JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製品の技術文書情報(TPD)ー長さ寸法及び角度寸法の許容限界の指示方法

      製品の技術文書情報(TPD)ー

   長さ寸法及び角度寸法の許容限界の指示方法

      Technical product documentation(TPO)ー

    Indication method of tolerances for linear and angular dimensions

        JIS Z 8318

 

 

 機械製図では、寸法記入方法の項目の中で、JIS Z 8318 によって寸法の許容限界を

指示すると規定されている。

 したがって、この規定が許容限界を指示、つまりは図示する場合のもととなる。

 但し、この規格の引用規格に、JIS  Z  8317-1  製図ー寸法及び公差の記入方法ー第1

部:一般原則 があるように、公差の記入方法の名がある規格は多々あるようである。

 なお、  JIS  Z  8317-1  製図―寸法及び公差の記入方法―第1部:一般原則 は、前の

頁にあり、この規格中の、公差記入要素は内容がこの規格と同じである。

 

     

1. 適用範囲 

 この規格は、製図における長さ寸法及び角度寸法の許容限界の指示方法について規定

する。

2. 引用規格

 次に掲げる規格は、この規格に引用されることによって、この規格の規定の一部を構

成する。これらの引用規格は、その最新版(追補を含む。)を適用する。

  JIS  B  0401-1  寸法公差及びはめあいの方式ー第1部:公差、寸法差及びはめあい

         の基礎

  JIS  B  0672‐1  製品の幾何公差仕様(GPS)ー形体ー第1部:一般用語及び定義

  JIS  Z  8114  製図ー製図用語

  JIS  Z  8317-1  製図ー寸法及び公差の記入方法ー第1部:一般原則

 

3. 用語及び定義

 この規格で用いる主な用語及び定義は、JIS  Z  8114  及び JIS  Z  8317-1  によるほ

か、次による。

3.1 

寸法(dimension)

 二つの形体間の距離若しくは位置を表す角度、又はサイズ形体の大きさ若しくは大き

さを表す角度。

3.2

基準寸法(basic dimension)

 指示された単位で示し、線と適切な記号によって図面上に示された寸法数値。ただ

し、許容差、公差などの数値は除く。

3.3

長さ寸法(linear dimension)

 二つの形体間の距離又はサイズ形体の大きさを表す寸法(JIS  Z  8317-1  参照)。

  注記 長さ寸法には、実体の大きさを表すサイズ(寸法)と穴の位置、溝の位置な

     どを表す位置寸法とがある。"長さ寸法"を"長さ"という場合がある。

3.4

角度寸法(angular dimension)

 二つの形体間の位置を表す角度又はサイズ形体の大きさを表す角度( JIS  Z  8317-1 

参照)。

  注記 角度寸法には、実体のある円すい角、プリズム角などを表す角度サイズと、

     傾斜穴の位置、中心面の位置などを表す角度寸法とがある。"角度寸法"を

     "角度"という場合がある。

 

4 単位及び文字の表し方

 寸法許容差は、基準寸法と同じ単位で表す。一つの基準寸法に対して、二つの寸法許

容差を示す場合には、小数点以下の桁数をそろえて指示する(図1及び図2参照)。た

だし、寸法許容差の一方がゼロのときを除く(図3参照)。

 

5 長さ寸法の許容限界の指示方法

5.1 寸法許容差数値による方法

 寸法許容差付き寸法の各要素は、次の順序で記入する(図1図4参照)。

) 基準寸法

) 寸法許容差

 上および下の寸法許容差を示す場合には、下の寸法許容差の上側に上の寸法許容差を

記入する(図1参照。図1の例では、下の寸法許容差は、-0.24 で、上の寸法許容差は

+0.12 である。)か、一列に上の寸法許容差に続けて下の寸法許容差を斜線で区切って

記入する(図2参照)。

 いずれか一方の寸法許容差がゼロの場合には、数字0で示す(図3参照)。

 上及び下の寸法許容差が基準寸法に対して対称の数値の場合には、寸法許容差の数値

を一つだけ示し、数値の前に ± の記号を付ける(図4参照)

 

 寸法許容差の記入方法は、前々頁の 製図―寸法及び公差の記入方法―第1部:一

般原則 の中の、寸法許容差 の項目と同じである。

 したがってコメントも同じで以下のようである。

 

 公差域クラスの記号及び寸法許容差を示す数値は、寸法数値と同じ大きさで、1サイ

ズ小さくてもよい。

 古い規格では、寸法許容差は、寸法の右肩に小さく記入していた。

 これでは小さくて読み取り難いため、寸法の右側に上下に分けて寸法の半分の大きさ

で記入するようになった。

 それでもまだ充分ではなかったため現在のようになったが、1サイズ小さくてもよい

とはなっているとはいえ、未だに許容値が小さく書かれる傾向にあるのはこのような歴

史があるからか。

 

 許容値を上下に分けて記入する場合、寸法数値は中央にするのか下側にするのかは、

明確に規定されていないようである。誤読を防ぐ意味では、中央にしておいた方がよ

さそうである。

 

5.2 許容限界寸法による方法

 許容限界寸法を、最大許容寸法及び最小許容寸法で示す(図5参照)。

 

 許容限界寸法の数値に寸法補助記号が付記される場合には、最大許容寸法及び最小許

容寸法の両方に寸法補助記号を指示する(図6参照)。

 

5.3 片側許容限界寸法

 寸法を最小又は最大の何れか一方向だけ許容する必要がある場合には、寸法の数値の

後に" min "又は" max "を付記する(図7参照)。

 

5.4 記号による方法

 公差付き寸法の各要素は、次の順序で指示する(図8図10参照)。

) 基準寸法

) JIS  B  0401-1  に規定する公差域

    注記 公差域クラスは、寸法公差記号ともいう。

 公差域クラスの記号(図8参照)に加えて寸法許容差(図9参照)又は許容限界寸法

図10参照)を示す必要がある場合には、それらに括弧をつけて付記する。

 

※ 公差域クラスの記号に加えて寸法許容差又は許容限界寸法を示す場合の括弧は、付

ける必要はない。スペースのないところに記入する場合、込み入ってしまい、コピーし

た場合などに読みづらくなるだけである。

 

5.5 当てはめ方法による検証を要求する指示

 寸法の許容限界に対して当てはめ方法による検証を要求する場合には、表題欄の中又

はその付近に JIS  B  0672-1  を指示する。この場合、規定した方法、例えば、最小領域

法、最小二乗法などによって検証する。

 

6. 寸法許容差及び許容寸法の指示順序

 穴(内側形体)か軸(外側形体)かにかかわりなく、上の寸法許容差又は最大許容寸

法を上の位置に、下の寸法許容差又は最小許容寸法を下の位置に指示する。また、5.1

に記載した上及び下の寸法許容差を斜線で区切って一列に記入する(図2参照)。

 

7. 組み立て部品の長さ寸法の許容限界の指示方法

7.1 数値による長さ寸法の許容限界による方法

 組立部品の各構成部品に対する寸法は、その構成部品の名称(図11参照)又は照合番

号(図12参照)に続けて示す。いずれの場合にも、穴の寸法を、軸の寸法の上側に指示

する。

 

7.2 記号による方法

 基準寸法を一つだけ指示し、それに続けて穴の公差域クラスを、軸の公差域クラスの

前(図13参照)又は上側(図14参照)に指示する。

 なお、寸法許容差の数値を指示する必要がある場合には、括弧を付けてクラスの後に

付記する(図15参照)。

 簡略化のために、JIS  Z  8317-1  の規定にかかわらず、1本の寸法線だけを使って指

示してもよい(図11及び図12参照)。

 

 この場合の寸法許容差の数値に括弧を付けることも必要ないと思われる。

 

8. 角度寸法の許容限界の指示方法

 角度寸法の許容限界の指示方法は、長さ寸法の許容限界の指示方法についての規定を

同等に適用する。ただし、許容差は、角度寸法及びその端数の単位は、必ず指示しなけ

ればならない(図16図18参照)。角度寸法の許容差が分単位又は秒単位だけの場合に

は、それぞれ 0° 又は 0′ を数値の前へ付ける。

 角度寸法の許容限界をラジアンで指示する方法は、角度寸法に rad をつけて、その後

に許容差を分数又は少数で表示し、さらに rad を付けて指示する(図21参照)。

 なお、角度寸法の許容差は、図面の中では、度・分・秒(図16図18)、少数(

19及び図20)又は分数(図21)で統一して示し、混用しない。

 角度許容差が分単位又は秒単位だけの場合に、それぞれ 0° 又は 0′ を数値の前へ付

けることは、必要ないと思われる。付けなくとも誤解される恐れはないと思う。

 角度表示は、スペースをとることが多いので、出来るだけ省略しておいた方が良い。

 

 この頁だけでなく、他の頁でもあるような、JIS規定どうりに描かなくてもよいか

どうかに付いての判断の基準は、正しく伝わるかどうかである。

 描くスペース等で問題がなければ、JIS規定の指示に従っておいた方が良いのは、言

うまでもないことである。