製図―投影法―第3部:軸測投影
JIS Z 8315-3
序文 前部略
軸測投影は無限の遠点(視点)から対象物を投影し、一つの投影面(通常、製図面と
いう)に単純な画像を作成する。一種の平行投影であるが、概略図として十分な、遠距
離からみた画像を作成することができる。
軸測投影では、対象物の形並びに視点、投影面及び対象物自体の相互位置関係によっ
て異なった投影図ができる。
機械、電気、建築などの技術分野で必要となるのは数種類の投影図だけである。
軸測投影法は、製図の分野では正投影ほど一般的でない。
1. 適用範囲 この規格は、JIS Z 8315-1 に規定された一般規定に従って、すべての
技術分野であらゆる種類の製図に対して軸測投影を行う場合の基本的な規則を規定す
る。
2. 引用規格 次に掲げる規格は、この規格に引用されることによって、この規格の規
定の一部を構成する。これらの引用規格は、その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Z 8316 製図―図形の表し方の原則
備考 省略
JIS Z 8317 製図―寸法記入方法―一般原則、定義、記入方法及び特殊な指示方法
備考 省略
JIS Z 8313-1 製図―文字―第1部:常用するローマ字、数字及び記号
備考 省略
JIS Z 8315-1 製図―投影法―第1部:通則
備考 省略
JIS Z 8114 製図―製図用語
備考 省略
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は、JIS Z 8315-1 及び JIS Z 8114 の
定義による。
4. 共通事項 共通事項は、JIS Z 8316 の規定に従う。
4.1 座標軸の設定 座標軸の方向は、条件に従って、その一つ(Z 軸)が垂直になる
ように選ぶ。
4.2 対象物の位置 対象物は、その主要な面、軸及びりょう(稜)線を座標面に平行
に置く。対象物を正投影法で表す場合には、主投影図とその他の投影図を決めることが
できるならば、それらを示すことができる方向に向けて置く。
4.3 軸対称 軸対象物は、必要がなければ半分は描かない。
4.4 見えない輪郭及びりょう線 隠れた輪郭やりょう線は、省略するのが望ましい。
4.5 ハッチング 切断面又は切り口を表すハッチングは、切断面又は切り口の軸及び
輪郭に対して45度の角度で描く(図1参照)。
座標面に平行な面にハッチングを入れるときは、図2のように座標軸に平行に描く。
4.6 寸法記入 軸測投影で表示する場合には、通常、寸法記入を省略する。特別な理
由によって寸法記入が必要であると考えられる場合には、正投影の場合と同じ規定(
JIS Z 8317 及び JIS Z 8313-1 )に従う(図6及び図12参照)。
5. 推奨する軸測投影 製図用には、次の軸測投影を推奨する。
― 等角投影(5.1参照)
― 二等角投影(5.2参照)
― 斜投影(5.3参照)
座標軸X、Y、Zは、大文字で表示する。表又は図面で、その他の項目(例えば、寸
法)を表示する必要がある場合には、区別を明確にするために小文字のx、y、zを使
用する(例は、JIS B 0012-2 参照)。
5.1 等角投影 等角投影(Isometric axonometry)は、X、Y及びZの3本の座標軸
からなり、各投影面がお互いになす角度が等しい正等角投影である(¹)。
座標軸X、Y及びZ上の単位長さux 、uy 及びuz は、投影された座標軸X’、Y’及び
Z’上にそれぞれ次の単位長さux’、uy’ 及びuz’ として正投影される。
ux’=uy’=uz’ =0.816
注(¹) これは、すべての面と投影面との角度が等しくなるように置かれた立方体の主
要な面を正投影して得られる投影図に等しい。
図3は、三つの座標軸X、Y、Zを投影面(製図面)上に投影した座標軸X’、Y’、
Z’を示す。
実際に作図する場合には、投影された座標軸X’、Y’、Z’軸上に投影された単位長さ
をux’’=uy’’=uz’’=1にとればよい。これは =1.225倍に拡大した対象物を図
式に表現したことと同じである。
各面に円が描かれた立方体の等角投影を図4に示す。
等角投影は、立方体の3面全部を同じように見ることができる点で重要であり、図を
等角グリッド上に描くのが便利である(図5参照)。
等角投影の寸法記入例を図6に示す。
5.2 二等角投影 二等角投影(Dimetric axonometry)は、対象物の主要な面の形状
が特に重要な場合に使用する。三つの座標軸の投影を図7に示す。三つの尺度の比率
は、ux’:uy':uz'=1/2:1:1である。
各面に円が描かれた立方体の二等角投影図を図8に示す。
5.3 斜投影 斜投影(Oblique axonometry)では、投影面を座標面の一つと平行にと
り、対象物の主要な面をそれと平行に置く。
主要な面の尺度は同じになる。投影された座標軸のうちの2本は、直交する。投影さ
れ第三の座標軸の方向及びその尺度は任意である。製図が簡単であることから、数種類
の斜投影が使われる。
5.3.1 カバリエ図 カバリエ図(Cavalier axonometry)は、投影面は通常垂直であ
り、第三の座標軸の投影は、残りの直交投影軸に対して45°になるように選ぶ。投影さ
れた三つの座標軸の尺度は同じで、ux’=uy’=uz’=1である(図9参照)。
立方体のカバリエ図には、図10に示す四つの場合がある。
カバリエ図は非常に簡単に描くことができ、寸法記入が可能であるが、第三の座標軸
に沿った形状の釣り合いが著しくゆがめられる。
5.3.2 キャビネット図 キャビネット図(Cabinet axonometry)は、投影された第
三座標軸上の尺度が1/2に縮尺されている点を除き、がバレエ投影と同じである。こ
れによって形状の釣り合いが良いものとなる。
各面に円が描かれた立方体のキャビネット図を図11に示す。
図12に、寸法記入した例を示す。
5.3.3 平面斜投影 平面斜投影(Planometric axonometry)では、投影面を水平座標
面に平行にとる。三面すべての情報を得るためには、α=0°、90°、又は180°の角度位置
の投影を避ける(図13参照)。
5.3.3.1 等尺平面斜投影図 尺度の比率を1:1:1に選んだ等尺平面斜投影図
(Normal planometric projection)による座標軸の投影を図14に示す。
立方体に寸法を記入した例を図15に示す。
この斜投影は、特に市街地計画の製図に適している。
5.3.3.2 縮尺平面斜投影図 縮尺の比率を1:1:2/3にした場合の縮尺平面投影
図(Shortened planometric projection)にできる座標軸の投影図を、図14に示す。
立方体に寸法を記入した例を図16に示す。
附属書A(参考) 参考文献
[1] ISO 6412-2 英文省略
備考 省略
※ この規格は、序文に、正投影ほど一般的でないとあるように機械製図ではほとんど
使われない。また、4.6 寸法記入 にあるように、通常寸法記入は省略されるので、
部品図などの製図には用いられない。
したがって、機械製図としての規格としてはほとんど必要ないものといってよい。参
考程度に見ておいてください。
カバリエ図とキャビネット図は、ほとんど同じ投影法であるのに全く違った名称とな
っている。カバリエは辞書によるとフランス語で騎士、転じて、紳士などのこと。キャ
ビネットは一般的には戸棚。なぜこれらがこのような名前を使うようになったのかは全
く不明。少しでも納得できるような名称にしておいてもらえると、どっちがどっちだっ
たかというようなことにはならないのだが。