JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状の図示方法(3)

 このブログは、JIS規格の製図、なかでも機械製図に関するものを説明していま

す。 

 まず、JIS規格本文を掲載し、それについて解説やコメントがある場合、を付け

てJIS規格とは違う観点からの考えを述べています。

 

    製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状の図示方法(3)

          JIS B 0031

 

 このページは前頁からの続きとなります。 

 

7. 加工方法又は加工関連事項の指示 表面性状パラメータの値は、輪郭曲線の細部形

状による影響を強く受ける。そのために、パラメータ記号とその値及び通過帯域を指示

するだけでは、表面機能に対して必ずしもあいまいさのない指示をしたことにはならな

い。したがって、加工方法が輪郭曲線の特定の細部形状にある程度影響を及ぼすなどの

理由から、多くの場合、加工方法を指示することが必要である。

 対象面の加工方法は、図12及び図13のように、文書表現にしたり、表面性状の図示記

号に付けて指示することができる。図13の表面処理は、ISO  1456  の記号を用いて指示

した例を示す。

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8. 筋目の指示 加工によって生じる筋目(例えば、加工工具の刃先によって生じる筋

目)とその方向は、表2及び図14の例に示す記号を用いて、表面性状の図示記号に指示

することができる。記号による筋目の指指示(図14では、直角方向を表す記号)は、文

書表現には適用しない。

 表2の記号は、表面性状の要求事項が指示された対象面の筋目とその方向を示す。

  参考 筋目の方向とは、加工によって生じる主要な(際立った)筋目模様の方向と 

       する。

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           表2 筋目方向の記号

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 備考 これらの記号によって明確に表すことのできない筋目模様が必要な場合には、図面に"注記"として

 それを指示する。

 

9. 削り代の指示 一般に、削り代は同一図面に後加工の状態が指示されている場合だ

け指示され、鋳造品、鍛造品などの素形材の形状に最終形状が表されている図面に用い

る。削り代に対する要求事項の規定及び適用については、ISO  10135  を参照する。

  参考 鋳放し鋳造品については、JIS  B  0403  に規定されている。

 図示記号に付けた削り代の指示は、文書表現には適用しない。

 削り代の指示は、表面性状の図示記号だけに付けられる要求事項である。削り代は、

通常の表面性状の要求事項に加えて指示してもよい(図15参照)。

 

10. 表面性状の要求事項の指示及び指示値の解釈 図面における表面性状の指示は、

図1図5に示す記号の少なくても一つ、及び5.9.の表面性状の要求事項によって

指示する。

 単独で用いる図示記号は、次の場合、表面性状の要求事項としての意味をもつ。

― 11.3に従って用いる場合

― 又は、加工プロセスに関連する図面で図3に示す図示記号を用いる場合

 後者の場合の解釈は、次による。

 "対象面は、前加工が除去加工であっても他の方法であっても、それには関係なく前

加工で得られたままにする。"

 対象面が表面性状の要求事項に一致しているかどうかの検証は、JIS  B  0641-1  の規

定に従って行う。さらに、この規格での解釈及び関連する表面性状の規格も考慮する。

 

11. 図面及びその他の製品技術文書における指示

11.1 一般事項 表面性状の要求事項(図示記号)を対象面に、もし可能ならばサイ

ズ又は位置度の一方か両方が図示されている対象面に、1回だけ指示する。

 

 

 特別な指示がなければ、指示された表面性状の要求事項(図示記号)は、機械加工、

表面処理などを施した後の表面に適用される(附属書C参照)。

 

11.2 図記号及び表面性状の要求事項の指示位置及び向き

11.2.1 一般事項 一般ルールとして、JIS  Z  8317  の規定に従い、表面性状の要求

事項の付いた図示記号が図面の下辺又は右辺から読めるように指示する(図16参照)。

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11.2.2 外形線又は引き出し線・引き出し補助線に指示する場合 表面性状の要求事

項(図示記号)は、対象面に接するか、又は対象面に矢印で接する引出線につながった

引出補助線、又は引出補助線が適用できない場合には引出線に接するように指示する。

 一般ルールとして、図示記号又は矢印(又は他の端末記号)付きの引出線は、部品の

実体の外側から(表面を表す)外形線又は外形線の延長線に接するように指示する(

17及び図18参照)。

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11.2.3 寸法線に指示する場合 誤った解釈がされるおそれがない場合には、表面性

状の要求事項は、図19のように寸法に並べて指示してもよい。

  参考 図19の対象面は、明らかに円筒面であることが分かる。円筒面以外では、設

     計者の意図とは異なった解釈がされる場合がある。

11.2.4 幾何公差の公差記入枠に指示する場合 誤った解釈がされるおそれがない場

合には、表面性状の要求事項は、図20のように(JIS  B  0021  による)幾何公差の公差

記入枠の上側に付けてもよい。

  参考 図20の対象面は、明らかに矢印で指示された平面であることが分かる。

11.2.5 寸法補助線に指示する場合 表面性状の要求事項は、図17及び図21のよう

に、寸法補助線に接するか、寸法補助線に矢印で接する引出線につながった引出補助

線、又は引出補助が適用できない場合には引出線に接するように指示する。

11.2.6 円筒表面及び角柱表面に指示する場合 中心線によって表された円筒表面及

び角柱表面(角柱の各表面が同じ表面性状である場合)では、表面性状の要求事項を1

回だけ指示する(図21参照)。

 角柱の各表面に異なった表面性状が要求される場合には、角柱の各表面に対して個々

に指示する(図22参照)。

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11.3 表面性状の要求事項の簡略図示

11.3.1 大部分の表面が同じ表面性状の要求事項を持つ場合 部品の大部分に同じ表

面性状が要求される場合には、表面性状の要求事項を図面の表題欄の傍ら、主投影図の

傍ら又は参照番号の傍らに置く。

 このような表面に対する図示記号は、大部分の表面が同じ表面性をもつ場合に対して

部分的に異なった表面性状の要求事項があることを示すために、次による。

― 括弧で囲んだ何も付けない基本図示記号(図23参照)。

― 又は、括弧で囲んだ部分的に異なった表面性状の要求事項(図24参照)。

 部分的に異なった表面性状の要求事項は、該当する表面の主投影図に指示する(図23

及び図24参照)。

 

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11.3.2 繰り返し指示又は限られたスペースに対応する参照指示

11.3.2.1 一般事項 表面性状の要求事項を繰り返し指示することを避けたい場合、

指示スペースが限られている場合、または同じ表面性状の要求事項が部品の大部分で用

いられる場合には、簡略図によって参照指示してもよい。

11.3.2.2 文字付き図示記号による場合 対象部品の傍ら、表題欄の傍ら又は一般事

項を指示するスペースに簡略参照指示であることを示すことによって、簡略図示を対象

面に適用してもよい。(図25参照)。

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11.3.2.3 図示記号だけによる場合 同じ表面性状の要求事項が部品の大部分で用い

られる場合、図26図28のように図面に参照指示であることを示すことによって、

1、図2又は図3に該当する図示記号を対象面に適用してもよい。

11.4 表面処理前後の表面性状の指示 表面処理の前後の表面性状を指示する必要が

ある場合の指示は、"注記"又は図29による(他の例は附属書CC.8を参照)。

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 前ページの許容限界値について触れておく。

 許容限界値には、16%ルールと最大値ルールがあるわけであるが、JIS  B  0633  によ

れば、表面性状には均一とみなされる場合と場所によって異なっている場合があり、均

一の場合はよいが、場所によって異なる場合は、要求値がパラメータの上限値によって

指示されている場合パラメータの値が最大とみなされる場所を用いなければならない。

 16%ルールとは、測定値のうち要求値を超える数が16%以下であれば要求値を満たす

ものとして受け入れられるものとする、というものである。

 下限値の場合は、要求値より小さくなる数が16%以下であれば受け入れられものとす

る、となる。

 最大値ルールの場合は、一つでも要求値を超えてはならないことになる。

 図示する場合、許容限界値は16%が標準ルールとなっているので特別なことがない限

り、何も指示せずに16%ルールを適用させることで問題はない。

 なお、16%ルールの16%は、正規分布から出た値である。

 

 加工方法の指示は、規格では、多くの場合、加工方法を指示することが必要である、

と定められている。しかし、工作技術が進化している現代は、加工方法にこだわる必要

はないように思える。目的の表面性状が得られるならばどのような加工方法でもよいわ

けであり、あえて加工方法を図示する必要はないように思える。

 

 それに対して、筋目方向の指示は、表面性状及び幾何公差の点から、より重要と思わ

れる。表面性状や幾何公差の値が同じだとしても筋目方向の違いで品質が違ってくるこ

とがあり得るからである。

 

 削り代についてはほとんど記入されないようである。鋳造品、鍛造品などの用途に用

いられるものではあるが、削り代にも許容値があり、これを一般公差で適用させるわけ

にはいかない。図面に記入される寸法は最終仕上がり寸法であるのでその付近に前工程

としての寸法及び公差を記入するのが一般的である。