JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

センタ穴の簡略図示方法

    製図ーセンタ穴の簡略図示方法

       JIS B 0041

序文 この規格は、1982年に第1版として発行されたISO 6411、Technical drawings-

Simplified representation of centre holes を翻訳し、技術的内容及び規格表の様式を変更

することなく作成した日本工業規格である。

 

1. 適用範囲 この規格は、センタ穴の簡略図示方法及びその呼び方について規定す

る。センタ穴の簡略図示方法は、正確な形状及び寸法を特に示す必要がない場合、及び

標準化されたセンタ穴の呼び方だけで図面情報として十分に伝えることができる場合に

用いる。

 2.引用規格 次に掲げる規格は、この規格に引用されることによって、この規格の規

定の一部を構成する。これらの引用規格は、その最新版を適用する。

  JIS   B  4304  センタ穴ドリル

  備考 ISO 866.   (英名略)

     ISO 2540.    ( 〃    )

     ISO 2541.    (   〃  ) 3規格の引用事項は、この規格と同等である。

  JIS Z 8316 製図ー文字―第一部:ローマ字、数字及び記号

  備考 ISO 3098-1 (英名略) が,この規格と一致している。

  JIS Z  8316 製図ー図形の表し方

  備考 ISO 6428. (英名略)

3. 図面指示

3.1 要求事項 一般に次の3種類の要求をセンタ穴の形状および寸法について、図面

上で示すことができる。

a) センタ穴を最終仕上がり部品に残すことを要求する場合。

b) センタ穴を最終仕上がり部品に残してもよいが、基本的な要求ではない場合。

c) センタ穴を最終仕上がり部品に残してはならない場合。

3.2 簡略図示方法 センタ穴の記号及び軸の端面への図示方法は、表1の “記号” 欄に

よる。

3.3 センタ穴の呼び方 センタ穴の呼び方は、センタ穴ドリルに基づいており、セン

タ穴ドリルについての日本工業規格によって指示してもよい。

 センタ穴自体の呼び方は、次による。

―この規格の規格番号

―センタ穴の種類の記号(R,A又はB)

パイロット穴径d

―座ぐり穴径D(D₁~D₃)

 二つの数値(d及びD)を斜線で区切る。

  d=2.5mm及びD₃=8mmを持つB形のセンタ穴(¹)は、図面上に次のように

   図示するのが良い。

   JIS B 0041-B2.5/8

   (¹)センタ穴の加工に対して、JIS B 4304によってd=2.5mm及びD=

      10mmのセンタ穴ドリルが使用される。ただし、Dは、シャンク径であ

      る。

4. 呼び方の説明 センタ穴を指示するために用いる種々の呼び方、その呼び方によっ

て指示される寸及び使用されるセンタ穴ドリル径に基づく寸法の関係を表2に示す。

 図面上に指示するセンタ穴の詳細な内容については、附属書Aに示す。

         

      表1 センタ穴の記号及び呼び方の図示方法    単位 mm        

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      表2 呼び方の説明               単位 mm

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      附属書A(規定) R形、A形及びB形のセンタ穴の寸法

センタ穴を指示するために必要の寸法を表3に示す。

 

         表3 推奨するセンタ穴の寸法         単位 mm

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      附属書B(規定) 記号の形状及び寸法

 図面上の他の記述(寸法、公差など)とこの規格で規定する記号の寸法とを整合させるために、次の規定による。

B.1 一般的要求事項

B1.1 本体の表1に示す記号は、個々の図面中の寸法に対して用いる文字の高さ

(h)の1/10に等しい線の太さ(d´)で書く。

B1.2 センタ穴の呼び方の指示に用いる数字及びローマ字の大文字は、個々の図面

中の寸法に対して用いるときと同じ線の太さ(d)、文字の高さ(h)及び文字の種

類、並びに JIS  Z  8313-1 によって書く。

B1.3 隣接した線同士の最小間隔は、JIS  Z  8316  又は  ISO  6428 による。

 この間隔は、0.7 mmよりも狭くてはならない。

B.2 形状 記号及び領域aに示す呼び方は、図1に示すように書く(B.3参照)。

B.3 寸法 記号及び呼び方の指示に用いる寸法は、表4による。

 

 

       表4 寸法         単位 mm

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  センタ穴の製図は特に難しいというものではない。記号等の書き方の詳細が規定さ

れているが、製図の一般規定と同じことであり、普通の寸法記入をすればよく、この

規定にとらわれることはない。

 

 この規定だけのことではないが、ISO規格を翻訳したものは、日本語としてどうかと

思われるものがある。例えば、この規格の附属書Bの冒頭、"図面上の他の記述とこの

規格で規定する記号の寸法とを整合させるために、次の規定による”のところ。AとB

とを~させるために~による、はおかしい。~させるために~を規定する、あるいは

~ させるのは~による、くらいの表現で良いのでは。

 

 センタ穴の製図は別にして、センタ穴自体は今も加工上の重要なポイントとなる部分

である。特に精密加工ではこのことが顕著となる。センタ穴が図面上に詳細に描かれて

いればそこの技術レベルは高いと思って間違いない。規定どうりの寸法を当てはめてい

ないことや公差が記入されているなど工夫が見られればなおさらである。ただしこのこ

とを積極的に図面にあらわして公開していない場合もある。

 

 センタ穴を仕上がり部品に残さない場合は、この規格の記号を使うより、取り除く部

分の形状を想像線(二点鎖線)で描きそこにセンタ穴を記入したほうが間違いがない。

 センタ穴そのものは JIS  B  1011 センタ穴 の規格があり、ここではR形、A形、

B型のほかにC形が規定されている。

  B 0041 でC形について記載がなく、B 1011 では,関連規格として記載されている

のは "B 0041 センタ穴の図示方法" で、簡略図示方法とはなっていない。連携という

点では不十分であろう。

 

 センタ穴を仕上がり品に残さない場合と、C形のセンタ穴を参考図として示す。

 

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 センタ穴を残さない場合は、簡単なA形でよいので 、d 寸法を指示しておけばよい。

 

 センタ穴は、60°の他 75°、90° があるが一般には使用されない。