JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

普通公差―第1部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差

      普通公差-第1部:  

   個々に公差の指示がない長さ寸法

    及び角度寸法に対する公差

      JIS B 0405

 

 この規格は、公差についての考え方の規定であり、図面化の場合は、寸法公差及び

はめあいの方式と同様に、製図ー公差表示方式の基本原則 JIS  B  0024 による。

 前書きには、ISO規格を翻訳し作成した日本工業規格である、と記載されている。

したがって他の翻訳された規格同様、おかしな文章が見受けられる。

 

序文 すべての構成部品の形体は、常に寸法及び幾何形状を持っている。寸法の偏差及

び幾何特性(形状、姿勢及び位置)の偏差がある限界を超えると、部品の機能を損なう

ので、それらの偏差の制限を必要とする。

 図面上の公差表示は、すべての形体の寸法と幾何特性の要素を確実に規制するために

完全でなければならない。すなわち、工場又は検査部門において、採否判定が暗黙の了

解のもとに任されることがないようにしなければならない。

 寸法及び幾何特性に対する普通公差の使用によって、この必要条件を満たしているこ

とを確認する業務を簡単にすることができる。

 

*この必要条件を満たしていることを確認する業務とは、検査のことなので単に検査業

務と言っておいてよいのでは。言葉の重複を避けるためなのかは分からないが、・・・

普通公差の使用によって、検査業務を簡単にすることが・・・、とした方がすっきりす

る。

 

1. 適用範囲 この規格は、図面表示を簡単にすることを意図し、個々に公差の指示が

ない長さ寸法及び角度寸法に対する四つの公差等級の普通公差(general tolerance)に

ついて規定する。

 

*ここの文章も、・・・長さ寸法及び角度寸法に対する普通公差を、四つの公差等級に

して規定する。とした方がすんなりする。

 

  備考1. 長さ寸法及び角度寸法に対する普通公差表示方式の背景にある概念は、

      属書Aに述べる。

       この規格は、金属の除去加工(metal removal)又は板金成型(forming

      from sheet metal)によって製作した部品の寸法に適用する。

    2. これらの公差は、金属以外の材料に適用してもよい。

    . 類似の規格があり、または計画されている。以下略

   参考 略

  この規格は、個々に公差指示がない次の寸法だけに適用する。

  () 長さ寸法(例えば、外側寸法、内側寸法、段差寸法、直径、半径、間隔、

      かどの丸み及びかどの面取り寸法)。

  () 角度寸法[通常、図面に指示されない角度、例えば、JIS  B  0419が引用さ

      れていない直角(90°)、又は正多角形の角度を含む。]。

  () 長方形の枠内に指示した理論的に正しい寸法。

 

2. 一般事項 公差等級を選ぶ場合、個々の工場で通常に得られる加工精度を考慮しな

ければならない。個々の形体(feature)に対して、より小さな公差が要求される場合、

又はより大きな公差が許容され、かつ、それがより経済的である場合には、そのような

公差をその基準寸法に続けて個々に指示するのがよい。

 長さ寸法及び角度寸法に対する普通公差は、4.および5.に従って図面または関連文

書にこの規格が引用されるときに適用する。他の工作方法に対する普通公差が別の規格

に規定されている場合には、図面または関連文書にそれらを引用する。仕上げられてい

ない表面と仕上げられた表面との間の寸法(例えば、鋳造品又は鍛造品の場合)に対し

て、個々に公差が直接指示されていない場合には、問題とする二つの普通公差のうちの

大きいほうを適用する。例えば、鋳造品に対しては、JIS  B  0403を参照.

3. 引用規格 省略

    備考 二項目省略

4. 普通公差

4.1 長さ寸法 長さ寸法に対する普通公差は、表1及び表2に示す許容差による。

 

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4.2 角度寸法 角度の単位で指定した普通公差は、線の、又は表面を構成している線

分の一般的な姿勢だけを規制し、それらの形状偏差を規制するものではない。

 実際の表面から得られる線の一般的な姿勢は、理想的な幾何学的形状の接触線の姿勢

で決まる。このとき、接触線と実際の線との間の最大間隔は、できるだけ小さい値でな

くてはならない(JIS  B  0024参照)。

 角度寸法の普通公差は、表3に示す許容差による。

 

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5. 図面上の指示 この規格による普通公差を適用する場合には、次の事項を表題欄の

中又はその付近に指示する。

 () "JIS  B  0405"

 () この規格による公差等級

    例 JIS  B  0405-m

  参考 省略

6. 採否 特に明示した場合を除いて、普通公差を超えた工作物でも、工作物の機能が

損なわれない場合は、自動的に不採用としてはならない(附属書A.4参照)。

 

  附属書A 長さ寸法及び角度寸法に対する普通公差表示方式の

       背景にある概念(参考)

 A.1 普通公差は、本体5.に基づき、この規格を引用することによって、図面上に指

示するのが良い。

 普通公差の値は、工場の通常の加工精度の程度に対応したものであり、部品に対する

要求事項に応じて適切な公差等級を選び、図面上に指示される。

A.2 工場の通常の加工精度に対応する公差値を超えて公差を大きくしても、通常、生

産の経済性における利益は得られない。例えば、35mmの直径を持つ形体は、通常の工

場では、”中程度の加工精度”  に良く適合したレベルで製作できる。したがって、±0.3m

mの普通公差が全く適切であろうから、±1mmの公差値を指定することは、この特定

の工場に利益をもたらさないであろう。

 しかし機能的理由によって、形体に〝普通公差゛よりも小さい公差値を要求する場合

には、その形体に対して、その大きさ又は角度を規定する寸法に続けて、より小さい公

差を個々に指示する。この種の公差は普通公差の適用範囲外である。

 形体の機能が普通公差の値に等しいか、又はそれより大きい公差を許容する場合に

は、公差を個々に指示しないで、本体5.に規定したように、図面上に明示するのが良

い。この種の公差は、普通公差方式の概念を最大限に使用できる。

  形体の機能が普通公差よりも大きな公差を許容し、かつ、より大きな公差が生産上の

経済性ををもたらす場合には、〝規則の例外゛がある。これらの特別な場合には、より

大きな公差を特定の形体(例えば、組立で穴あけする止り穴の深さ)の寸法に続けて

個々に指示するのがよい。

A.3 普通公差の適用には、次の利点がある。

 () 図面が容易に読め、情報伝達が図面の利用者に、より効果的になる。

    () 製図者は、機能が普通公差と等しいか、又はそれより大きい公差を許容する

       ことだけを知れば十分であるので、詳細な公差の算定を避けることによって

     時間を節約できる。   

 () 図面は、どの形体が通常の工程能力(normal process capability)  によって生

     産できるかを容易に指示でき、それはまた、検査水準を下げることによって

     品質管理業務を助ける。

 () 個々に指示した公差を持つ残りの寸法は、大部分はその機能上相対的に小さ

     い公差が要求され、それゆえ製造において特別な努力が要求される形体を規

     制するものである。これは製造計画に役立ち、検査要求事項を解析する際に

     品質管理業務に役立つものである。 

 () 受注及び受注契約の技術者は、契約が成立する前に〝工場の通常の加工精

     度゛がわかるので、容易に注文を取り決めることができる。これはまた、図

     面が完全であることを期待しているから、受渡当事者間の引渡しにおいて、

     争いを避けることができる。 

 これらの利点は、普通公差を超えないという十分な信頼性があるとき、すなわち、特

定の工場の通常の加工精度が図面上に指示された普通公差に等しいか、又はそれより加

工精度が良いときにだけ得られる。 

 そのためには、工場では次のことを行うのがよい。

 ・測定によって、工場の通常の加工精度をつかむ。

 ・普通公差が工場の加工精度に等しいか、またはそれより公差の大きい図面だけを受

  け入れる。 

 ・工場の通常の加工精度が低下していないことを抜き取りによって調べておく。

A.4 機能によって許容される公差は、普通公差よりも大きいことがしばしばある。そ

のため、工作物のいずれかの形体で普通公差を(ときおり)超えても、部品の機能が必

ずしも損なわれるとは限らない。普通公差から逸脱し、機能を損なう時だけ、その工作

物を不採用にする。

 

 

 この規格は、公差についての考え方である。  6.採否 及び附属書A.4 で公差を

外れた場合の不採用の扱いについて述べられている。  公差というものに対しての1つ

の見解の例ではあるが、現実にはこの規格のこの項目をあてはめることはまずないであ

ろう。 

 まず第一に、この規定があることが知られていない。したがって、取引時にこの項目

が確認されることはない。

 一般に取引においては、規格に適合しているか云々より、その力関係でそのことは決

まる。

 力のあるほうが「それはまずいですね」となればそれまでである。

 また機能が損なわれないと判断する責任者が明確になっていないし、判断するにも、

耐久性や、メンテナンス等を考慮して検討しているよりも、作り直したほうが早いとな

る。公差から外れたものを採用するとなると、なんのための公差なのかということにも

なる。

 製図担当者に判断する権限があることは少ないが、まず問い合わせがあるのはこの部

署である。余分な時間を取られてしまう損な役割となる。

 規定としてはあってくれたほうが良く、考え方としてもあって当然なことといえる

が、悲しいかな、受け入れられていないのが実情である。