JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

幾何偏差の定義及び表示

   幾何偏差の定義及び表示

      JIS B 0621  

 

 この規格は、幾何偏差の定義及び表示であるが表示とは図示のことではない。図示す

る場合は、製品の幾何特性仕様ー幾何表示方式ー形状、姿勢及び振れの公差表示方式

JIS  B  0021, 製図-公差表示方式の基本原則 JIS  B  0024  などによる。このほうがわ

かりやすく、重複する部分も多いが、この規格も割愛せずに掲載しておく。

 

1. 適用範囲 この規格は、対象物の形状偏差、位置偏差、及び振れ(以下、これらを

総称して幾何偏差という。)の定義及び表示について規定する。

    備 考 幾何偏差の許容値である幾何公差の記号による表示およびそれらの図示

       方法については、JIS  B  0021(幾何公差の図示方法)による。

2. 用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は、次による。

 ( ) 形 体 幾何偏差の対象となる点、線、軸線、面又は中心面。

 ( ) 単独形体 データムに関連なく、幾何偏差が決められる形体。

 ( ) 関連形体 データムに関連して、幾何偏差が決められる形体。

 ( ) データム 形体の姿勢偏差、位置偏差、振れなどを決めるために設定した

       理論的に正確な幾何学的基準。例えば、幾何学的基準が点、直線、軸直線 

       (¹)、平面及び中心平面の場合には、それぞれデータム点、データム直線、

       データム軸直線、データム平面及びデータム中心平面という。

      注(¹)  軸直線とは、形状偏差がない軸線、すなわち、幾何学的に正しい直

        線である軸線を言う。

                   備 考 データムに関する詳細は、JIS  B  0022(幾何公差のためのデータ

         ム)による。

    ( )   直線形体 機能上直線であるように指定した形体、例えば、平面形体をそ

       れに垂直な平面で切断したときに切り口に現れる断面輪郭線、軸線、円筒

       の母線、ナイフエッジの先端など。

 (  )      軸 線  直線形体のうち、円筒又は直方体であるように指定した対象物の

       各横断面における断面輪郭線の中心 (²) を結ぶ線。

                     注(²)   断面輪郭線の中心とは、円筒であるように指定した対象物で

            は、その断面輪郭線に外接する最小の幾何学的に正しい円 (軸の

            場合)又は内接する最大の幾何学的に正しい円(穴の場合)の

            中心をいう。

             また、直方体であるように指定した対象物では、その断面輪

            郭線に外接する最小の幾何学的に正しい長方形(軸の場合)又

            は内接する最大の幾何学的に正しい長方形(穴の場合)の中心

            をいう。

 ( )    平面形体 機能上平面であるように指定した形体。

 ( )       中 心 面     平面形体のうち、互いに面対称であるべき二つの面上の対応す

       る二つの点を結ぶ直線の中点を含む面。

 ( )    円形形体 機能上円であるように指定した形体。例えば、平面図形として

       の円や回転面の円形断面。

 ( 10 ) 円筒形体 機能上円筒面であるように指定した形体。

 ( 11 ) 線の輪郭 機能上定められた形状をもつように指定した表面の要素として

       の外形線。

 ( 12 面の輪郭 機能上定められた形状をもつように指定した表面。

3. 幾何偏差の種類 幾何偏差の種類は表による。

 

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4. 定 義

 4.1 真 直 度 真直度とは、直線形体の幾何学的に正しい直線(以下、幾何学的直

線という。)からの狂いの大きさをいう。

 4.2 平 面 度 平面度とは、平面形体の幾何学的に正しい平面(以下、幾何学的平

面という。)からの狂いの大きさをいう。 

 4.3 真 円 度 真円度とは、円形形体の幾何学的に正しい円(以下、幾何学的円と

いう。)からの狂いの大きさをいう

 4.4 円 筒 度 円筒度とは、円筒形体の幾何学的に正しい円筒(以下、幾何学的円

筒という。)からの狂いの大きさをいう。

  4.5 線の輪郭度 線の輪郭度とは、理論的に正確な寸法によって定められた幾何

学的に正しい輪郭(以下、幾何学的輪郭という。)からの線の輪郭の狂いの大きさをい

う。

 4.6 面の輪郭度 面の輪郭度とは、理論的に正確な寸法によって定められた幾何

学的輪郭からの面の輪郭の狂いの大きさをいう。

 4.7 平 行 度 平行度とは、データム直線又はデータム平面に対して平行な幾何学

的直線又は幾何学的平面からの平行であるべき直線形体又は平面形体の狂いの大きさを

いう。

 4.8 直 角 度 直角度とは、データム直線又はデータム平面に対して直角な幾何学

的直線又は幾何学的平面からの直角であるべき直線形体又は平面形体の狂いの大きさを

いう。

 4.9 傾 斜 度 傾斜度とは、データム直線又はデータム平面に対して理論的に正確

な角度を持つ幾何学的直線又は幾何学的平面からの理論的に正確な角度をもつべき直線

形体又は平面形体の狂いの大きさをいう。

 4.10 位 置 度 位置度とは、データム又は他の形体に関連して定められた理論的に

正確な位置からの点、直線形体又は平面形体の狂いの大きさをいう。

 4.11 同 軸 度 同軸度とは、データム軸直線と同一直線上にあるべき軸線のデータ

ム軸直線からの狂いの大きさをいう。

  備 考 平面図形の場合には、データム円の中心に対する他の円形形体の中心の位

      置の狂いの大きさを同心度という。

  4.12 対 称 度 対称度とは、データム軸直線又はデータム中心平面に関して互いに

対称であるべき形体の対称位置からの狂いの大きさをいう。

 4.13 円周振れ 円周振れとは、データム軸直線を軸とする回転面をもつべき対象

物又はデータム軸直線に対して垂直な円形平面であるべき対象物をデータム軸直線の周

りに回転したとき、その表面が指定した位置又は任意の位置で指定した方向(³)に変位

する大きさをいう。

    (³) 指定した方向とは、データム軸直線と交わりデータム軸直線に対して

        垂直な方向(半径方向)、データム軸直線に平行な方向(軸方向)又

        はデータム軸直線と交わりデータム軸直線に対して斜めの方向(斜め

        法線方向及び斜め指定方向)をいう。

 4.14 全 振 れ 全振れとは、データム軸直線を軸とする円筒面をもつべき対象物又

はデータム軸直線に対して垂直な円形平面であるべき対象物をデータム軸直線の周りに

回転したとき、その表面が指定した方向(⁴)に変位する大きさをいう。

    (⁴) 指定した方向とは、データム軸直線と交わりデータム軸直線に対して

        垂直な方向(半径方向)又はデータム軸直線に平行な方向(軸方向)

        をいう。

 

5. 表 示

 5.1 真 直 度 真直度は、直線形体が占める領域の大きさによって、次に示すよう

に表し、真直度_㎜又は真直度_μmと表示する。

  () 一方向の真直度 一方向の真直度は、その方向に垂直な幾何学的に正しい平

    行な二平面(以下、幾何学的平行二平面という。)でその直線形体(L)を挟

    んだとき、平行二平面の間隔が最小となる場合の二平面の間隔(f)で表す

   (図1)。

     備 考 その方向が、例えば水平方向又は鉛直方向の場合には、それぞれを

         水平方向の真直度又は鉛直方向の真直度という。 

  () 互いに直角な二方向の真直度 互いに直角な二方向[例えば5.1)の

    考の水平方向及び鉛直方向]の真直度は、その二方向にそれぞれ垂直な二組の

    幾何学的平行二平面でその直線形体(L)を挟んだとき、二組の平行二平面の

    各々の間隔が最小となる場合の、二平面の間隔(f₁f₂)(すなわち、二組の平

    行二平面で区切られる直方体の二辺の長さ)で表す(図2)。

  () 方向を定めない場合の真直度 方向を定めない場合(例えば、円筒の軸線な

    ど)の真直度は、その直線形体(L)をすべて含む幾何学的円筒のうち、最も

    径の小さい円筒の直系(f)で表す(図3)。

    () 表面の要素としての直線形体の真直度 表面の要素としての直線形体(回転

    面の母線や、平面形体の表面に垂直な平面による断面輪郭線など)の真直度

    は、幾何学的に正しい平行な二直線(以下、幾何学的平行二直線という。)

    で、その直線形体(L)を挟んだとき、平行二直線の間隔が最小になる場合

    の、二直線の間隔(f)で表す(図4)。

 5.2 平 面 度 平面度は、平面形体(P)を幾何学的平行二平面で挟んだとき、平

行二平面の間隔が最小となる場合の、二平面の間隔(f)で表し(図5)、平面度_㎜

又は平面度_μmと表示する。

 5.3 真 円 度 真円度は、円形形体(C)を二つの同心の幾何学的円で挟んだと

き、同心二円の間隔が最小となる場合の、二円の半径の差(f)で表し(図6)、真円

度_㎜又は真円度_μmと表示する。

 5.4 円 筒 度 円筒度は、円筒形体(Z)を二つの同軸の幾何学的円筒で挟んだ

とき、同軸二円筒が最小となる場合の、二円筒の半径の差(f)で表し(図7)、円筒

度_㎜又は円筒度_μmと表示する。

参 考 円筒形体の幾何偏差は、軸線に直角な断面における輪郭線の偏差(真円度)

と、軸線を含む断面における輪郭線の偏差(母線の真直度と平行度)とに分けて考える

こともできる。

 5.5 線の輪郭度 線の輪郭度は、理論的に正確な寸法によって定められた幾何学

輪郭線(K_{T})上に中心をもつ同一の直径の幾何学的円の二つの包絡線で、その

線の輪郭(K)を挟んだときの、二包絡線の間隔(f)(円の直径)で表し(図8)、線

の輪郭度_㎜又は線の輪郭度_μmと表示する。ただし、理論的に正確な寸法は、デー

タム線またはデータム面に関して与える場合と、それらと関係しないで与える場合とが

ある。

 5.6 面の輪郭度 面の輪郭度は、理論的に正確な寸法によって定められる幾何学

輪郭面(F_{T})上に中心をもつ同一の直径の幾何学的に正しい球(以下幾何学

球という。)の二つの包絡面でその面の輪郭(F)を挟んだときの、包絡面の間隔(f)

(球の直径)で表し(図9)、面の輪郭度_㎜又は面の輪郭度_μmと表示する。ただ

し、理論的に正確な寸法は、データム線またはデータム面に関して与える場合と、それ

らと関係しないで与える場合とがある。

 

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 5.7 平 行 度 平行度は、直線形体又は平面形体が、データム直線又はデータム平

面に対して垂直な方向において占める領域の大きさによって、次に示すように表し、平

行度_㎜又は平行度_μmと表示する。

 () 直線形体のデータム直線に対する平行度

  () 一方向の平行度 一方向の平行度は、その方向に垂直でデータム直線(

     L_{D})に平行な幾何学的平行二平面でその直線形体(L)を挟んだとき

     の、二平面の間隔(f)で表す(図10)

    () 互いに直角な二方向の平行度 互いに直角な二方向の平行度は、その二方

     向にそれぞれ垂直でデータム直線(L_{D})に平行な二組の幾何学的平

     行二平面でその直線形体(L)を挟んだときの二平面の間隔(f₁、f₂)(すなわ

     ち、二組の平行二平面で区切られる直方体の二辺の長さ)で表す(図11)。

  () 方向を定めない場合の平行度 方向を定めない場合の平行度は、データム

     直線(L_{D})に平行でその直線形体(L)をすべて含む幾何学的円筒の

     うち、最も小さい径の円筒の直径(f}で表す(図12)。

  () 直線形体又は平面形体のデータム平面に対する平行度 直線形体又は平面形

     体のデータム平面に対する平行度は、データム平面(P_{D})に平行な

     幾何学的平行二平面でその直線形体(L)又は、平面形体(P)を挟んだときの、

     二平面の間隔(f)で表す(図13、図14)。

  () 平面形体のデータム直線に対する平行度 平面形体のデータム直線に対する

     平行度は、データム直線(L_{D})に平行な幾何学的平行二平面でその

     平面形体(P)を挟んだとき、平行二平面の間隔が最小のなる場合の二平面の

     間隔(f)で表す(図15)。

 

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 定義の項目には、これぞ定義文という文章が並んでいる。文章で説明すると、この

ようなことになってしまうだろうか。    

 前述の、製品の幾何特性仕様ー幾何表示方式ー形状、姿勢及び振れの公差表示方式

JIS  B  0021 は、図中心の説明になっているので、こちらのほうが理解しやすい。この

規格は参考程度にとどめておいたほうが良い。

 次ページはこの項目の残り、直角度からとなります。