製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状の図示方法(2)
JIS B 0031
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6. 表面性状パラメータの指示
6.1 一般事項 パラメータ記号とその値は、要求事項の解釈の基本となる次の4項目
からなる。
― 三つの輪郭曲線の区分(R、W又はP)
― パラメータの種類
― 評価長さに含まれる基準長さの数
― 指示された許容限界値の解釈
参考1. 表面性状の図示記号に付けて指示するつの基本的な表面性状パラメー
タ群が、JIS B 0601 , JIS B 0631 , JIS B 0671-2 及び JIS B 0671-3
に規 定されている。これらのパラメータの種類をまとめると表1にな
る。
2. "輪郭曲線(R、W 又は P)"は、"粗さ曲線"、"うねり曲線"又
は"断面曲線"の総称である( JIS B 0601 参照)。
6.2 パラメータ記号の指示 附属書 E による。パラメータ記号を附属書 E のよう
に追加要求事項(5.1参照)のない指示がされた場合には、許容限界値["16%ルール
"、JIS B 0633 の 4.2(評価長さを用いて定義されるパラメータ)及び4.3(負荷
曲線及び確率密度関数とそれらに関連するパラメータ)参照]は標準的な規定又は解釈
に従う。"最大値ルール"が指示された場合の許容限界値の解釈は、6.4を参照する。
6.3 評価長さ ln の指示
6.3.1 一般事項 パラメータ記号を附属書Eのように追加要求事項(5.1参照)の
ない指示がされた場合には、評価長さは、該当する規格に規定されていればその標準値
に従う。
評価長さに含まれる基準長さの数についての標準値がない場合には、表面性状の要求
事項にあいまいさがないように、基準長さの数をパラメータ記号に指示する。
6.3.2 輪郭曲線パラメータ( JIS B 0601 参照)
― 粗さ曲線 附属書FのF.2を参照する。評価長さに含まれる基準長さの数が標準値
の5でない場合には、基準長さの数をパラメータ記号に付ける。
例 RP3、Rv3,Rz3、Rc3,Rt3、Ra3、・・・、RSm3、・・・(評価長さ
が三つの基準長さからなる場合)
— うねり曲線 附属書FのF.2を参照する。基準長さの数を常にうねりパラメータ記
号に指示する。
例 Wz5、Wa3
― 断面曲線 附属書FのF.2を参照する。基準長さは評価長さに等しく[ JIS B
0601 の3.1.9(基準長さ)参照]、評価長さは測定される形体の長さに等しく
する[ JIS B 0633 の4.4(評価長さの標準値)参照]。したがって、断面曲線
パラメータのパラメータ記号には基準長さの数を付けない。
6.3.3 モチーフパラメータ( JIS B 0631 参照) 附属書FのF.3を参照する。評
価長さが、標準値の16mmとは異なる場合には、評価長さを2本の斜線"//"の間に指
示する。
例 0.008‐0.5/12/R 10
備考 モチーフパラメータの評価長さは、基準長さの概念がない他の表面性状パラ
メータの評価長さとは異なる。モチーフパラメータ記号には基準長さの数を
付けない。
6.3.4 負荷曲線に関連するパラメータ( JIS B 0671-2, JIS B 0671-3 及び JIS B
0631)
― 粗さ曲線 附属書FのF.4を参照する。評価長さに含まれる基準長さの数が標準値
の5[ JIS B 0671-1 の7.(カットオフ値 λc 及び評価長さ ln )参照]でない
場合には、基準長さの数をパラメータ記号に付ける。
例 Rk8、Rpk8 、 Rvk8、Rpq8、Rvq8、Rmq8 (評価長さがカットオフ値の
8倍の場合)
Rke、Rpke、Rvkeなどのモチーフ法による線形表現の負荷曲線関連の粗さ
曲線パラメータ( JIS B 0671-2 )の評価長さの指示は、6.3.3による。
― 断面曲線 附属書FのF.4を参照する。基準長さは、評価長さに等しく[ JIS B
0601 の3.1.9(基準長さ)参照]、評価長さは測定される形体の長さに等しくする
[ JIS B 0633 の4.4(評価長さの標準値)参照]。したがって、断面曲線パラメー
タのパラメータ記号には基準長さの数を付けない。
6.4 許容限界値の指示
6.4.1 一般事項 表面性状の許容限界値には、次の二つの指示のうち、どちらかを
解釈する。
a) "16 %ルール"
b) "最大値ルール"
JIS B 0633 の5.2(16 %ルール)及び5.3(最大値ルール)を参照する。
表面性状の要求事項の標準ルールは、"16 %ルール"とする。したがって、附属書E
のパラメータ記号が指示されたときには(図7参照)、"16 %ルール"が表面性状の要
求事項に適用する。"最大値ルール"を適用する場合には、パラメータ記号の後に"
max"を付ける(図8参照)。
6.4.2 断面曲線パラメータ( JIS B 0601 参照)断面曲線パラメータには、JIS B
0601 に規定する"16 %ルール"及び"最大値ルール"を適用する。
6.4.3 モチーフパラメータ( JIS B 0631 参照) モチーフパラメータには、16 %
ルールを適用する[ JIS B 0631 の5.4(モチーフパラメータの許容条件)参照]。
6.4.4 負荷曲線に関連するパラメータ( JIS B 0671-2 及び JIS B 0671-3 ) JIS
B 0671-2 及び JIS B 0671-3 に規定する負荷曲線に関連するパラメータに、"16 %
ルール"及び"最大値ルール"を適用する。
6.5 通過帯域および基準長さの指示
6.5.1 一般事項 パラメータ記号に通過帯域の指示がない場合には、表面性状の要
求事項に標準通過帯域(通過帯域の標準値については、附属書Gを参照。通過帯域の指
示がない図7及び図8を参照)を適用する。
ある表面性状パラメータには、標準通過帯域の規定、標準の低域フィルタの規定又は
標準の基準長さ(広域フィルタ)の規定がない場合がある。このような場合には、表面
性状の要求事項にあいまいさがないように、通過帯域、低域フィルタ又は高域フィルタ
のカットオフ地を指示する。
表面性状の要求事項によって、あいまいさのない表面の管理を行うために、通過帯域
はパラメータ記号の前に斜線"/"で仕切って指示する。
通過帯域は、ハイフン"‐"で仕切られたフィルタのカットオフ値(単位:mm)に
よって指示し、低域フィルタのカットオフ値を最初に、高域フィルタのカットオフ値を
ハイフンの後に置く(図9参照)。
通過帯域を決める二つのフィルタのうちの一つだけの指示でよい場合、指示されない
フィルタは、標準のカットオフ値をもつフィルタとする。一つだけのフィルタが指示さ
れている場合、低域フィルタであるか高域フィルタであるかは、ハイフンによって識別
する。
例1. 0.008- (低域フィルタ)
例2. -0.25 (高域フィルタ)
6.5.2 輪郭曲線パラメータ( JIS B 0601 )
― 粗さ曲線 附属書GのG2を参照する。通過帯域を指示する場合、低域フィルタの
カットオフ値 λ s が JIS B 0651 の4.4(粗さ曲線用カットオフ値 λ c 、触針先端
半径 Γtip 及びカットオフ比 λ s / λ c の関係)に従っていれば、高域フィルタのカ
ットオフ値 λ c を -0.8 のように指示するだけでよい。
粗さパラメータのための通過帯域の低域フィルタ及び高域フィルタの両方を管理
したい場合には、カットオフ値の組合せをパラメータ記号に付ける。
例 0.008-0.8
― うねり曲線 附属書GのG2を参照する。あいまいさがないようにするために、通
過帯域の両側のカットオフ値を常に指示する。うねり曲線のための通過帯域のカットオ
フ値の指示は、JIS B 0633 による粗さ曲線用のカットオフ値 λ c( λ c は低域フィルタ
のカットオフ値)及び設計者が求める数 n による指示 nxλ c( nxλ c は広域フィルタ
のカットオフ値)である(図10参照)。
― 断面曲線 附属書GのG2を参照する。あいまいさをなくすために、低域フィルタ
のカットオフ値 λs を常に指示する。
断面曲線パラメータに高域フィルタ(基準長さ)を適用しないことが標準条件で
ある。ただし、部品機能のために高域フィルタが要求される場合には、高域フィル
タのカットオフ値(基準長さ)を指示する。
例 -25/Pz 225
6.5.3 モチーフパラメータ( JIS B 0631 )
― 粗さモチーフ 附属書GのG3を参照する。評価長さが、JIS B 0631 の表1に推
奨される λs 及び Α の組合せによる場合には、評価長さを指示する必要はない
が、それを2本の斜線"//"によって表す。
参考 低域フィルタを指示しない場合の標準値は、λs=0.008mmとする。
― うねりモチーフ 附属書GのG3を参照する。低域フィルタ用の上限長さ Α 及高域
域フィルタ用の上限長さ B を指示する。
評価長さが、 JIS B 0631 の表1に推奨される A 及び B の組合せによる場合には、評
価長さを指示する必要はないが、それを2本の斜線"//"によって表す。
6.5.4 負荷曲線に関連するパラメータ( JIS B 0671-2 及び JIS B 0671-3 ) 上
限長さ(A 及び B )を指示しない場合の標準値は、A=0.5mm及び B=2.5mmとする。
― 粗さ曲線 附属書GのG4を参照する。標準通過帯域と特別の通過帯域とが規定さ
れている。
― 断面曲線 附属書GのG4を参照する。 JIS B 0671-3 に従って断面曲線パラメー
タを指示する場合、あいまいさをなくすために低域フィルタのカットオフ値 λsを
パラメータ記号に付ける。
標準として、断面曲線パラメータには、高域フィルタ(基準長さ)を適用しない。対
象面の機能上、高域フィルタが必要な場合には、高域フィルタ(基準長さ)を断面曲線
パラメータに付ける。
6.6 許容限界値の指示-片側又は両側許容限界値
6.6.1 一般事項 片側又は両側許容限界値を、表面性状の要求事項として指示す
る。許容限界値は、6.2、6.3、6.4 及び 6.5のように、パラメータ記号とその通
過帯域によって表す。
6.6.2 パラメータの片側許容限界値 パラメータ記号とその値及び通過帯域が指示
されている場合には、"16 %ルール"又は"最大値ルール"に従った片側許容限界の上
限値を表す。
パラメータ記号とその値及び通過帯域の指示が、"16 %ルール"又は"最大値ルール
"に従ったパラメータの片側許容限界の下限値を表す場合には、パラメータの記号の前
に文字Lを付ける。
例 LRa 0.32
6.6.3 パラメータの両側許容限界値 両側許容限界値は、二つの限界値を上の行及
び下の行に分けて表面性状の図示記号に指示する。すなわち、文字Uに続くパラメータ
記号とその上限値("16 %ルール"又は"最大値ルール")を上の行に、文字Lに続く
パラメータ記号とその下限値を下の行に指示する(図11参照)。上限値及び下限値が、
同じパラメータによって指示されている場合、上限値及び下限値であることが明確に理
解できれば、記号U及びLを省略してもよい。
参考 常に記号U及びLを指示することが望ましい。
上限値及び下限値は、同じパラメータ記号及び同じ通過帯域である必要はない。
※ このページの項目、表面性状パラメータなどについては、JIS B 0601 製品の幾何
特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―用定義及び表面性状パラメータ その
他を参照するわけであるが、この規格の内容はわかりずらい。
規格文の中に、附属書を参照するとあるもので、その附属書を見ると、この付属書
は、参考として示すもので、規定の一部ではないとあるなど、理解に苦しむ。
この項目については、最大実体公差方式のように色々な解説がされているので、そち
らを見ていただいて、理解してもらいたい。
それでも幾つかごく簡単に、かいつまんで話をする。
まず、粗さとうねりの違いである。断面曲線から長い波長の成分を取り除いたものが
粗さ曲線であり、短い成分を取り除いたものがうねり曲線である。
粗さとうねりの境目は、粗さの大きさによって違ってくるので、明確な境というもの
のはない。
取り除くときに使用するのがフィルターであり、基準となる値がカットオフ値とな
る。
粗さパラメータの代表的なものは、最大高さ粗さ(記号Rz)、算術平均粗さ(記号
Ra)、十点平均粗さ(記号RzJIS)である。
このうち、十点平均粗さは、ISO規格からは削除されたものであるが、我が国では広
く普及しており今でもよく使われる。
粗さパラメータのほかに、モチーフパラメータがあるが、これは粗さを溝の深さある
いは高さで評価するのに対して、形状で評価するものであろうか。すべり面や摩擦面、
あるいは測定長さが取れないところなどを評価するのに有効であるらしい。(JIS B
0631 の附属書B モチーフパラメータと表面機能との関係 参照)。
Raにしろ、Rzにしろ、面粗さを指定すれば、カットオフ値や評価長さなどは、標準
値があるので、特別に指定することはまずない。詳細な指定は気にする必要はないが、
気密性がいるものに使用する場合や、接着剤などで接着するとき接着力を高めるため
凹凸の範囲の指定をする必要がある場合など、注意が必要なことはある。