寸法線
寸法線は、次による。
a) 寸法線は、指示する長さ又は角度を測定する方向に平行に引き、線の両側には端
末記号をつける。
なお、一枚の図面の中では、後述する g)3)の規定による場合を除き、下図
端末記号の例の a)b)及びc)を混用してはならない。
寸法線の引く方向は、測定する方向に平行だが、測定技術が進んだ今は、この定義はいささか疑問が出そう。別な表現を検討したほうが良いと思うが。
寸法線につける端末記号は、例として3点示されている。例として挙げられているだけなので、これは製図総則により、Z 8317-1 寸法及び公差の記入方法の 5.3 端末記号及び起点記号が適用される。
30°塗りつぶし矢、30°白抜き矢、など6点が大きさまで規定されている。そのうち黒丸はスペースがない場合に用いると記述されている。スペースがない場合にのみ使われるのかどうかはやや曖昧で、実際に使われているのも目にする。普通は上図 a)の30°開き矢を使うのが一般的である。
b) 角度寸法を記入する寸法線は、角度を構成する二辺又はその延長線(寸法補助
線)の交点を中心として、両辺またはその延長線の間に描いた円弧で表す。
c) 角度サイズを記入する寸法線は、形体の二平面のなす角又は相対向する円すい表
面の母線のなす角の間に描いた円弧で表す。
角度寸法と角度サイズはどう違うのか。
Z 8317-1 寸法及び公差の記入方法 用語及び定義では角度寸法として、”二つの形体間の位置を表す角度又はサイズ形体の大きさを表す角度(サイズ角度)。”とある。これはなんのこっちゃとなるのだが、注記に、機械の分野では、角度寸法は大きさ表す角度及び位置を表す角度に分類される、とあり、Z 8318 長さ寸法及び角度寸法の許容限界の指示方法、の角度寸法、およびその注記と合わせて判断すると、次のようになる。
角度寸法には角度サイズと角度寸法がある。
傾斜穴の位置、中心面の位置を表すのは角度寸法。円すい角、プリズム角など大きさを表すのは角度サイズ。
長さ寸法も、大きさを表す寸法、位置を表す寸法、があり位置と大きさは分けられるようである。図で表せば同じなので、その必要はなさそうに思えるが学術的には分けておきたいらしい。
d) 寸法線が隣接して連続する場合には、寸法線は一直線上にそろえて記入するのが
よい。また、関連する部分の寸法は、一直線上に記入するのが良い。
一直線上にそろえて記入しなくてもよいのだが、このあたりはバラバラになっていると、製図センスを疑われるので、そろえておいたほうがよい。
e) 段差がある形体間の寸法記入は、次のいずれかによる。
1) 形体間に対して直列寸法を指示する。
2) 累進寸法記入方法によって、一方の形体側に起点記号を、他方の形体側に矢印
を指示する。
累進寸法記入法は、”寸法及び交差の記入方法”で、基準形体から各形体までの寸法線
を累進させて記入する方法、と説明があるだけ。それ自体の例図はない。
起点記号は、”端末記号及び起点記号”で示されている。大きさは付属書の”図示記号の大きさ”で、図示記号といっしょに示されている。図だけで小さい丸だとは説明されていない。付属書にはわざわざ”(規定)””がついているので、四角や三角にすると規定違反か。
f) 穴加工のドリル径、平面加工のフライスカッタ径、溝加工のブローチサイズなど
を指示すれば設計要求を満たす場合には、その工具径を指示する。
設計要求を満たす場合とはどんな場合なのか、その前に文章自体が変なのでJIS規格のデーターベースで調べてみたら、”~などの指示によって設計要求を満たす場合には”と変更されていた。それでもまだ意味不明なところはあるが。
g) 狭い所での寸法記入は、部分拡大図を描いて記入するか、または次のいずれかに
よる。
1) 引き出し線を、寸法線から斜め方向に引き出し、寸法数値を記入する。この場
合には、引き出し線の引き出す側の端には何もつけない。
2) 寸法線を延長して、その上側に記入してもよい。
3) 寸法補助線の間隔が狭くて矢印を記入する余地がない場合には、矢印の代わり
に黒丸または斜線を用いてもよい。
狭いところを拡大図を描いて寸法記入していたら拡大図だらけになってしまう。
引き出し線を用いる場合は、以前は引き出す線の端に矢印をつけていたようで、現在で
も稀に見られる。
同一図面内で使用できるのは前述 a)で述べられたように、ここの g)3)で述べられているようにスペースがない場合。黒丸か斜線なので違った種類の矢印を使うことはできない。
狭くて矢印が記入できないのはどのくらいか。矢印の大きさは、他の文字・記号と調和するように決められており、文字の高さと同じである。寸法数字が3mmなら矢印の長さも3mmとなりこの大きさで記入する場合、最小の間隔は7㎜であろうか。
h) 対称の図形で対称中心線の片側だけを表した図では、寸法線はその中心線を超え
て適切な長さに延長する。この場合、延長した寸法線の端には、端末記号をつけ
ない。ただし、誤解のおそれがない場合には、寸法線は中心線を超えなくてもよ
い。
寸法を中心線上に記入し寸法線を数値まで延長する b)の描きかたがほとんどである。この描きかたが誤解が少ないのではないかと思われる。
i) 対称の図形で多数の径の寸法を記入する場合には、寸法線の長さを更に短くし
て、図の例のように数段に分けて記入してもよい。
対称の図形の場合でなくとも、寸法を数段に分けて記入することはある。累積寸法記入方法の変形版であろううか。ピッチなどを記入する場合などで、一直線上に記入するスペースがない場合、起点記号も用いず数段に分けて記入する。規定にはないが結構通用しているようである。