JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

寸法記入方法(5)寸法補助記号(続き)

  寸法補助記号(続き)

  球の直径又は半径の表し方

a) 球の直径又は半径の寸法は、その寸法数値の前に寸法数値と同じ文字高さで、球

   の記号SΦまたはSRを記入して表す。

b) 球の半径の寸法が他の寸法から導かれる場合には、半径を示す寸法線及び数値な

   しの記号(SR)とを指示する。

 

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球の直径又は半径の指示例

 

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数値なしの記号(SR)  の指示例

 球の直径又は半径の表し方は、直径、半径の表し方と同じであると考えておいて良

い。記号を寸法数値と同じ文字高さとするのも、以前数値の右肩に小さくつけていたためで、全く同じである。

 

  正方形の辺の表し方

 

 正方形の辺の表し方は次による。

a) 対象とする 部分の断面が正方形であるとき、その形を図に表わさないで、正方形

   であることを表す場合には、その辺の長さを表す寸法数値の前に、寸法数値と同

   じ大きさで、正方形の一辺であることを示す記号▢を記入する。

b) 正方形を正面から見た場合のように、正方形が図に現れる場合には正方形である

   ことを示す記号▢をつけずに、両辺の寸法を記入しなければならない。

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角柱の一辺の指示例     角柱の辺の指示例

 正方形が図に現れる場合でも、両辺に寸法を入れるのは、図面のスペースの問題もあ

り、規定があるのにもかかわらず、記号▢を使い、一か所の表示にしてしまっているこ

とが多い。重複を避けるという意味合いからは、これでいいような気がするが。

 

  板厚の表し方

 板の主投影図に、その厚さの寸法を表す場合には、その図の付近または図の中の見や

すい位置に、厚さを表す寸法数値の前に、寸法数値と同じ文字高さで、厚さを示す記

号tを記入する。

 注記 冷間圧延鋼鈑、プラスチック板など、製品公差が規定されている板材の厚さ指

    示には特に有用である。

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板厚の指示例

  厚さ記号tを使わず、厚さ 0.7 と記入する場合もある。この場合も含めて下線を引く必要ない。

 

  弦及び円弧の長さの表し方

 弦及び円弧の長さの表し方は、次による。

a)    弦の長さの表し方 弦の長さは弦に直角に寸法補助線を引き、弦に平行な寸法

   線を用いて表す。

b) 円弧の長さの表し方 円弧の長さの表し方は、次による。

 1) 弦の場合と同様な寸法補助線を引き、その円弧と同心の円弧を寸法線として引

    き、寸法数値の前に円弧の長さの記号を付ける。

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弦の長さの指示例          円弧の長さの指示例

 円弧の長さを記入する場合、前述、寸法線の項では寸法線の引き方の規定のみ。寸法

線に寸法数値を記入する場合は寸法数値の前に円弧の長さの記号が必要。しかし、寸法

線の引き方で円弧ということはわかるので、記号は必要とは思えない。

 

 2) 円弧を構成する角度が大きいとき、連続して円弧の寸法を記入するときは、円

    弧の中心から放射状に引いた寸法補助線に寸法線を当ててもよい。

     この場合、二つ以上の同心の円弧のうち、一つの円弧の長さを長さを明示す

    る必要があるときには、次のいずれかによる。

 2.1)  円弧の寸法数値に対し、引出線を引き、引き出された円弧の側に矢印を付け

      る。

 2.2)  円弧の長さを表す寸法数値の後に、円弧の半径を括弧に入れて示す。この場

       合には、円弧の長さに記号を付けてはならない。

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種々の円弧の長さの指示例

 円弧の長さを指示する場合がこまごまと指示されてる。特に最後の項は、記号をつけて

はならないと、強い口調の表現である。しかしこのようにしなくてはならない理由は不

明であり、特に従わなくてはならないということはないように思える。

 

  面取りの表し方

一般の面取は、通常の寸法記入方法によって表す。45°の面取りの場合には、面取りの

寸法数値X45°または記号Cを寸法数値の前に寸法数値と同じ高さで記入して表す。

 

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面取り寸法の指示例1

 

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面取り寸法の指示例2        記号Cの指示例

 45°の面取りの場合、記号Cを使って表示するのが普通だが、小さいものはどうす

るか。上図a)のような場合は、前に述べたように、二本の平行線がそのまま描けるの

は約1mm。したがってC1未満は、拡大図を描くことになる。これもまた拡大図だら

けになってしまうので、面取り部の外形は省略して角のままにし、そこに矢印と記号、

数値を記入する(下図参照)。b),c)の場合も同じである。

 

 面取り箇所が両側や四隅の場合はどうか。それぞれの大きさが違う場合はそれぞれに

記入するが、同じ場合は、上図b)c)のように一か所に記入し他は省略する。このこ

との説明はないので、省略のままだと記入漏れと思われるのではないかと思い、不安の

ようで、よく2×C0.2、あるいは4×C0.2のように描かれる。しかし、このような記

入の仕方の規定はない。

 

 糸面取りという表現がある。糸のように細い面取りをしなさいということで図面では

糸面と略されて記入されることが多い。

 研削加工ならC0.05程度、通常C0.1~C0.2、大型部品ならC1あっても

糸面取りになるであろうか。ともかく大きさにはこだわらず角を少し取っておきたい

時や、公差を入れるまでもないときに便利である。

 糸といってもその太さは色々あり、細いものは自然界では蜘蛛の糸であろうか。蜘蛛

の糸は、何本かの糸がより合わさっており、太さは一概に言えないようだが数㎛か。

人工的には1㎛以下のものも作られているようだが強さは蜘蛛の糸にかなわない。

 太いものではタコ糸、水糸がある。タコ糸は凧を上げるほかにいろいろ使われ、太さ

は5㎜以上のものがある。水糸は建築工事などで水平線を出すのに用いられる。太さは

タコ糸より細めか。

 綱となればかなり太いのがありそうだが、糸で太いとなると、と考えていたら、中島

みゆきが歌っていた。「♬~縦の糸はあなた、横の糸は私」。一番太い糸は人間か。

 糸にも様々なものがあるので、糸面取りと指示されたものも、その寸法数値は決まっ

ていない。しかしながらその数値が加工者のセンスに委ねられるような表現はあっても

よいように思う。

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  曲面の表し方

a) 円弧で構成する局面の寸法は、一般にはこれらの円弧の半径とその中心又は

   円弧の接線の位置とで表す。 

 

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曲線の表し方の例

b)    円弧で構成されない曲線の寸法は、曲線上の任意の点の座標寸法で表す。この寸

   法は、円弧で構成される曲線の場合にも、必要があれば用いてもよい。 

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円弧で構成されない曲線の寸法記入例

 座標寸法記入法の場合、前述したが、起点記号がわかりずらいので注意が必要である。