寸法補助記号
寸法補助記号の種類
寸法補助記号の種類及びその呼び方は、下表による。
寸法補助記号の種類及びその呼び方
各記号についての説明はJIS規格ではないようなので以下に述べます。
Φ: もともとは下図のような直径を意味する図形の簡略形だといわれている。数字
の ”0” と区別するために斜めに線を入れたとの説もある。つまり単なる丸
(○)が始まりであったのか。
このブログの ”はじめに” で述べたように直径10mmは正しくは、”まる10” 又
は ”ふぁい10” であるが、ほとんどの人が10パイと呼んでいる。
ギリシャ文字のパイ、及びファイの大文字と小文字は上のようである。PCで素早
く ”Φ” を打ち出すのにファイが代用で使われた。
形の全く違う ”パイ” となったのは、以前は寸法補助記号は数字の右肩につけら
れていた。それでも読みは ”10まる” なのだが、形から ”10ふぁい” となり、
ファイでは発音が弱いので ”ぱい” となったといわれている。円に関係する円周率
に ”π” が使われていたこともあり定着していったようである。
SΦ: Sは英語のSphere(スフィア)か、Sphericalは形容詞。球と
言えば普通ボールで、工業の分野でも ボールベアリング、ボールねじ、ボールエン
ドミル、と使われている。スフィア~の言葉は聞いたことがない。
ついでながら、工作機械のボール盤は、オランダ語のboorーbankからきた
らしく、球とは関係ない。
▢: 正方形は英語でSquareだが、球でSを使ったためかそのままの図記号。
以前はSΦはΦ球、SRはR球、と表示していたから、Sでよかったが、補助記
号そのものが形から決められたからか。
R: 英語の半径Radiusから。以前流行したラヂラルタイヤのラジアルは、
Radialで形容詞となり”半径の”の意味。
CR: コントロールRとただのRはどう違うのか。CRは直線部と半径曲線部との接
続部が滑らかにつながり、最大許容半径と最小許容半径との間に半径が存在するよう
に規制する半径。どのように規制するのかの説明はこの項目にはない。
SR: 球半径 Sphere Radius。
∩: 円周の長さ。記号を使わず寸法線の引き方であらわすことができる。
呼び方は ”えんこ" だが、えんこ10などと使うことはまずない。
C: 英語のChamfer(カドを取るという意味)の頭文字だが、CADにコマン
ドがあるためか、コーナーのCだと思っている人がいるようである。
t: 英語の厚さthicknessから。 この記号だけ小文字のtである。大文字
のTはT定規のイメージが強いからであろうか。
ざぐり: 記号よりも文字で表示されることのほうが多い。 ”Φ10ザグリ” のよう
につかう。六角穴付きボルトを取り付けるザグリが深ザグリになるのか。この場合で
も、深ザグリとは表示していない。
皿ざぐり: これも文字で表示されることが多い。
穴深さ: 同様に文字で表示される。Φ10キリ深サ20のように使う。
寸法補助記号が、古くは数値の右肩に記入していたものが数字の前につけられるよう
に規定が変更になったのはいつ頃か。FAXが普及し、図面をFAXでやり取りするよ
うになってからであろうか。公差も右肩に記入していたので、当初のFAXでは記録紙
が感熱紙ということもあり細かい文字は読みずらかった。また長期の保存にも適さなか
った。
図面を見た目がきれいに書くよりもFAXして間違いなく読み取れることに注意して
描いたのはいつの頃までだったろうか、そんなに長い期間ではなかったような気がす
る。
半径の表し方
半径の表し方は、次による。
a) 半径の寸法は、半径の記号Rを寸法数値の前に寸法数値と同じ大きさで指示す
る。ただし、半径を示す寸法線を円弧の中心まで引く場合には、この記号を省略
してもよい。
記号を寸法数値と同じ大きさとしているのは、前に述べたように以前は記号を数値の
右肩に小さく記入していたからである。
寸法線を円弧の中心線まで引いて、記号を省略するのは、記号の付け忘れと捉えられ
るので、略さないほうが良い。円弧の中心線まで引いた場合は略せるということは、寸
法線は中心まで引く必要はないということである。
b) 円弧の半径を示す寸法線には、円弧の側にだけ矢印をつけ、中心の側には付けな
い。
なお、矢印及び寸法数値を記入する余地がないときには、下図のc)及びd)
の例による。
寸法線の矢印は片側のみ。両端につけない。文章で説明するより例図のようにする、でよい。
c) 半径の寸法を指示するために円弧の中心の位置を示す必要がある場合には、十字
又は黒丸でその位置を示す。
d) 円弧の半径が大きくて、その中心の位置を示す必要がある場合に、紙面などの制
約があるときには、その半径の寸法線を折り曲げてもよい。この場合、寸法線の
矢印のついた部分は、正しい中心線の位置に向いていなければならない。
中心の位置などのような基準点は、寸法を記入するために十字線になることが多く、そこにまた黒丸をつけることはやっていないようである。黒丸の意味もまだまだ理解されていないのでは。
矢印のついた部分を正しい中心線の位置に向けるのは、正確に描く必要はない。おお
よそその方向になっていれば問題ない。
e) 同一中心をもつ半径は、長さ寸法と同様に、累進寸法記入法を用いて指示しても
よい。
注意事項や、規定されてない描き方は長さ寸法の累進寸法記入法と同じである。
f) 実形を示していない投影図形に実際の半径を指示する場合には、寸法数値の前
に “実R” の文字記号を、展開した状態の半径を指示する場合には ”展開R” の文
字記号を数値の前に記入する。
g) 半径の寸法が他の寸法から導かれる場合には、半径を示す寸法線及び数値なしの
記号 (R)によって指示する。
寸法記入方法の一般事項に、寸法は、なるべく計算して求める必要がないように記入する、とあり、このような場合にはどう判断されるか不明だが、図の場合(R8)と記入したほうが親切。
h) かどの丸み、隅の丸みなどにコントロール半径を要求する場合には、半径数値の
前に記号 ”CR” を指示する。
コントロール半径 は前述したように、直線部と半径曲線部との接続部が滑らかにつな
がり、最大許容半径と最小許容半径との間(二つの局面に接する公差域)に半径が存在
するように規制する半径(上図参照)、と規定されている。ただし、最大許容半径と最
小許容半径をどのように規制するかなどの規定は見受けられない。
直径の表し方
直径の表し方は次による。
a) 180°を超える円弧または円形の図形に直径の寸法を記入する場合で、寸法線
の両端に端末記号がつく場合には、寸法数値の前に直径の記号Φは記入しない。
ただし、引き出し線を用いて寸法を記入する場合には、直径の記号Φを記入す
る。
注記 3DCADの場合の規定が記されていますが省略します。
b) 円形の一部を欠いた図形で寸法線の端末記号が片側の場合は、半径の寸法と誤解
しないように、直径の寸法数値の前にΦを記入する。
直径の表し方 a)の場合、直径記号がないと、規定通り正しく書かれていると思う
か、あるいは記号を書き忘れていると思うかは、後者の場合のほうが圧倒的に多いであろう。
書き忘れていると思われるなら書いておいたほうが良いという考えもあるが、ここ
は、省略してもよい、省略できる、ではなく、記入しない、となっているので書くべきではない。
悲しいかな、書き忘れている、抜けがある、漏れがある、などのマイナスイメージは
ついて回ることがあるが、この書き方が正しかったんだ、と理解されるまで、忍耐、我
慢である。
c) 対象とする部分の断面が円形であるとき、その形を図に表さないで、円形である
ことを示す場合には、直径記号Φを寸法数値の前に、寸法数値と同じ高さで記入
する。
d) 円形の図及び側面図で円形が現れない図のいずれの場合でも、直径の寸法数値の
後に明らかに円形又は円筒形になる加工方法が併記されている場合には、寸法数
値の前に直径記号Φは記入しない。
この中で、打ヌキはプレス抜き、イヌキは鋳放しであるので、明らかに円形又は円筒形になる加工方法とはいいがたいので、直径記号Φは付けたほうが良い。
e) 直径の異なる円筒が連続していて、その寸法数値を記入する余地がない場合に
は、下図のように、片側に書くべき寸法線の延長線及び矢印を描き、直径の記号
Φ及び寸法数値を記入する。
例図よりも記入する余地がない場合は、拡大図を描くことになる。