このブログは、JIS規格の製図、なかでも機械製図に関するものを説明していま
す。
まず、JIS規格本文を掲載し、それについて解説やコメントがある場合、※を付け
てJIS規格とは違う観点からの考えを述べています。
製品の幾何特性仕様(GPS)ー
円すいのテーパ比及びテーパ角度の基準値
JIS B 0612
序文 序文及び備考省略
1. 適用範囲 この規格は、機械の分野で一般的に用いる円すいテーパを、テーパ角度
120° ~ 0.1° またはテーパ比 1:0.288 6 ~ 1:500 の基準値について規定する。
この規格は、単純円すい面だけに適用し、プリズム、テーパねじ、かさ歯車などには
適用しない。
円すいの寸法及び公差方式の図示方法は、JIS B 0028 による。
備考 省略
2. 引用規格 次に掲げる規格は、この規格に引用されることによって、この規格の規
定の一部を構成する。これらの引用規格は、その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0028 製図ー寸法及び公差の表示方式―円すい
備考 省略
JIS B 8601 標準数
備考 省略
3. 定義及び量記号 この規格で用いる主な用語の定義及び量記号は、次による。
3.1 テーパ角度(cone angle) α 一つの軸断面における円すいの二つの母線のなす角
度。
3.2 テーパ比(rate of taper) C 二つの軸直角断面における直径Dとdとの差と、その
断面間の距離Lとの比(図1参照)。
C==2tan=
備考1. テーパ比は、無次元量である。
2. 例えば、テーパ比C=1:20は、直径Dの断面と直径d の断面との間隔が
L= 20mmの場合に、直径差D-d=1mm、したがって、
=20であることを意味する。
参考1. テーパ比は、一般に1:x又はで表す。
2. その他のテーパ比の表し方については、JIS B 0028 を参照。
3. テーパ比は、JIS B 0615 に規定するプリズム比に相当する。
4. 基準値 表1における基準値は、円すい部品の製造に必要となる工作機械、工具、
ゲージ及び測定機器の範囲を少なくするために、系列1を優先して用いる。
表2は、特定用途に対して規定しているもので、適用の欄に示された用途に限り使用
することができる。
これらの表には、円すい部品の設計、製造及び管理を容易にするために、テーパ角度
またはテーパ比の換算値も示す。
附属書A(参考) GPSマトリックス
この附属書A(参考)は、規定の一部ではないので省略。
附属書B(参考) 関連規格
この附属書B(参考)は、規定の一部ではないので主なJIS規格以外の規格と備考は省
略。
(1) JIS B 4634 ドリルチャック
(2) JIS B 4003 工具用テーパシャンク部及びソケットー形状・寸法
(3)~(17) 省略
(18) JIS B 0154 円すい用語
(19) JIS B 0614 円すい公差方式
(20) JIS B 0615 製品の幾何特性仕様(GPS)ープリズムの角度及びこう配の基準値
(21) JIS B 0616 円すいはめあい方式
(22) JIS D 5301 始動用鉛蓄電池
※ 表2 特定用途の円すいの選択 の適用欄には、ジャコブステーパ、モールステー
パ、ブラウン&シャープテーパの三つの名前がある。
モールステーパは、一般に広く使われており、JIS規格にも上記の関連規格以外に、
B 3301 テーパゲージ―モールステーパ及びメトリックテーパ
B 4302 モールステーパシャンクドリル
B 4306 モールステーパシャンクロングドリル
B 4401 モールステーパ及びメトリックテーパ用リーマ
B 6163 モールステーパスリーブ及びモールステーパシャンクソケット―形状・寸法
の規格がある。
モールスとは、これを発明した機械工の名前であるが、規格化するときに実際に使わ
れていた寸法をそのまま使用してしまったため、テーパ角度はばらばらである。統一さ
れていれば、製作、測定、などで有利な点があるだろうし、現在 JIS で規定されてい
る、0~6番の中でも多少の互換性が出てきたはずである。
その反省からだろうか、メトリックテーパができたようである。メトリックとはメー
トルのこと。メートルねじなども今はメトリックねじと呼ぶらしい。
テーパ比が、1:20で統一されていて、呼びは、METが使われる。寸法は MET 4
及び6が MT0より下のサイズ、MET80及び 100 が MT 6より上のサイズとなって
いる。MT0~6にあたるものは規定されておらず、したがってさほど普及はしていな
いものと思われる。
ブラウン&シャープは、工作機械メーカーの名前である。テーパ比は1:24である。
略語は、BSが使われ、JISではBS1~3が規定されているが、実際はもっと多くBS18
まであるようである。
ジャコブステーパは、主にドリルチャックに使われている。略語は JT だが名前の
由来は全く不明である。JIS B 4634 ドリルチャックの規定では、テーパ比は同じでな
く番号も、0、1、2、2S、21/2、3、4、5、6、33,と様々である。
表2の適用欄に、フライス盤主軸端など、と記載されているテーパ比 7:24 のも
のは、B 6101 7/24テーパの主軸端及び及びシャンク で規定されている。呼び方は
7/24テーパになるのだろうが、ナショナルテーパと呼ばれていたもののためか略語
は NT が使われているようである。
工作機械などに使われているテーパは、種類も多く、実際に使用されているものを規
格にしたことが出発点である。そのため規格自体もいまだにまとまりがないようであ
る。したがって今後は、論理的な観点からの整理がなされていくものと思われるし、大
胆な変更がされことを期待したい。