製図―寸法及び公差の記入方法―第1部:一般原則
JIS Z 8317-1
※ 前頁からの続きになります。
この頁の内容も、機械製図の規定の方が詳しくなっています。前頁と同様に、以前の
頁 寸法記入方法(1)~(7)を参照願います。
5 寸法記入要素
5.1 一般事項
寸法記入要素は、寸法補助線、寸法線、引出線、端末記号、起点記号及び寸法数値
(基準寸法)である。寸法記入要素を図3、起点記号を図3及び図62~図64に示す。
※ 図62~図64は、次回の頁に掲載します。
5.2 寸法線
寸法線は、JIS Z 8312 によって連続する細い線を実線を用いて描く。
寸法線は、次の表示をする場合に用いる。
― 指示する長さに平行な長さ寸法(図4参照)。
― 角度寸法又は円弧の長さ寸法(図5及び図6参照)。
― 円弧の中心からの半径(図6参照)。
スペースが狭い場合には、寸法線を延長してもよく、逆方向の矢印を用いてもよい
(図1参照)。 ※ 図1は前ページ。
破断線を用いて、形体の中間部分を省略して破断表示した場合でも、寸法線は切断し
ない(図7参照)。
寸法線は他の線と交差してはならないが、やむを得ない場合には寸法線を切断しない
で引く(図8参照)。
※ 寸法線を、他の線と交差しないように引くのは、製図者のセンスであり、能力であ
る。
やむを得ず交差させる場合は、寸法線は切断しない規定ではあるが、どちらかを切断
させていることがある。
規定上は誤りであるが、理解しやすいことを考慮すると、切断させてもいいように思
う。ただしどちらかを切断するのに場所によっては、かえって解りにくくなることもあ
るので注意は必要である。
次の場合には、寸法線を短くしてもよい。
― 直径寸法が指示された場合(図9参照)。
― 対称図形で片側だけを投影図又は断面図によって表した場合(図55及び図56参
照)。
― 対称図形で半分を投影図、他の半分を断面図によって表した場合(図9参照)。
― 寸法記入のための基準形体が図面に描かれていない場合、及び表示の必要性がない
場合(図40のR62参照)。
― 建築図面で座標点が指示された場合(図10参照)。
5.3 端末記号及び起点記号
5.3.1 図11に示す端末記号及び図12に示す起点記号の大きさは、附属書Aによる。
5.3.2 寸法線の端末は、図11に示すいずれかを用いる。
※ 附属書Aは、次の頁。
寸法線の端末は、c)の30° 開き矢が一般的である。会社、工場などで、使用する端
末が決められている場合以外は、この端末を使用しておいた方が良いであろう。但し使
用するCADソフトによる。
5.3.3 寸法線の原点は、図12のように起点記号によって指示する。
5.4 寸法補助線
寸法補助線は、JIS Z 8312 によって連続した細い実線を用いて描く。
寸法補助線は、寸法線から寸法補助線の太さの約8倍の長さに延ばして引く。
寸法補助線は、指示する長さの方向に対して直角に引く(図4、図5、図7~図9及
び図13参照)。技術分野によっては、形体と寸法補助線の始点とのすき間(寸法補助線
の太さの約8倍)があってもよい(図14参照)。
寸法補助線は、斜めに引き出してもよいが、互いに平行に引く(図15参照)。
形体が交差する場合の形体の延長線は、交点から寸法補助線の太さの約8倍に延ばし
て引く(図16参照)。
※ 寸法補助線の寸法線から延長する長さは、寸法補助線の太さの約8倍。
形体が交差する場合の延長線も、寸法補助線の太さの約8倍。線の太さが、0.18mm
の場合、1.44mm延長させることになるが、実際に引かれているのは、もっと長いよう
である。
図面の見やすさを考えると、長めになるようで、規格の数値にこだわる必要はないよ
うである。
直線から円弧などのように輪郭形状が変化する領域では、寸法補助線は外形線の延長
線の交点から引く(図17参照)。
寸法補助線は、線のつながりにあいまいさがなければ、切断してもよい(図18及び図
19参照)。角度寸法の場合には、寸法補助線を中心方向に引く(図19参照)。
※ 寸法補助線は、切断してもよいので、例図のように特に寸法数値にかかる場合は、
数値の表示の妨げにならないようにしておくべきである。
5.5 引出線
JIS Z 8322 による引出線は、JIS Z 8312 によって連続した細い実線によって描
く。引出線は、必要以上に長くしないで形体に対して斜めに引くか、ハッチングの線と
区別できる傾きにする(図20及び図25参照)。
5.6 寸法数値(基準寸法)
5.6.1 表示
寸法数値は、マイクロフィルム(ISO 6428 参照)から再現した図面でも原図と同様
に、十分に判読できる大きさの文字によって図面に示す。JIS Z 8313-0 に従ったB形
直立体文字を用いるのがよい。
5.6.2 寸法数値の配置
寸法数値は、寸法線に平行に配置し、ほぼ中央で寸法線からわずかに離した上側に配
置する(図21、図22及び附属書A参照)。
寸法数値は、いかなる線によっても交差したり分離されないように配置する。例外
は、5.6.3を参照。
斜めの寸法線上の数値は、図23の向きに記入する。
角度寸法の数値は、図24の向きに記入する。
5.6.3 寸法数値の特殊な配置
寸法数値の位置は、状況に応じて次のようにする。
a) 寸法補助線の間隔に制約がある場合には、一方の端末記号を越えて延長した寸法
線の上側に寸法数値をを配置することができる(図25参照)。
b) 一般の方法で寸法数値を記入するには寸法線(寸法補助線間)が短すぎる場合に
は、その寸法線に接するように引出線を引き、参照線(図3参照)の上側に寸法
数値を記入することができる(図25参照)。
c) スペースに制約があって寸法数値をを寸法線に平行に配置できない場合には、寸
法線を延長して水平にした線の上側に記入することができる(図26参照)。
d) 累進寸法記入では、寸法数値を端末記号の近くに記入する(図63及び図64参
照)。
※ 図63及び図64は次の頁に掲載
b)の引き出し線を使用する場合、引出線には端末記号をつけない。矢印をつけてい
るのを目にするが、スペースがないところに、規定されていない物を記入することはな
い。
5.7 寸法を表す文字記号
照合文字によって寸法数値を表してもよい。この場合、寸法数値は同じ図面又は関連
する文書に定義する(図27参照)。
5.8 表形式寸法記入法
類似の部品で寸法が異なる形体では、寸法を数値表によって示す表形式の方法を用い
ることができる(図27参照)。
注記 半径が他の寸法から導かれる場合には、半径を示す矢印及び数値なしの寸法
補助記号並びに参考寸法を表す括弧によって(R)のように指示する。
※ 冒頭にも述べたが、寸法の記入方法は、機械製図に詳しく規定されている。
細かい規定がいろいろあるが、肝心なことは、読み誤りされないこと、別の解釈をされ
ないことである。
これらの心配がなければ、規定からのの多少の逸脱は問題ないであろう。