穴の寸法の表し方
穴の寸法の表し方は、次による。
a) きり穴、打抜き穴、鋳抜き穴など、穴の加工方法による区分けを示す必要がある
場合には、工具の呼び寸法又は基準寸法を示し、それに続けて加工方法の区別を、加工
方法の用語を規定している日本工業規格によって指示する。ただし、下表に示すものに
ついては、この表の簡略表示によることができる。
注記 この場合、指示した加工寸法に対する寸法の普通公差を適用する。
加工方法の用語を規定している日本工業規格とは何か。普通はB0122の加工方法記号
であろうが、これは用語を規定しているとは思えない。では用語に関する、B0106の工
作機械ー部品及び工作方法ー用語 であろうか。これには工作方法の項で用語が規定さ
れている。これをそのまま図面に記入するのはスペースをとるので、記号を使用するの
が良い。この指示は規格番号をいれていないなど、不親切ではないだろうか。
b) 一つのピッチ線、ピッチ円上に配置される一群の同一寸法のボルト穴、小ねじ
穴、ピン穴、リベット穴などの寸法は、穴から引出線を引き出して、参照線の上側にそ
の総数を示す数字の次にXを挟んで穴の寸法を指示する。この場合、穴の総数は、同一
箇所の一群の穴の総数(例えば、両側にフランジをもつ管継手ならば、片側のフランジ
についての総数。)を記入する。
引き出し線につながる線は、参照線というらしい。今迄機械製図の中に出てきたこと
はない。JIS Z 8322 製図ー表示の一般原則ー引き出し線及び参照線の基本事項
と適用、で規定されているので、これを参照しなくてはならない。このことは述べられ
ておらずこれも不親切である。
数を示す数値と、寸法の間は ”X”である。これを ”-”にするのは間違いである。
13-20キリのように表示するのはよく見かける、数が先、寸法が後にはなっているよう
であるが。
c) 穴の深さを指示するときは、穴の直径を示す寸法の次に、穴の深さを示す記号に
続けて深さの数値を記入するのがよい。ただし、貫通穴の時は、穴の深さを記入
しない。
なお、穴の深さとは、ドリルの先端で創成される円すい部分、リーマの先端の
面取り部で創成される部分などを含まない円筒部の深さ(下図のH参照)をい
う。また、傾斜した穴の深さは、穴の中心軸線上の長さ寸法で表す。
d) ざぐりまたは深ざぐりの表し方は、ざぐりをつける穴の直径を示す寸法の前に、
ざぐりを示す記号に続けてざぐりの数値を記入する。
なお、一般に平面を確保するために鋳造品、鍛造品などの表面を削り取る程度
の場合でも、その深さを指示する。また、深ざぐりの底の位置を反対側の面から
の寸法を規制する必要が場合には、その寸法線を指示する。
ざぐり寸法の深さの表示は、記号によらず ”深さ7.4” などと文字で表示することが
まだある。図に寸法線で直接記入することもある。
e) 皿ざぐり穴の表し方は、皿穴の直径を示す寸法の次に、皿ざぐり穴を示す記号に
続けて、皿ざぐり穴の入り口の直径の数値を記入する。皿ざぐり穴の深さの数値を
規制する要求がある場合には、皿ざぐり穴の開き角及び皿ざぐり穴の深さの数値を
記入する。
皿ざぐり穴が円形形状で描かれている図形に皿ざぐり穴を指示する場合には、内
側の円形形状から引き出し線を引き出し、参照線の上側に皿ざぐり穴を示す記号に
続けて、皿穴の入り口の直径の数値を記入する。
皿ざぐりの簡略指示方法は、皿ざぐり穴が表れている図形に対して、皿ざぐり穴
の入り口の直径及び皿ざぐり穴の開き角を寸法線の上側又はその延長線上にXを挟
んで記入する。
皿ざぐりは、形状を描かず省略して、中心線だけで位置を指示すればいいらしい。記
号を使わずに ”皿ざぐりΦ14” と文字で示すこともある。
f) 長円の穴は、穴の機能または加工方法によって寸法の記入方法を次のいずれかに
よって指示する。
1) 長円の穴の長さ及び幅。この場合、両側の形体は、円弧であることを示すため
に(R)と指示する。
2) 平行二平面の形体の長さ及び幅。この場合、両側の形体は、円弧であることを
示すために(R)と指示する。
3) 工具の回転軸線の移動距離及び工具径。この場合、工具径の指示は1か所とす
る。
現実には、公差でもつかない限り、上図の3つの加工は全く同じやり方になるであろう。一番簡単な描き方にしておけばよい。
キー溝の表し方
円筒軸のキー溝の表し方
円筒軸のキー溝の表し方は、次による。
a) 軸のキー溝は、」キー溝の幅、深さ、長さ、位置及び軸部を表す寸法による。
b) キー溝の端部をフライスによって切り上げる場合には、基準の位置から工具の中
心までの距離と工具の直径とを指示する。
c) キー溝の深さは、キー溝と反対側の軸径側から、キー溝の底までの寸法で表
す。ただし、特に必要な場合には、キー溝の中心面における軸径面から、キー溝
の底までの寸法(切込み深さ)で表してもよい。
d) キー溝が断面に現れている場合のボスの内径寸法は、片矢の端末記号を指示す
る。
キー溝は、B1301 キー及びキー溝 で規定されているので、これを見て寸法、公
差などとともに描かれる。この規格があることはまったく述べてられていない。
加工上からは、切込み深さを表示する描き方が多くなる。B1301 でも規定されてい
る寸法は切込み寸法である。他の規格との整合性が疑われるところである。
テーパ軸のキー溝の表し方
テーパ軸のキー溝は、個々の形態の寸法を指示する。
テーパ溝のキー溝は半月キーが多い。B1301にはテーパ軸のキー溝の規定はない。
穴のキー溝の表し方
穴のキー溝の表し方は、次による。
a) 穴のキー溝は、キー溝の幅及び深さを表す寸法を指示する。
b) キー溝の深さは、キー溝と反対側の穴径面からキー溝の底までの寸法で表す。た
だし、特に必要な場合には、キー溝の中心面における穴径面からキー溝の底まで
の寸法(切り込み深さ)で表してもよい。
c) こう配キー用のボスのキー溝の深さは、キー溝の深い側で表す。
穴のキー溝も、B1301 キー及びキー溝 で規定されている。切込み深さが規定されているのは同じだが、加工上どちらが良いかは加工方法による。
円すい穴のキー溝の表し方
円すい穴のキー溝は、キー溝に直角な断面における寸法を指示する。
B1301 では、半月キーのキー溝ではあるが キー溝に直角な断面における寸法ではない。これも整合性が取れていない。
円筒軸の複数のキー溝の表し方
円筒軸の複数の同一寸法のキー溝は、一つのキー溝の寸法を指示し、別のキー溝にその個数を指示する。
同一形状の寸法記入は、今までの例から言えば、個々に寸法が記入されなければ同一
の寸法とみなされるのが自然。特別に個数を明記する必要はないように思われる。
最新版の規定では、キー溝の 幅、深さに個数を表示してそれぞれ 2x18、2x7、
としたものが例図となっている。
ついでながら 、上図でΦ60としているのは間違いである。円形の図形に直径の寸法を
記入する場合、寸法線の両端に端末記号がつく場合には、寸法数値の前に直径の記号Φ
は記入しない。はめあい記号がつく場合はどうか、これはどこにも述べられていないよ
うである。
円筒軸の止め輪溝の表し方
円筒軸に設ける止め輪溝は、溝幅及び溝底の直径を指示する。
円筒穴の止め輪溝の表し方
円筒穴に設ける止め輪溝は、溝幅及び溝底の直径を指示する。
止め輪溝に対しても、B2804 止め輪、で規定されている。寸法、公差など同様で
ある。
こう配の表し方
こう配は、こう配をもつ形体の近くに 、JIS B 0028 に基づいて、参照線を用
いて指示する。参照線は水平に引き、引き出し線を用いて形体の外形と結び、こう配の
向きを示す図記号を、こう配の方向と一致させて描く。
テーパの表し方
テーパは、テーパをもつ形体の近くに、JIS B 0028 に基づいて、参照線を用いて
指示する。参照線はテーパをもつ形体の中心線に平行に引き、引き出し線を用いて形体
の外形と結ぶ。ただし、テーパ比と向きを特に明らかに示す必要がある場合には、テー
パの向きを示す図記号を、テーパの方向と一致させて描く。
JIS B 0028 は、製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法及び公差の表示方式ー円す
い、であるが、円すいのみの規定でこう配については規定されていない。
こう配及びテーパの寸法の表示は、例図では比率になっているが、分数の表示も推奨されている。以前の規格では図記号はなく、こう配 ⅟100、テーパ ⅟100、のように表
記された。