製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状の図示方法(6)
JIS B 0031
※ このページは前頁からの続きとなります。
前ページに引き続き附属書についてとなります。
附属書H(参考) 表面性状に関する新規格への経緯
※ この付属書Hは、参考として示すものであり、規定の一部ではないので、内容は
抜粋します。
表面性状に関する規格の最新版は、JIS B 0601 、同 0631、同 0632、同 0633、
同 0651、同 0659-1、同 0670、同 0671-1、同 0671-2、及び同 0671-3、である
(本体の2.参照)。また未発行の新しい規格(ISO 5436-2)を附属書Jに示す。
表面欠陥(surface imperfection)のための規格は、ISO 8785 である。
表面性状に関する多くの規格が廃止された。
表面性状に関する ISO 規格の 1996年版及び 1997年版には、多くの変更がある。最
も重要な変更点は、次のとおりである。
― 表面性状の測定器( JIS B 0651 )が再定義された。すなわち、スキャッドを用い
る測定器の規定が廃止され、表面性状パラメータの"真"の値が、絶対座標の測定器を
用いることによって定義された。
― 2Rフィルタとは異なったデイジタル形式の特性を持つ新しいフィルタ( JIS B
0632、位相補償フィルタ又はガウシアンフィルタ)が定義され、2RCアナログフ
ィルタの規定が廃止された。
参考 JIS B 0601 に、2RCフィルタによる算術平均粗さが"Ra75 "として規定
されている。
― 二つの新しい輪郭曲線(うねり曲線及び断面曲線)が、従来の粗さ曲線のほかに規
定された。 二つの輪郭曲線が、Ra、Wa、Pa、など、ほぼすべての表面性状パ
ラメータを決める基礎となる。附属書E、JIS B 0601 及び JIS B 0671-3 を参照
する。
― 片側カットオフのフィルタ(高域フィルタ)だけの適用を廃止して、(三つの輪郭
曲線による)表面性状を、通過帯域(低域フィルタ及び高域フィルタ)を適用する
ことによって得ることが規定された。
附属書G、JIS B 0601 及び JIS B 0632 を参照する。
― 表面性状パラメータの表示方法が変更になった。パラメータ記号は、Ra 及びRz
のように直線状に並べて書く。Ra 及びRz のような添字の使用は廃止された。
― ほとんどのパラメータ指示及び名称が変更された( JIS B 0601 )。以前の粗さ
パラメータのRz (十点平均粗さ)が、廃止された。Rz は、以前のRy の代わりに
用いる。
参考 JIS B 0601 に、十点平均粗さが"RzJIS "として規定されている。
― 新しい三つのグループ(形式)の表面性状パラメータが定義され、標準化された(
JIS B 0601、JIS B 0631、JIS B 0671-2 及び JIS B 0671-3 )。これらの新し
い表面性状パラメータは、それぞれ独自のフィルタ処理を適用して求める( JIS B
0631 及び JIS B 0671-1)。
― 許容限界、フィルタ処理及び評価長さの解釈対する標準の定義を持つパラメータの
数が、以前の規格の三つのパラメータ(Ra、Ry及びRz)から飛躍的に増加し
た。JIS B 0631、JIS B 0633 及び JIS B 0671-1 を参照する。ほとんどすべて
のうねりパラメータ及び断面曲線パラメータに対する標準の定義はない。
参考 JIS B 0610 に転がり円うねりが、"WEM"及び"WEA"として規定さ
れている。
1996 年及び1997 年の新 ISO 規格への変更箇所は数多く、新規格によって旧
(1996 年より前の)ISO 規格の表面性状の要求事項を評価すると問題が生じる。企
業では、旧規格から新規格へいかに移行するかの意思決定をしなければならない。
最も重要な変更の一つは、2RCフィルタに代わる位相補償(ガウシアン)フィ
ルタである。新しいフィルタは、以前の2RCフィルタに非常に近い特性をもつよ
うにしてあるが完全ではない。位相補償フィルタによる測定値は、2RCフィルタ
を用いて同じ測定面を測定した値に比べて 37 %以上減少する場合がある。しか
し、多くの場合、フィルタの変更が測定値の差に与える影響は小さい(5~10%以
下)。
ほとんどの場合、(片側カットオフだけの場合に代わって)通過帯域を使用して
も、特に滑らかな表面に対しては、測定値の減少はわずかである。通過帯域を用い
る利点は、測定の不確かさ、触針先端半径の影響及び製造者が異なる測定機間の差
が減少することである。
附属書I(参考)旧規格による図示
この附属書は、参考として示すものであり、規定の一部ではない。
1.1 表面性状の要求事項の指示に関する改訂経緯 この規格に至るまでの4回分の改
定経過を附属書Ⅰ表1に示す。
附属書Ⅰ表1 表面性状の要求事項の指示に関する改訂経過
図示記号の解釈が、ISO 1302 以外の各年代の表面性状に関する規格において規定さ
れているので、それを確認することは重要である。ISO 1302 の各改訂版は次のような
規格を参照している。
― ISO 1302 :2002 第4版は、1996年及び 1997年発行の表面性状に関する規格を参4
している。
― ISO 1302 :1992 第3版は、1980年発行の表面性状に関する規格を参照している。
― ISO 1302 :1978 及びそれ以前の版では、ISO/R 468:1966 が参照する唯一の規格で
あり、記号についての細かい解釈は含まれていなかった[附属書Ⅰ表1の脚注( ³ )
及び ( ⁴ ) 参照]。
旧 ISO 1302 に規定された図示方法が正しく利用されていれば、表面性状の細かいル
ール及び解釈に間違いは起こらない。
1978 年版の図示記号に、1980 年又は 1996 年及び 1997 年発行の規格における表面性
状に関する要求事項を組込むことはできない。
また、1992 年版の図示記号に、1996 年及び1997 年発行の表面性状に関する規格を組
込むことはできない。
1.2 指示位置"x"及び"a" 位置"x"(附属書Ⅰ図1)における表面性状の要求
事項の指示、及び位置"a"(旧 JIS B 0031 で規定)における表面性状の要求事項の
指示は廃止され、表面性状の要求事項はパラメータ記号とそれに関連する値から構成さ
れるようになった。
備考 旧規格では、一般に位置"x"における次項のいずれかの指示で十分であっ
た。
― Ra の限界を示す値だけ(ISO 1302 の 1971 年版、1974 年版及び1978
年版による。)
― パラメータ記号とその値との組み合わせ(ISO 1302 の 1992 年版によ
る。)
1.3 1992 年版 ISO 1302 附属書Cの内容 附属書Ⅰ表2は、ISO 1302 : 1978 の4.
1.5を継承した ISO 1302 : 1992 の附属書C.1の内容であり、"ISO 1302 : 1992 に整
合していない図面の指示値と粗さ番号に誤った解釈がされないように・・・"という注が
この表に付いている。
附属書J(参考)GPSマトリックス
※ この附属書Jは、参考として示すものであり、規定の一部ではないので、本文及び
参考文献は省略。
附属書1(参考)各種パラメータの標準数列
この付属書1は、粗さパラメータを指示する際の便宜のために、JIS B 0601 に規定
する各種パラメータ及び粗さ曲線の負荷長さ率Rmr(c) のための切断レベルの標準数列
を掲げるもので、規定の一部ではない。
附属書1表1~表3には、特に優先的に用いる数値を太字で示す。
※ 下の表は、1955年制定の JIS B 0601 の面粗さの規定である。
この当時の面粗さの図示は、三角記号によるものがほとんどであった。三角記号一つ
が荒仕上、二つが中仕上げ、三つが上仕上、四つが精密仕上げ、のような呼び方であっ
ただろうか。現在でも、まれに見受けられるように仕上げ記号といえばこの三角記号で
あった。いまだに使われているのは、詳しい数値を調べなくてもよいことと、さほど厳
格でない面粗さの指示をするのに適しているからではないだろうか。
面粗さは、最大高さで指示し、三角記号に 1.5-S などと併記した。最大高さは、基準
面内で一度くらいしか現れない大きな山や谷は除くなど緩やかなものであった。
その後、算術平均粗さや、十点平均粗さなどが規定された。十点平均粗さは、国際
規格では 1997年に削除されている。しかし、国内では多く使われているため、RzJIS と
して残されている。
表面性状に関する規格は、面粗さのみであったものが、うねりが加わり表面性状とな
った。今後は、疵などに対する表面欠陥の規定が組み込まれることが予定されているよ
うに、まだまだ発展途上である。
改訂された年によって記号が異なることはこれからも起こりえることが予想されるの
で、さほど厳格な規定が必要でないものは、三角記号の指示にしてしまうのも一つのや
り方ではないかと思う。