JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図―図形の表し方の原則 その他の方法

     製図―図形の表し方の原則 

          JIS Z 8316

 

 前頁からの続きとなります。

 

5. その他の方法

5.1 隣接部分 隣接部分を示す必要がある場合には、対象物に隣接する部品は、細い

二点鎖線(線の種類K)で図示する。対象物の図形は、隣接部分に隠されても隠れ線と

してはならない。また、隣接部分は対象物の陰になってもよい(図37参照)。

 二点鎖線で図示する線は、想像線である。

 想像線は、隣接部分を図示する以外にも機械製図の線の種類及び用途の表中の注に記

されているように、"投影法上では図形に現れないが、便宜上必要な形状を示すのに用

いる。また、機能上・加工上の理解を助けるために、図形を補助的に示すためにも用い

る(例えば、継電器による断続関係付け。)"など、よく使用される。

 しかし、隠れ線など、すべてを二点鎖線で描くなどの規定の説明がされているものは

みられない。

 

5.2 相貫

5.2.1 実際の相貫 幾何学的に得られる実際の相貫線は、それが見える場合には太

い実線(線の種類A)で、また、隠れている場合には破線(線の種類E又はF)で描く

図38参照)。

5.2.2 仮想の相貫線 仮想の相貫線(隅肉や丸みのある角など)は、太い実線(線

の種類A)で外形線から離して図示する(図39参照)。

   参考 ISO  128 では、線の種類Bの細い実線を用いるよう規定されている。

5.2.3 相貫部の簡略図示方法 実際の幾何学的な相貫線又は仮想の相貫線の簡略図

示方法は、次のようにする。

   ― 二つの円筒間:交わり部の曲線は、直線に置き換える(図40、図41及び図 

     43参照)。

   ― 円筒と矩形の角柱間:交わり部の直線の変異は省略する(図42及び図44

     照)。

 互いに直交する部品が交差すると、相貫する部品の寸法差が大きくなるに従い、簡略

的な表現方法(図41図44参照)は、実際の相貫により近づき、ほぼそれになる。

    備考 この簡略図示方法は、図面が理解しにくくなる場合には用いないほうが

       よい。

 

 相貫については、以前の頁、特殊な図示方法の二つの面の交わり部  を参照願いま

す。そこでも述べているが、製図は図学ではないので、相貫部は、簡略図示法が用いら

れ、直線で図示される。

 しかし、この方法は規格に則り簡略して描いていると理解されないで、正確に描いて

いない、あるいは手抜きしていると取られてしまう。

 備考にあるように、図面が理解しにくくなる場合はもちろんのこと、出来るだけ実際

の形状に近づけてて描いておいた方が良い。

 


5.3 平面をもつ軸端部と開口部の図示方法

5.3.1 平面をもつ軸端部 補助投影図や断面図を省略する場合には、平面をもつ四

角い軸端部(図45参照)や平面をもつテーパ付きの端部(図46参照)は、細い実線(線

の種類B)の対角線を記入する。

5.3.2 四角い開口部 開口部を断面図なしで示す場合には、開口部に細い実線(線

の種類B)の対角線を記入する(図47参照)。

5.4 切断面の前側にある部品 切断面の手前にある部品を示す必要がある場合には、

これらの部品は細い二点鎖線(線の種類K)で図示する(図48参照)。

 

5.5 対称部品の投影図 時間と図面の空間を節約するために、対称部品は、全体の一

部だけを描いてもよい(図49図52参照)。

 対称線は、その両端に直交した二本の短い平行な細線を施すことによって示される

図49図50及び図52参照)。

 対象物を示す線を対称線を少し超えた所まで伸ばして描く(図51参照)。この場合

は、二本の短い平行線は省略してもよい。

   備考 この方法を適用する場合は、図面の理解を妨げないように注意する必要が

      ある。

 対称部品を一部省略して描く場合、二本の短い平行線を施すか、対称線を少し超え

たところまで描くかのどちらかになる。

 二本の短い平行な細線は、対称図示記号という(次頁の 製図―寸法及び公差の記入

方法―第1部:一般原則 3.2.5 参照)。機械製図では、規格の中で説明されてい

る( 図形の省略 の頁の 対称図形の省略の項 参照)。

 多くの図面では、単に対象線である中心線で省略したままとしている。

 おそらく対称図示記号の記入漏れか、この規定を知らずに記入していないかであろう

が、記入していなくても、対称部品を省略したものと正しく理解されているようであ

る。

 もともと対称図示記号を記入せずに中心線だけで対称部品の省略としていた時代

があったようである。

 

 

5.6 中間部分を省略した投影図 図面の空間を節約するために、長い対象物の必要な

部分だけを示してもよい。図示する部分は、部分投影図(2.6参照)として示し、それ

ぞれの部分はお互いに近づけて描く(図53及び図54参照)。

 この項目も以前の頁 図形の省略の 中間部分の省略 を参照願います。

 上記以外の旧規格での図示方法などを説明しています。

 

 

5.7 繰り返し図形の省略 同じ形の形体が繰り返される場合には、図55及び図56

示すように省略することができる。

   備考 いずれの場合にも、繰り返される形体の数および種類は、寸法記入又は注

      記によって指示しなければならない。

 この項目も以前の頁 図形の省略の 繰りかえし図形の省略 を参照願います。

機械製図での、繰り返される形体の数および種類、寸法記入又は注記による指示の例を

図で示しています。

 

5.8 拡大図 図形が小さいために、その部分の詳細な図示及び寸法の記入ができない

場合には、その部分を細い実線(線の種類B)によって囲み、かつ、英字の大文字で表

示する[図57a)参照]。

 次に、その部分を、別の箇所に拡大して描き、表示の文字及び尺度を付記する[図57

)参照]。

 この項目は、以前の頁 図形の表し方の 部分拡大図 の項を参照願います。

 

5.9 加工前の形状 加工前の形状を示す必要がある場合には、加工前の形状を細い二

点鎖線(線の種類K)で指示する(図58参照)。

 この項目で参照すべき規格は、機械製図の 線の種類及び用途の 表と図例だが、

以前の頁では掲載していない。

 機会があれば紹介するつもりです。

 

5.10 色の使用 製図では、色の使用は推奨しない。明確にするために色を用いる場

合には、それらの意味を図面上又は関連文書に明記しなければならない。

5.11 透明な対象物 透明な材質でできたものは、すべて透明でないものとして描

く。

 

 色の使用は推奨されていないが、最近では、理解しやすくするためか、線種ごとに

色を変えることが行われているようである。

 しかし場合によっては、かえって見ずらく分かり難いものとなってしまうことがある

ようである。

 規定には、色を用いる場合は、それらの意味を明記するようになっているが、それが

行われていることは少ない。

 カラーにした方が本当にわかりやすいのか見比べて検討する必要はあるようである。