JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製図―図形の表し方の原則 断面

     製図―図形の表し方の原則 

          JIS Z 8316

 

 前頁からの続きとなります。

 

 断面については、機械製図の断面図の規格がより詳しくなっており、これについて

は、以前の頁の、断面図(1)及び断面図(2)を参照願います。

 

4. 断面

4.1 断面のハッチングについての注意事項 ハッチングは、一般的に断面の切り口を

示すために用いる。ハッチングを施す場合には、複写を考慮に入れる必要がある。

 ハッチングはなるべく単純な形が良く、断面の主な外形線又は対称を示す線に対して

適当な角度、おそらく 45° で細い実線(線の種類B)を基本とする(図15,図16及び

17参照)。ただし、断面であることが明らかであれば、ハッチングを省略してもよい。

 離れた位置に現れる同一部品の切り口には、同一のハッチングを施す。また、隣接す

る部品のハッチングは、線の向き又は線の間隔を変える(図18及び図19参照)。

 ハッチング線の間隔は、ハッチング領域の大きさに比例させるのがよい(3.3

照)。ただし最小すき間は、守らなければならない。

 切り口が広い場合には、その領域の輪郭に沿って適切な範囲にハッチングを施す(

19参照)。

 平行する断面で取られた同一部品の切り口が隣り合って表示される場合はハッチング

グはすべて同じでなければならないが、区別する必要がある場合には、ハッチングをず

らすことができる(図20参照)。

 ハッチング領域の外側に文字等を記入することが不可能な場合には、ハッチングを中

断して記入する(図21参照)。

 断面を表す場合は、ハッチングのみの規定だけであるが、他の方法として塗りつぶ

しがある。塗りつぶす場合は、輪郭線が明確になるように淡い色を使用する。

 隣接する部品との違いをハッキリさせたい場合には色違いにするなどの手法を用いる

ことができる。ただし、印刷するときは、カラー印刷となる。

 

 

4.2 材質の種類を指示するハッチング ハッチングは、材料の種類を指示するために

用いることができる。

 材料を指示するために、異なるハッチングを用いる場合には、これらのハッチングの

意味を図面中にはっきりと指示するか、当該規格を引用して示す。

 

 当該規格がどの規格を示すのか不明であるが、材料については、以前の頁に、材料

記号(鉄鋼)、同(非鉄)、同(プラスチック)があるのでそちらを参照願います。

 

4.3 薄肉部の断面 薄肉部の断面は、塗りつぶして示してもよい(図22参照)。こ

の種類の断面図では、隣接する断面の間に、0.7 mm以上のすき間をあけなければならな

い(図23参照)。ただし、間違いを生じないなら、実際の寸法にかかわらず、一本の極

太の実線で表してもよい(図22A及び図23A参照)。

 この件に関しても、以前の頁 断面図(2) で説明しているので、参照願います。

 

 

4.4 断面図に関する注意 投影図の配置に関する原則(2.2参照)は、断面図を描

く場合と同様に適用される。

 切断面の位置が明らかな場合には、その位置や識別の指示をしなくてよい(図24及び

図35参照)。

 切断面の位置が明確でない場合や幾つかの切断面を識別する必要がある場合(図25

29参照)には、切断面の位置は、切断方向に変わる部分を太くした細い一点鎖線(

線の種類H)を用いて指示する。また、断面図は、関連する記号によって示す(図25

図29参照)。

 参照する断面の識別記号は、相当する断面図の真下か真上に記入する。しかし、同一

図面の中では、識別記号は同じ方法で配置する。また、その他の指示は必要ない。

 必要がなければ、切断面の奥にある部分を完全に描かなくてもよい。

 原則として、リブ、締結部品、軸、車輪のスポークなどの長手方向の断面は、取らな

い。したがって、ハッチングも施さない(図28及び図29参照)。

4.5 切断面

  一つの平面による断面(図24及び図25参照)

  二つの平行平面による断面(図26参照)

  連続した三つの平面による断面(図27参照)

  交差する二つの平面による断面、一方は投影面の方に回転して図示する(図28

  照)

 回転部品で、等間隔に設置される詳細部分の断面を図示する必要があるが、切断面上

に存在しない場合には、明らかであるならば、詳細部分は切断面上に回転して図示して

もよい(図29参照)。ただし、そのようにしたことを指示することが望ましい。

4.6 回転及び移動して示す断面 横断面は、その図の中で回転や移動して示してもよ

い。

4.6.1 その図の中に回転して図示する場合には、断面の外形線は細い実践(線の種

類B)で描く。また、それ以上の識別は必要ない(図30参照)。

4.6.2 移動して図示する場合には、断面の外形線は太い実線(線の種類A)で描

く。移動した断面図は、次のように配置する。

  ― 近くに配置し、細い一点鎖線(線の種類G)で関連付ける[図31a)参照]。

  ― 離れた場所に配置し、4.4で示した識別記号などの一般的な方法で明示する

            [図32b)参照]。

4.7 半断面図 対称形の対象物は、外形図の半分と断面図の半分を組み合わせて表す

ことができる(図32参照)。

4.8 部分断面図 全断面図又は半断面図では具合が悪い場合には、部分断面図を用い

ることができる。断面にする部分は、フリーハンドの細い実線(線の種類C)(図33

照)又はジギザグの細い実線(線の種類D)(図9参照)で示す。

4.9 一連の断面図の配置 一連の断面図は、配置の関係や理解に便利なように、

34図35及び図36に示すような方法で配置するのがよい。

 



 本文(本体)にあるように、切断面の位置が明らかな場合には、その位置や、識別

の指示は不要である。またハッチングも必要ではない。

 不要のものはできるだけ描くことはないのだが、明らかか明らかでないかはどう判断

するか。

 図面を描く人にとっては切断位置は、当然明らかである。図面を読む人のレベルをど

の程度に想定しておくか、初心者でもわかるようになんにでも識別記号をいれると、か

えって解りずらい物になってしまうことはあり得る。

 この規格の例図のようなものであれば、切断位置は明らかであると承知しておいてよ

いと思う。識別記号や、ハッチングは不要である。

 ただし、図29の場合にように、切断面上に回転して図示する方法については、指示し

ておかなくてもよいとは、あまり認識されていない。作図の間違いか、識別の記入漏

れ、ととらえられてしまう恐れが多分にあるので、明確にしておいた方が良い。

 そのようにしたことを指示しておくことが望ましいとあることは、そのようにしてお

いた方が良いようである。

 また、ここで述べられていることは、不要な図を出来るだけ描かないためのものであ

ろうが、寸法や、表面性状などを記入することを考えると、図を少なくすることにこだ

わる必要はない。むしろ、そのために図を多くしておくことも必要な場合がある。

 

 図29のハッチング部を塗りつぶしにしたものを、参考図として示しておく。