JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図―ねじ及びねじ部品―第1部:通則

 

  製図ーねじ及びねじ部品ー第一部:通則 

       JIS B 0002-1 

 

    この規格はねじの製図に関することである。

   ねじに関する一般的な規格は例えば、B 0123 ねじの表し方 B 0205

   一般用メートルねじ、などがある。

 

  図示

  ねじの実形図示  

 ある種の製品技術文書(例えば、刊行物、取扱説明書など)において、単品又は組み

立てられた部品の説明のために、ねじを側面から見た図(¹)又はその断面図の実形図示

が、必要となることがある。ねじのピッチ、または形状のいずれも、一般に厳密な尺度

で描く必要はない。

 製図では、ねじの実形図示は、絶対に必要な場合だけ使用するのが良く、つる巻き線

は、可能な限り直線で表わすのが良い。

   (¹)ねじの軸線に直角な方向から見た図。

 

       

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 ねじの製図は、普通簡略化して表わされ、実形で表わされることはない。この規格で

も、”絶対に必要な場合だけ” と、他では見られない表現となっている。絶対に必要な

場合とはどんな場合なのかは不明である。例えばねじの山形を表す場合は断面図にすれ

ば充分表現できる。

 

  通常図示

 通常は、全ての種類の製図では、ねじ及びねじ部品の図示は、慣例によって下図に示す

ように単純にする。

 ねじの外観及び断面図  側面から見た図及びその断面図で見える状態のねじは、下

図に示すように、ねじの山の頂を太い実線(JIS Z 8312)   で、ねじの谷底を細い実線

(JIS Z 8312)で示す。

 ねじの山の頂と谷底とを表す線の間隔は、ねじの山の高さとできるだけ等しくするの

がよい。ただし、この線の間のすきまは、いかなる場合にも、次のいずれか大きいほう

の値以上とする。

  ― 太い線の太さの2倍

  ― 0.7mm

     備考1. ある場合、例えば、CADでは、次のようにする。

         ― 呼び径8mm以上のねじに対しては、一般に1.5mmの間隔が

           受け入れられている。

         ― 呼び径6mm以下のねじに対しては、簡略図示が推奨されてい

           る。(JIS  B  0002-3参照)。

 

 ねじの端面から見た図 ねじの端面から見た図において、ねじの谷底は、細い実線で

描いた円周の3/4にほぼ等しい円の一部(下図参照)で表し、できれば、右上方に4

分円を開けるのがよい。面取り円を表す太い線は、一般に端面から見た図では省略する

(下図参照)。

     備考2.欠円の部分は、直交する中心線に対して、他の位置にあってもよい

        (下図参照)。

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 ねじの図示は慣例によるものらしい。古い規格では不完全ねじ部は30°などの規定が

あったように思うが。

 JIS  Z 8312 は、製図ー表示の一般原則ー線の基本原則 である。線の太さは、JIS

B   0001 機械製図   でも同じ内容が規定されている。

 ねじの山の頂と谷底の間隔は、普通、太い線は、0.25で描かれるので上記のすき間の

規定は0.7mm以上となる。

 一般用メートルねじの場合、加工現場では谷の径は 外形-ねじのピッチ で求めら

れており、製図の場合もこれにもとづいて作図される。

 M8ねじの場合は、谷径は6.75mm、ねじ山の高さは0.625mmとなり、0.7mmのすき

間より少なくなる。これを1.5mmで描くと、できるだけ等しくすることにはならない。

 実際のところは、M6位までは、すき間0.7mmにして描かれているようである。それ

以下の場合は拡大図を描くことになる。

 

 ねじの端面から見た図において、ねじの谷径は細い実線で、円周の3/4の円の一部で

あらわすが、規定が変更されてかなり経つがまだまだ普及していない。一度描かれたも

のは、出図されるときにもちろん訂正はされないだろうし、新たに描かれるものも、円

を描いてからその円周の1/4を消すのは、面倒である。円周の3/4にするのは一目でねじ

と分かるようにするためであろうが、それだけのメリットがあるとは思えない。知らな

い人には、円の一部が掠れてしまっているぐらいにしか思われない。

 面取り円を表す太い線は、一般には省略している。特殊な場合で面取り量が多い場合

も省略して差し支えないであろう。

 

 隠れたねじ 隠れたねじを示すことが必要な場合では、山の頂 ¹⁾及び谷底 ²⁾は、下図

に示すように細い破線(JIS Z  8312による。)で表す。

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  1)山の頂は、通常、おねじの外形、及びめねじの内径を指す。

   2)谷底は、通常、おねじの谷の径、及びめねじの谷の形を指す。

 

 かくれ線を表す場合、線種は細い破線又は太い破線であるが、ねじの場合細い破線と

限定される。外観図や断面図の場合とは線種が異なる。

 旧規格では、山の頂は太線、谷底は細線、であったのでいまだに、このように描かれ

ていることが多いようである。

 ねじを加工する際の、不完全ねじ部、逃げ溝は図示するのがよいと参考で書かれてい

るが、例図はそのように示されていない。例図を訂正せずに、とってつけたように参考

文を載せているのは手抜きと思われても致し方ない。

 

 ねじ部品の断面図のハッチング  断面図に示すねじ部品では、ハッチングは、ねじ

の山の頂を示す線まで伸ばして描く(上図及び下図参照)。

 

 ハッチングを施す場合、ねじの谷底を示す線で止めているのは間違いである。ハッチ

ングは断面図の項で述べたように必ずしも必要でないので、ねじの場合も施さなくてよ

い。

 

  ねじ部の長さの境界  ねじ部の長さの境界は、次による。

 ― 見える場合には、境界を示す。図示には太い実線を用いる。

 ― 隠れている場合に、境界を示してもよい。図示には細い破線を用いる。

 これらの境界線は、ねじの大径(おねじの外径、またはめねじの谷の径)を示す線で

止める(上図及び下図参照)。

 

 

 長さの境界は見えない場合、境界を示さなくてもよいのだが、ねじ山の部分には線を入れる。これは破線ということになるのだが短いため現実には細い実線になる。

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 不完全ねじ部 不完全ねじ部は、植込みボルトの植え込み部を除き、ねじ部の終端を

越えた所である。

 不完全ねじ部は、機能上必要な場合(上図参照)、又は寸法指示をするために必要な

場合(上図参照)には、傾斜した細い実線で表す。ただし、不完全ねじ部は省略可能で

あれば、表さなくてもよい(上図参照)。

 

 不完全ねじ部は、文章で表すと上のようになるのだろうが、図で表すと上図の右下

図、xで寸法が示された部分のことである。機能上必要な場合とは、上図左上図のよう

に、不完全ねじ部までねじ込む場合のことである。

 以前は不完全ねじ部も表したが、現在は省略可能であれば表わさなくてよいので、表

す必要はない。

 

  組み立てられたねじ部品

 前項に規定する通常図示は、ねじ部品の組み立てにも適用する。ただし、おねじ部品

は、常にめねじ部品を隠した状態で示し、めねじ部品で隠さない(上図参照)。めねじ

の完全ねじ部(²)の限界を表す太い線は、めねじの谷底まで描く(上図参照)。

   (²) 参考図1参照。

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 組み立てられた、おねじめねじは常におねじが優先されて描かれる。作図するときは

何の疑問も持たずそのように描いているだろうがこの項で明確に規定されていることで

ある。

 

  ねじ部品の指示及び寸法記入 

   呼び方  

 ねじの種類及びその寸法は、ねじに関する規格に規定する呼び方によって指示をす

る。

 図面に呼び方を指示する場合には、名称及び規格番号は、省略する。

 一般に、ねじの呼び方は、次の事項を含む。

 ― ねじの種類の略号(標準化された記号、たとえば、M、G、Tr、HA、など)

 ― 呼び径又はサイズ(例えば、20、1/2、40、4.5など)

 もし必要なら、次の事項を追加する。

 ― ミリメートルによるリード(L)

 ― ミリメートルによるピッチ(P)

 ― ねじ山の巻方向(ねじ山の巻方向の指示参照)

 さらに必要なら、次の事項も追加する。

 ― 該当する規格による公差等級。

 ― ねじのはめ合い長さ(S=短、L=長、N=並)

 ― 条数

 例 付属書Aに示す国際規格による。)

   a) M20x2-6G/6-LH      )   Tr40x7

   ) M20xL3‐P1.5-6H‐N     )   HA4.5

      ) G 1/2 A

 

   

 ねじに関する規定は数多く、JIS   B 0101 ねじ用語、 B 0123 ねじの表し

方、B 0143 締結用部品ーねじ部品の寸法の記号及び意味、B 0205-1~4 一般

用メートルねじ、などがある。

 この中のどの規格が規定に合うものか、標準化された記号は、どこで規定されている

のかなどは、調べるのが大変である。 

 この規格も途中に注釈や備考がが入ったり参考図が出てきたりと、ちぐはぐな感じが

するのは否めない。もっとスッキリとならないものかと思う。

 

 

 寸法記入

  ねじの呼び径dは、常におねじの山の頂¹⁾(上図参照)、またはめねじの谷底²⁾(上

図参照)に対して記入する。

 不完全ねじが機能上必要である場合(例えば、植込みボルト)、かつ、そのために明

確に図示する場合(上図参照)以外には、ねじ長さの寸法は、一般にねじ部長さ(上図

参照)に対して記入する。

    備考3. ねじ先の寸法(JIS B 1003参照)は、ねじ部長さ(b)又は呼び

         長さ(L)に含めるのがよい。

    参考  JIS B 1003 によるおねじ部品のねじ先の寸法は、ISO 4753の規

  定内容とと同等である。

 すべての寸法は、JIS Z 8317 及び JIS B 0143 によるか、又は次項の ねじ長さ及び止まり穴深さ によって表示する。

    参考  JIS Z 8317 による寸法の表し方は、ISO 129 の規定内容とと同

  等であり、JIS B 0143 によるねじ部品各部の寸法の呼び及び記号は、ISO 225

  の規定内容と同等である。

 

 JIS B 1003 は、締結用部品ーメートルねじをもつおねじ部品のねじ先。Z  

8317 は、製図ー寸法及び公差の記入方法。B 0143 は、締結用部品ーねじ部品の寸

法の記号及び意味、である。

 

 ねじ長さ及び止まり穴深さ 

 ねじ長さ寸法は一般に必要であるが、止まり穴深さは、通常、省略してもよい。

 止まり穴深さ表示の必要性は、主として部品自身、又はねじ加工に使用する工具のい

かんによる。穴深さの寸法を指定しない場合には、ねじ長さの1.25倍程度に描く(下図

左参照)。また、下図右に示すような簡単な表示をしてもよい。

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 止まり穴深さは、普通ねじ下穴と呼ばれている。特殊なねじ以外は、下穴寸法は記入

する必要はない。深さも、ねじ長さの1.25倍は必要なく、ねじ長さでなくねじ径の半分

程度の長さで描くのが普通か。

 

 

 ねじ山の巻方向の指示

 右ねじは、一般に、特記する必要はない。左ねじは、ねじの呼び方に略号LHを追加

して示す。同一部品に右ねじ及び左ねじがある場合にはそれぞれ双方に示す。右ねじ

は、必要なら、ねじの呼び方に略号RHを追加して示す。

 

 LHは LeftーHand Thread RHは Right-Hand Th

read のことである。記号ではなく、右、左、と記入されてもいる。

 同一部品に右、左、両方のねじがある場合は、それぞれに示さなくてはならないが、

右ねじはなにも記さない、左ねじの場合のみ記入するというのが浸透しているため、右

ねじに何か記されていると、左ねじではと勘違いされる恐れがある。明確に記入する必

要がある。

 

 規格では、この後、附属書A(参考) 参考文献 として7項目あるが、割愛します。