寸法数値
寸法数値は次によって指示する。
a) 長さの寸法数値は、通常はミリメートルの単位で記入し、単位記号は付けない。
b) 角度寸法の数値は、一般に度の単位で記入し、必要がある場合には、分及び秒を
併用してもよい。度、分、秒を表すには、数字の右肩にそれぞれ単位記号°、’、
″を記入する。
例1 90° 、22.5° 、6° 21′ 5″ 、(又は6° 21′ 05″ )、8° 0′ 12″
(又は 8° 00′ 12″ )、3′ 21″
角度寸法の数値をラジアンの単位で記入する場合には、その単位記号radを記
入する。
例2 0.52rad、π/3rad
c) 寸法数値の小数点は、下の点とし、数字の間隔を適切にあけて、その中間に大き
めに書く。また寸法数値のけた数が多い場合でもコンマは付けない。
例 123.25 12.00 22320
d) 寸法記入は、特に定める累進寸法記入法(後述累進寸法記入法参照)の場合を除
き、次による。
1) 寸法数値は、水平方向の寸法線に対しては図面の下辺から、垂直方向の寸法線
に対しては図面の右辺から読めるように指示する。斜め方向の寸法線に対して
も、これに準じて書く。
2) 寸法数値は、寸法線を中断しないで、これに沿ってその上側にわずかに離して
記入する。この場合、寸法線のほぼ中央に指示するのがよい。
長さの単位は製図に限らず、工業の分野ではミリメートルである。単位は付けず、例えば長さ100とか幅200とか呼ぶ。これを長さ10センチメートルなどというと白い目で見られる。
通常はミリメートルと、通常の言葉がつけられているので、ほかの単位、例えばインチなどが使われることもある。この場合、どのように注記するかの規定等はないようである。製図総則では寸法の単位はミリメートルである、と言い切っている。
桁数が多い場合コンマで区切らないが、3桁ごとにと表現していない。4桁で区切る日本語の文化に少しでも配慮しているのか。
寸法は水平方向は下側から垂直方向は右側から読めるようには、例外は全くない。斜め方向の場合が問題だが、これは次項で出てくる。記入する形体によっても違ってくる。
数値を寸法線を中断して中央に書くようにしていた時代があった。今もその名残りが見られることがある。
中央に記入しない書き方も規定されている。後述します。
3) 寸法数値は、垂直線に対し左上から右下に向かい約30°以下の角度をなす方向
には、寸法線の記入を避ける。ただし、図形の関係で記入しなければならない
場合には、その場所に応じて、紛らわしくならないように記入する。
30度以下の角度の場合は記入する形状にもよるが、上図B)とは違い、そのまま垂直の場合と同じように書いているようである。 それが一番紛らわしくないように思える。
e) 寸法数値を表す一連の数字は、図面に描いた線で分割されない位置に指示するの
が良い。
f) 寸法数値は、線に重ねて記入してはならない。ただし、やむを得ない場合には、
引き出し線を用いて記入する。
g) 寸法数値は、寸法線の交わらない箇所に記入する。
数値が分割する位置にしか記入場所が取れない場合は、図面の線を中断させる。寸法線を中断させる場合もある。引き出し線を使用するよりもスッキリすることがある。
寸法線の交わらない箇所は、まず寸法線自体を交わらせないよう描くべきである。
h) 寸法補助線を引いて記入する直径の寸法が対称中心線の方向に幾つも並ぶ場合に
は、各寸法線はなるべく同じ間隔に引き、小さい寸法を内側に、大きい寸法を外
側にして寸法数値をそろえて記入する。ただし、紙面の都合で寸法線の間隔が狭
い場合には、寸法数値を対称中心線の両側に交互に書いてもよい。
中心 線の方向に幾つも並ぶ場合に小さい順に記入していかないと寸法線と寸法補助が交わりあってしまい混乱することになる。寸法数値を交互に書く場合,これは前述の中央に書かない場合の例であるが、中心線に近づけけて書いておいたほうがわかりやすいと思う。
i) 寸法線が長くて、その中央に寸法値を記入すると分かりにくくなる場合には、い
ずれか一方の端末記号の近くに片寄せて記入することができる。
寸法線が長くても中心線がはっきりわかるなら中央に 書いておいたほうが良い。場合によっては中心線を中断させることもある。
j) 寸法数値の代わりに、文字記号を用いてもよい。この場合には、その数値を別に
表示する。
これは前述、一般事項の中にあった、”寸法は寸法数値によって表す”、の例外規定である。文字記号を用いてもよいことが認められている。
寸法の配置
直列寸法記入法
直列寸法記入法は、直列に連なる個々の寸法に与えられる寸法公差が、逐次累積して
もよいような場合に適用する。
並列寸法記入法
並列寸法記入法は、並列に寸法を記入するので、個々の寸法公差が他の寸法公差に影響を与えることはない。この場合、共通側の寸法補助線の位置は、機能・加工などの条件を考慮して適切に選ぶ。
累進寸法記入法
累積寸法記入法は、寸法公差に関して、並列寸法記入法と全く同等の意味を持ちながら、一つの形体から次の形体へ寸法線をつないで、1本の連続した寸法線を用いて簡便に表示できる。この場合、寸法の起点の位置は、起点記号(○)で示し、寸法線の他端は矢印で示す。寸法数値は、寸法補助線に並べて記入するか、矢印の近くに寸法線の上側にこれに沿って指示する。
なお、累進寸法記入法とはいえ、2つの形体間だけの寸法線にも準用することができる。
直列寸法記入法は普通に使われるが、個々の寸法が多くなると、計算が面倒になる。並列寸法記入法は寸法を記入するスペースが多くなってしまう。累積寸法記入法はまだまだ馴染みがないせいか、起点記号の(〇)を図例よりもはっきりさせておかないと分かりにくい。寸法線の片側のみを矢印にするのも誤解しやすい。
したがって下図のような描き方をすることがある。個々の寸法も累積寸法もわかり、スペースもさほど取らない。寸法線は片側は矢印をつけ反対側は寸法補助線まで伸ばさない。起点記号も使用しない。
前に述べた ”対称の図形で多数の寸法線を記入する場合、寸法線を短くする″ の変形版で、寸法線の省略、と言えなくもないが、もちろんこの書き方の規定はない。
座標寸法記入法
正座標寸法記入法
穴の位置、大きさなどの寸法は、正座標寸法記入法を用いて表にしてもよい。この場合、表に示すX及びYの数値は、起点からの寸法である。
起点は、例えば、基準穴、対象物の一隅など機能または加工の条件を考慮して適切に選ぶ。
極座標寸法記入法
カムプロファイルなどの寸法は、極座標寸法記入法を用いて指示してもよい。
座標寸法記入法の場合、起点記号がわかりにくい。起点あるいは起点位置などと文字を使用して分かりやすくしてもよいと思う。