフパラメータ
ー 粗さモチーフ
ー うねりモチーフ
c) JIS B 0671-2 及び JIS B 0671-3 による負荷曲線に関するパラメータ
備考1. 表面性状パラメータによって規定することができない表面欠陥(くぼ
み、きずなど)の指示は、表面欠陥を規定している ISO 8785 を参照
する。
2. 省略
2. 引用規格 本文及び備考は省略
JIS B 0021 製品の幾何特性仕様(GPS)―幾何公差表示方式―形状、姿勢、位置
及び振れの公差表示方式
JIS B 0601 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―用語、定義
及び表面性状パラメータ
JIS B 0631 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―モチーフパ
ラメータ
JIS B 0632 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―位相補償フ
ィルタの特性
JIS B 0633 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―表面性状評
価の方式及び手順
JIS B 0641-1 製品の幾何特性仕様(GPS)―製品及び測定装置の測定による検査
―第1部:仕様に対する合否判定基準
JIS B 0651 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―触針式表面
粗さ測定器の特性
JIS B 0671-1 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式;プラトー
構造表面の特性評価―第1部:フィルタ処理及び測定条件
JIS B 0671-2 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式;プラトー
構造表面の特性評価―第2部:線形表現の負荷曲線による高さの特性評価
JIS B 0671-3 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式;プラトー
構造表面の特性評価―第3部:正規確率紙上の負荷曲線による高さの特性評価
JIS B 0672-1 製品の幾何特性仕様(GPS)―形体―第1部:一般用語及び定義
JIS Z 8114 製図―製図用語
JIS Z 8313-1 製図―文字―第1部:ローマ字、数字及び記号
JIS Z 8317 製図―寸法記入方法―一般原則、定義、記入方法及び特殊な指示方法
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は、JIS B 0601,JIS B 0632,JIS B 0633,JIS B 0651,JIS B 0671-2,JIS B 0671-3,JIS B 0672-1 及び JIS Z 8114
によるほか、次による。
a) 基本図示記号(basic graphical symbol)表面性状に要求事項があることを示す
(表面性状のための)図示記号(図1参照)。
b) 除去加工の図示記号(expanded graphical symbol) 特定の表面形状を得るため
に、材料の除去加工をするか、除去加工をしないかを示す(表面性状のための)
図示記号(図2及び図3参照)。
c) 表面性状の図示記号(complete graphical symbol) 表面性状の要求事項をすべて
指示できるようにした(表面性状を表示するための)基本図示記号又は除去加工
の図示記号(図4参照)。
d) 表面性状パラメータ[surface (texture) parameter symbol]表面の微細な幾何学
的特性を表すパラメータ。
備考 表面性状パラメータ記号については、附属書Fを参照する。
参考 輪郭曲線パラメータ(6.3.2)、モチーフパラメータ(6.3.3)、負荷
曲線に関連するパラメータ(6.3.4)を総称して、表面性状パラメータ
と呼ぶ。
e) (表面性状の)パラメータ記号[(surface) parameter symbol]表面性状パラメー
タを表す記号。
備考 パラメータ記号は、Ra、Ramax、 Wz、Wz1max、AR、Rpk、Rpq などの
ように、文字及び数字で構成する。
4. 表面性状の図示記号
4.1 一般事項 表面性状の要求事項は、明確な意味をもつ図示記号を用いて製品技術
文書に指示する。 数値、記号及び文書表現(5.6.7.及び8.参照)によって、4.2及
び4.3の図示記号を補足する。しかし、単独で用いた図示記号だけでも、図面上で特別
な意味を持たせてもよい(11.参照)。
4.2 基本図示記号 基本図示記号は、図1のように対象面を示す線に対して約60°
傾いた長さの異なる2本の直線で構成する。(表面性状の要求事項がない)図1の基本
図示記号だけでは、表面性状の要求事項の指示にはならない。基本図示記号は、図23及
び図26のように、簡略図示に用いてもよい。
基本図示記号に表面性状の要求事項(5.参照)が指示されている場合には、対象面に
除去加工をするか(4.3.1参照)、対象面に除去加工をしないか(4.3.2参照)につ
いては問わないこととする。
4.3 除去加工の図示記号
4.3.1 除去加工する場合 除去加工、例えば、対象面に機械加工をする場合には、
図2のように基本図示記号に横線をつける。
(表面性状の要求事項がない)図2の除去加工の図示記号だけを、表面性状の指示に
用いてはならない。
4.3.2 除去加工をしない(許さない)場合 対象面に除去加工をしない場合には、
図3のように基本図示記号に丸記号をつける。これらの図示記号の特別な使用方法につ
いては、10.を参照する。
4.4 表面性状の図示記号 表面性状の要求事項を指示する場合(6.参照)には、図
4のように図1~図3に示すいずれかの図示記号の長いほうの斜線に直線をつける。
例えば、報告書又は契約書に用いる場合の文書表現では、図4a)の指示は APA ⑴、
図4b)の指示は MRR ⑵、図4c)の指示は NMR ⑶とする。
⑴ Any Process Allowed の頭文字
⑵ Material Removal Required の頭文字
⑶ No Material Removed の頭文字
4.5 "部品一周の全周面"の表面性状の図示記号 図面に閉じた外形線によって表さ
れた部品(外殻形体)一周の全周面に、同じ表面性状が要求される場合には、図5のよ
うに図4の表面性状の図示記号に丸記号をつける。
部品一周の表面性状の図示記号によってあいまいさが生じるおそれがある場合には、
個々の表面に指示する。
5. 表面性状の図示記号の構成
5.1 一般事項 対象面の機能に関連した表面性状の要求事項にあいまいさがないよう
に、表面性状パラメータとその要求値のほかに、必要に応じて要求事項[例えば、フィ
ルタの通過帯域(通過帯域という。)又は基準長さ、加工方法、加工による筋目とその
方向、削り代など]を指示する。また、あいまいさをなくすために、必要に応じていく
つかの異なった表面性状パラメータを組み合わせて指示してもよい。詳細は、附属書D
を参照する。
5.2 表面性状の要求事項の指示位置 表面性状の図示記号における表面性状の要求事
項の指示位置は、図6による。
次の項からなる表面性状の要求事項は、表面性状の図示記号の特定の位置に、次の
a)~e)に従って指示する。
― 表面性状パラメータ
― パラメータの値
― 通過帯域又は基準長さ
a) 位置aー表面性状の要求事項が一つの場合 6.によって、表面性状パラメータ記
号とその値及び通過帯域又は基準長さを指示する。誤りが生じないように、パラ
メータ記号とその値とのスペースは、ダブルスペース(二つの半角ブランク)に
する。
通過帯域又は基準長さの後に斜線"/"、その後にパラメータ記号とその値の
順序にして一行で指示する。
例1. 0.0025-0.8/Rz 6.8 (通過帯域の指示例)
例2. -0.8/Rz 6.8 (基準長さだけの指示例)
モチーフパラメータの場合には、通過帯域の後に斜線"/"、評価長さ、斜線
"/"、パラメータ記号とその値の順にして一行で指示する。
例 0.008-0.5/16/R 10
参考 一般に通過帯域は、二つのフィルタのカットオフ値間の波長範囲であり
( JIS B 0651 及び JIS B 0632 参照)、モチーフパラメータでは二つの上
限長さ間の波長範囲である( JIS B 0631 参照)。
b) 位置a及びbー表面性状の要求事項が二つ以上の場合 a)で規定したように、
一番目の表面性状の要求事項を位置"a"に指示する。二番目の性状表面の要求
事項を位置"b"に指示する。三番目またはそれ以上の要求事項を指示する場合
には、表面性状の図示記号の長いほうの斜線を縦方向に延ばして多数行の指示が
できるようにスペースを広げ、位置"a"及び"b"を上のほうに移動する(6.
参照)。
c) 位置 cー加工方法 旋削、研削、めっきなど、対象面を得るための加工方法、
表面処理、塗装又は加工プロセスに必要な事項を位置"c"に指示する(7.参
照)。
d) 位置 dー筋目とその方向 対象物の筋目とその方向を、"="、"X"、"M
"などの記号を用いて位置"d"に指示する(8.参照)。
e) 位置 eー削り代 要求された削り代は、ミリメートル単位でその値を位置"e
"に指示する(9.参照)。
※ この規格は、かつては面粗さの規格であった。面粗さにうねりが加わり表面性状と
なった。
いまだに見かける三角記号の数によって面粗さを指定する時代では、現場での面粗
さの測定は、粗さ標準片による比較測定が精々であった。それが時代とともに測定器、
測定技術が進歩し、面粗さの指定方法もどんどん変化していった。
このことは、規格の附属書に旧規格での図示が掲載されていることからも、うかがい
知ることができる。
製図としての面粗さの指示は、難しいことは何もなく、基本は、図6に示されたよう
に指定の位置に指定の項目を記入するだけである。この項目をどのような値にするか
は、設計の領域である。
とはいえ、製図だけをするにしてもある程度の理解はしておいたほうが良い。
まずは、パラメータという言葉である。この規格のはじめにも、この規格は、次のパラ
メータを用いることにより・・・と出てくるし、引用規格の中にもパラメータはかなりあ
る。
このパラメータという語、訳すのも、説明するのも厄介らしく、JIS 規格の中にこ
れを説明したものは無く、定義などにも無いようである。
辞書によるとパラメータは、数学の分野では媒介変数、統計の分野では、母数となっ
ており、一般には、限定要素、要因。また、制限範囲、限界などとある。
この規格でのパラメータの訳としてはどれも当てはまらない。結果に影響を与える温
度や圧力などの測定可能な要因、と説明されているものがあるが、いまひとつピンとこ
ない。
IT関係やプログラム関係ではパラメータは、いろいろ説明されてもいるが、当然内
容は違ったものである。
パラメータってなんですかと聞かれたら、この規格の場合となるが、粗さ曲線やうね
り曲線、断面曲線などのこと、と答えるしかないであろうか。
なお、モチーフパラメータは、JIS B 0631 製品の幾何特性(GPS)―表面性状:輪郭
曲線方式―モチーフパラメータ に、参考で示されており、"モチーフとは、断面曲線
の凹凸の主要素をいい、モチーフから求めるパラメータをモチーフパラメータという"
とある。