JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

製品の幾何特性仕様(GPS)ー幾何公差表示方式―形状、姿勢、位置及び振れの公差表示公差(1)

 製品の幾何特性仕様(GPS)ー幾何公差表示方式ー形状、姿勢、位置及び

     振れの公差表示方式

     Geometrical  product  specifications (GPS)―

                          Geometrical tolerancing―

         Tolerancing  of  form,  orientation,  locationocation  and  run-out

         JIS B 0021

 

  この規格は、幾何公差に関することである。図示する場合は、製図-公差表示方式の

基本原則 JIS  B  0024  によるので、前項の幾何偏差と同じく参考のため掲載する。

 

  幾何特性仕様とは、幾何特性、つまり形状、姿勢、位置などの性質を、どのように表

示するか、そのやり方である。

 

 では、偏差と公差はどう違うのか。JISではどこかで定義されているのかもしれな

いが見当たらない。一般的には、偏差は、かたより、ばらつき、加工する場合では誤

差になるであろうか。公差は、偏差を規制するもの、あるいは規制されたものといえる

か。

 

 定義文では、易しい言葉が使われることは少ない。簡潔に説明するためには、そうな

ってしまうのだろうが、それで理解されるのかというとそうではない。ぜひ優しい言葉

を使ってもらいたいものである。

 

 

 序文 この規格は、ISO  1101 を翻訳し、技術的内容及び規格票の様式を変更する

ことなく作成した日本工業規格である。

―中略ー

 この規格は、加工物の幾何学的な定義に必要なすべての事項を含み、幾何公差表示方

式に対する基礎事項と必要な基本的事項について規定する。更に詳細な内容について

は、2.の個別引用規格及び表1並びに表2に引用した規格を参照するのが良い。

―中略―

 この規格の付属書A(旧規格の図示方法)は、参考である。この規格から削除し、今後

使用してはならない旧規格の図示方法を示す。

1. 適用範囲 

1.1 この規格は、加工物の幾何学的な定義に必要なすべての事項を含み、幾何公差表

示方式に対する基礎事項と必要な基本的事項について規定する。幾何表示方式に関する

更に詳細な内容については、2.の個別規格及び表2に引用した規格を引用するのが良

い。

1.2 幾何公差は、機能的要求によって指示する。製造及び検査の要求事項も、幾何公

差表示方式に影響を与える。

1.3 図面に指示する幾何公差は、特定の製造方法、測定方法又はゲージ手法の使用を

必ずしも暗示するものではない。

 2. 引用規格  省略

   参考 2項目省略

   備考 5項目省略

3. 定義 ー前略ー

 この規格は、次の定義も適用する。

3.1 公差域(tolerance zone) 一つ以上の幾何学的に完全な直線又は表面によって規制

される領域であり、公差(長さの単位)が指示される領域をいう。

4. 基本概念  

4.1 形体に指示した幾何公差は、その中に形体が含まれる公差域を定義する。

4.2 形体とは、表面、穴、溝、ねじ山、面取り部分又は輪郭のような加工物の特定の

特性の部分であり、これらの形体は、現実に存在しているもの(例えば、円筒の外側表

面)又は派生したもの(例えば、軸線または中心平面)である。 

4.3 公差が指示された公差特性と寸法の指示方式によって、公差域は次の一つにな

る。

  ― 円の内部の領域

  ― 二つの同心の円の間の領域

  ― 二つの等間隔の線又は平行二直線の間の領域

  ― 円筒内部の領域

  ― 同軸の二つの円筒の間の領域

  ― 二つの等間隔の表面又は平行二平面の間の領域

  ― 球の内部の領域

4.4 更に限定した公差が要求される場合、例えば、注記(図7参照)を除いて、公差

付き形体はこの公差域内で任意の形状又は姿勢でもよい。

4.5 11.及び12.のように特に指示した場合を除いて、公差は対象とする形体の全

域に適用する。

4.6 データムに関連した形体に指示した幾何公差は、データム形体自身の形状偏差を

規制しない。データム形体に対して、形状公差を指示してもよい。

5. 記号

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6. 公差記入枠
6.1 要求事項は、二つ又はそれ以上に分割した長方形の枠の中に記入すこれらの区画

には、左から右へ次の順序で記入する(図1、図2、図3及び図4)。

  ― 幾何特性に用いる記号

  ― (長さの単位)寸法に使用した単位での公差値。この値は、公差域が円筒形形

    は円であるならば記号Φを、公差域が球であるならば記号SΦをその公差値の

    前につける。

  ― 必要ならば、データム又はデータム系を示す文字記号(図2、図3及び

    4)。

6.2 公差を二つ以上の形体に適用する場合には、記号"X"を用いて形体の数を公差

記入枠の上側に指示する(図5及び図6)。

6.3 公差域内にある形体の形状の品質の指示をする必要がある場合には、公差記入枠

の付近に書く(図7)。

6.4 一つの形体に対して二つ以上の公差を指定する必要がある場合には、公差指示は

便宜上一つの公差記入枠の下側に公差記入枠を付けて示してもよい(図8)。

  参考 複数の公差指示に矛盾があってはならない。

 

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7. 公差付き形体 公差付き形体は、公差記入枠の右側又は左側から引き出した指示線

によって、次の方法で公差付き形体に結び付けて示す。

  ― 線または表面自身に公差を指示する場合には、形体の外形線上又は外形戦の延

    長線上(寸法線の位置と明確に離す)(図9及び図10)。指示線の矢は、実際

    の表面に点をつけて引き出した引出線上に当ててもよい(図11)。

  ー 寸法を指示した形体の軸線または中心平面若しくは一点に公差を指示する場合

    には、寸法線の延長線上が指示線になるように指示する(図12、図13及び

    14)。

 

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8. 公差域

8.1 公差域の幅は、指定した幾何形状に垂直に適用する(図15.図16及び図17

が、特に指定した場合を除く(図18及び図19)。

 真円度公差の場合には、公差域の幅は正接線に直角な直線が図示軸線に交差する方向

に適用する。

8.2 一方向に公差を指示した軸線又は点の場合には、位置を決める公差域の幅の姿

勢は、特に指示した場合を除いて、理論的に正確な寸法で決められた位置にあり、指示

線の矢の方向で指示されたように0°  又は90°  である(図15)。

 ― 公差域の幅の姿勢は、特に指示した場合を除いて、指示線の矢の方向で指示され

   たように、データムに関して0°  又は90°  である(図18及び図19)。

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 ― 二つの公差を指示した場合には、特に指示した場合を除いて、それらは公差域

   が互いに直角になるように適用する(図16及び図17)。

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.3 記号"Φ"が公差域の前に付記してある場合には、公差域は円周(図22及び

23)である。記号"SΦ"が公差値の前に付記してある場合には、公差域は球である。
 

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8.4 幾つかの離れた形体に対して、同じ公差値を適用する場合には、個々の公差域

図24のように指示することができる。

8.5 幾つかの離れた形体に対して一つの公差域を適用する場合には、公差記入枠の中

に文字記号"CZ"を記入する(図25)。

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 ※※※ 

 CZは、何の説明もないが、common zone 共通公差域のことである。

単にこの記号を使いなさいということと、こういう意味を持ったこの略号を使いなさい

では、理解のされ方が違うと思う。

 

9. データム データムは、次の各校に示すように指示する。詳細な内容については、

JIS  B  0022 を参照。

9.1 公差付き形体に関連付けられるデータムは、データム文字記号を用いて示す。正

方形の枠で囲んだ大文字を、塗りつぶしたデータム三角記号又は塗りつぶさないデータ

ム三角記号とを結んで示す(図26及び図27)。データムとして定義した同じデータム文

字記号を公差記入枠にも記入する。塗りつぶしたデータム三角記号と塗りつぶさないデ

ータム三角記号との間に意味の違いはない。

9.2 データム文字記号を持つデータム三角記号は、次のように記入する。

   ー データムが線または表面である場合には、形体の外形線上又は外形戦線の延長

    線上(寸法線の位置と明確に離す。)(図28)。データム三角記号は、表面を示し

    た引出線上に指示してもよい(図29)。

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  ― 寸法指示された形体で定義されたデータムが軸線又は中心平面若しくは点であ

    る場合には、寸法線の延長線上にデータム三角記号を指示する(図30

    32)。 二つの端末記号を記入する余地がない場合には、それらの一方はデー

    タム三角記号に置き換えてもよい(図31及び図32)。

9.3 データムをデータム形体の限定した部分だけに適用する場合には、この限定部分

を太い一点鎖線と寸法指示によって示す(図33)。

9.4 単独形体によって設定されるデータムは、糸つの大文字を用いる(図34)。

 二つの形体によって設定されるデータムは、ハイフンで結んだ二つの大文字を用いる

 (図35)。

 データム系が二つ又は三つの形体、すなわち、複数のデータムによって設定される場

合には、データムに用いる大文字は形体の優先順位に左から右へ、別々の区画に指示す

る(図36)。

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10. 補足事項の指示方法

10.1 輪郭度特性を断面外形のすべてに適用する場合、又は境界の表面すべてに適用

する場合には、記号"全周"を用いて表す(図37及び図38)。全周記号は、加工物のす

べての表面に適用するのではなく、輪郭度公差を指示した表面にだけ適用する。

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10.2 ねじ山に対して指示する幾何公差及びデータム参照 (datum references) は、例え

ば、ねじの外形を表す"MD"(図39及び図40)のような特別な指示がない限り、ピッ

チ円筒から導き出される軸線に適用する。歯車及びスプラインに対して指示する幾何公

差及びデータム参照は、例えば、ピッチ円直径を表す"PD"、外径を表す"MD"、又

は谷底径を表す"LD"のような特別な指示がされた、特定の形体に適用する。

11. 理論的に正確な寸法 位置度、輪郭度又は傾斜度の公差を一つの形体又はグルー

プ形体に指定する場合、それぞれ理論的に正確な位置、姿勢又は輪郭を決める寸法(距

離を含む)を"理論的に正確な寸法"という。理論的に正確な寸法は、データム系の相

対的な姿勢の決定に指示する寸法にも用いる。

 理論的に正確な寸法は、公差を付けず、長方形の枠で囲んで示す(図41及び図42)。

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12. 限定した指示 

12.1 形体の全長さのどこにも存在するような限定した長さに同じ特性の公差を適用

する場合には、この限定した長さの数値は、公差値の後に斜線を引いて記入する。この

指示は、形体の全体に対する公差記入枠の下側の区画に直接記入する(図43)。

12.2 公差を形体の限定した部分だけに適用する場合には、この限定した部分を太い

一点鎖線で示し、それに寸法を指示する(図44及び図45)。 

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12.3 データムの限定した部分(9.3参照)。

12.4 公差域内での形体の形状の規制について、6.3に示す。

13. 突出公差域 突出公差域は、記号Ⓟを用いて指示する(図46)。詳しい内容につ

いては、ISO 10578を参照。

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14. 最大実体公差方式 最大実体公差方式は、記号Ⓜを用いて指示する。この記号

は、公差値、データム文字記号、またはその両方の後に置く(図47図48及び

49)。詳しい内容については、JIS  B  0023を参照。

  備考 省略

15. 最小実体公差方式 最小実体公差方式は、記号Ⓛを用いて指示する。この記号

は、公差値、データム文字記号、またはその両方の後に置く(図50図51及び

52)。詳しい内容については、JIS  B  0023を参照。

  備考 省略

16. 自由状態 非剛性部品に対する自由状態は、指示した公差値の後に記号Ⓕを用い

て指示する(図53及び図54)。

  備考 省略

  備考 補足的な要求事項Ⓟ、Ⓜ、Ⓛ及びⒻは同じ公差枠の中で同時に用いることが

     できる(図55)。

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17. 幾何公差の相互関係 機能的な要求がある場合には、形体の幾何偏差を定めるた

めに一つ又はそれ以上の特性に公差を指示する。形体の幾何偏差がある種の公差によっ

て定められる場合には、ときとしてこの形体の別の偏差がこの公差によって規制され

る。

 形体の位置公差は、この形体の位置偏差、姿勢偏差及び形状偏差を規制するが、姿勢

公差及び形状公差によって位置偏差を規制することはできない。

 形体の形状公差は、この形体の形状偏差だけを規制する。