JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

材料記号(鉄鋼)

 

         材料記号(鉄鋼)

 図面には表題欄を設けるよう決められており、表題欄には図面番号、図名などを記

入する。材質については記載がないが、ほとんどの図面には材質を記入する欄がある。

材質を記入するのは、材質記号によるのが一般的である。しかし、材料記号そのものを

規定したJIS規格はない。

 ここではJISハンドブック鉄鋼1の参考に載せられている"鉄鋼記号の見方"で材

料記号を説明します。

 

  JIS鉄鋼記号の見方

 鉄鋼の規格は、まず鉄と鋼に大別し、さらに鉄は銑鉄、合金鉄及び鋳鉄に、鋼は普通

鋼、特殊鋼及び鋳鍛鋼に分類している。なお普通鋼は棒鋼、型鋼、厚板、薄板、線材及

び線のように形状別、用途別に、特殊鋼は強じん鋼、工具鋼、特殊用途鋼のように性状

別に鋼管は鋼種、用途別に、ステンレス鋼は形状別にそれぞれ細分化している。

1.1 規格本文に規定している鉄鋼記号

 鉄鋼記号は上述の規格分類に従い、原則として次の3つの部分から構成されている。

(1)最初の部分は材質を表す。

(2)次の部分は規格名又は製品名を表す。

(3)最後の部分は種類を表す。

   例1   400

       (1)  (2)  (3)

   例2  UP 

       (1)    (2)   (3)

(1)は、英語又はローマ字の頭文字、もしくは元素記号を用いて材質を表しているの  

   で、鉄鋼材料は、S(Steel:鋼)又はF(Ferrum:鉄)の記号ではじまるものが

   大部分である。

   例外 SiMn(シリコンマンガン)、

      MCr(金属クロム)などの合金鉄類

(2)は、英語又はローマ字の頭文を使って板・棒・管・線・鋳造品などの製品の形状

   別の種類や用途を表した記号を組み合わせて製品名を表しているので、S又はF

   の次にくる記号は、次のようにグループを表す記号がつくものが多い。(鉄鋼記

   号の分類別一覧表参照)

   P:Plate(薄板)

   U:Use(特殊用途)

   W:Wire(線材・線)

   T:Tube(管)

   C:Casting(鋳物)

   K:Kōgu(工具)

   F:Forging(鍛造) 

   例外 Ⅰ)構造用合金鋼のグループ(たとえばニッケルクロム鋼)はSNCのよう

        に添加元素の符号をつける。

      Ⅱ)普通鋼鋼材のうち棒鋼、厚板(たとえばボイラ用鋼材)はSBのよう

        に用途を表す英語の頭文字をつける。

(3)は、材料の種類番号の数字、最低引張強さ又は耐力(通常3けた数字)を表して

   いる。ただし機械構造用鋼の場合は主要合金元素量コードと炭素量との組合せで

   表している。(JIS機械構造用鋼記号体系参照)

     例 1:1種

       A:A種又はA号

       430:コード4. 炭素量の代表値30

       2A:2種Aグレード

       400:引張強さ又は耐力

 備考 鉄鋼材料の種類記号以外に、形状や製造方法などを記号化する場合には種類記

    号に続けて次の符号又は記号を付して表す。

    例 SM570Q 溶接構造用圧延鋼材で、焼き入れ焼き戻しを行ったもの

      STB340-S-H 熱間仕上継目無しのボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管で、

              引っ張り強さの規格下限値340N/mm²

 (a)形状を表す符号

    W  線         Wire

      WR 線材        Wire Rod

    CP 冷延板       Cold Plate

    HP 熱延板       Hot Plate

      HA  熱延山形鋼     Hot Angle

            C D  両面塗装        Coated Double

    CS 冷延帯       Cold Strip

    HS 熱延帯       Hot Strip

      TB 熱伝達用管       Boiler and Heat Exchange Tube

      TP 配管用管      Pipes

      CA 冷間仕上山形鋼   Cold Angle

 (b)製造方法を表す符号

       -R   リムド鋼

    -A   アルミキルド鋼

    -K   キルド鋼

    -S-H 熱間仕上継目無鋼管      Seamiess Hot

    -S-C 冷間仕上継目無鋼管      Seamiess Cold

    -E   電気抵抗溶接鋼管       Electric resistance Welding

    -E-H 熱間仕上電気抵抗溶接鋼管   Electric resistance Welding HOT

    -E-C 冷間仕上電気抵抗溶接鋼管   Electric resistance Welding Cold

    -E-G 電気抵抗溶接のままの鋼管   Electric resistance General

    -B   鍛接鋼管           Butt Welding

    -B-C 冷間仕上鍛接鋼管       Butt Welding Cold

    -A   アーク溶接鋼管        Arc Welding

    -A-C 冷間仕上アーク溶接鋼管    Arc Welding Cold

    -D9  冷間引抜き(9は許容差の等級9級) Drawing

    -RCH 冷間圧造用線材        Rod by Cold Heading

    -WCH 冷間圧造用線            Wire by Cold Heading

    -T8  切削(8は許容差の等級8級)    Cutting

    -G7  研削(7は許容差の等級7級)            Grinding

    -GSP ばね用冷間圧延鋼帯      Cold Strip Spring

    -M   特殊みがき帯鋼        MIGAKI

 (c)熱処理を表す記号

    R    圧延のまま         as ‐rolled

    A    焼なまし          annealing

    N    焼入ならし         normalizing

    Q    焼入焼戻し         quenching and tempering

    NT   焼ならし焼戻し       normalizing and tempering

    T    焼戻し           tempering

    TMC  熱加工制御         thermo-mechanical control process

    P    低温焼なまし        low temperature annealing

    TN   試験片に焼きならし     test piece normalizing

    TNT    試験片に焼ならし焼戻し   test piece normalizing and tempering

    SR   試験片に溶接後熱処理に   stress relief annealing

         相当する熱処理

    S    固溶化熱処理        solution treatment

         \left.\begin{align}TH××××\\ \\RH××× \end{align}\right\}\ 析出硬化熱処理       H:時効処理. R:サブゼロ処理.

                       T:変態処理. X:カ氏温度

 (d)厳しい寸法許容差を表す記号

    ET: 厚さ許容差(ステンレス鋼帯. ばね用冷間圧延鋼帯)    Extra Thickness

    EW: 幅許容差(ステンレス鋼帯)             Extra width

1.2 対応国際規格の解釈の一部を附属書に規定している鉄鋼記号 

    対応国際規格の記号を使用しているため規格本文の記号とは異なる。また記号

   のつけ方に統一性はない。 

    HR:Hot rolledの頭文字

    CR:Cold-reducedの頭文字  

                                           

 

  鉄鋼記号は 鉄鋼の種類によってそれぞれの種類の規格があり記号も規定されてい

る。図示する場合は記号に限定されることはなく、名称を表示してもよい。企業や工場

によっては、独自の記号を設定して使用しているところもある。

 以下に、代表的な鉄鋼製品の記号を掲載する。

 以前は、鉄鋼製品の分類方法という規格があったのだが、今は廃止されているのか見

当たらない。数多い鉄鋼製品を分けるにもいろいろな分け方があるようである。ここで

は、鉄鋼記号の見方で説明されているように分けて行ってみるが、代表的なものだけの

抜粋である。