このブログは、JIS規格の製図、なかでも機械製図に関するものを説明していま
す。
まず、JIS規格本文を掲載し、それについて解説やコメントがある場合、※を付け
てJIS規格とは違う観点からの考えを述べています。
製図―表示の一般原則―線の基本原則
Technical drawings-General principles of presentation-
Basic convention for lines
JIS Z 8312
序文 省略
1. 適用範囲 この規格は、線図又は設計図、地図などの技術製図で使用する線の表示
の一般原則のほかに、線の種類、線の名称及び線の構成を規定する。
備考 省略
2. 定義 この規格では、次の定義を適用する。
2.1 線(line) 長さが線の太さの半分より大きく、始点から終点まで、直線、曲
線、破断線又は連続線などによって結ばれている幾何学的な表示。
備考1. 円を表す線のように、始点と終点が一致してもよい。
2. 長さが線の太さの半分以下の線を点(dot)という。
3. マイクロフィルム撮影又はファクシミリ伝送による図面の鮮明さを点検す
るための試行は行うべきである。
2.2 線の要素(line element) 連続していない線の単一の部分。例えば、点、長さ
が異なる線分及びすき間など。
2.3 線の構成単位(line segment)連続していない二つ以上の異なった線の要素から
構成される線群。例えば、長線・すき間・極単線・すき間・極単線・すき間などの組み
合せ。
参考 この例の線の構成単位は、二点鎖線を表している。原国際規格では、極単線
は点と表現されているが、分かりやすくするために、この規格では二点鎖線
を例にした。線の要素の名称は表3参照。
3. 線の種類
3.1 線の基本形 線の基本形(線形と呼ぶ。)は、表1による。
表1
参考 ”呼び方” は ”線の構成要素” を表し、次のような意味になっている。
線の要素の呼び方と定義は表3による。
破線:”短線・すき間”、跳び破線:”短線・長すき間”、
一点鎖線:”長線・すき間・極短線・すき間”、
二点鎖線:”長線・すき間・極短線・すき間・極短線・すき間”、
その他の線形では、長:”長線”、短:”短線”、
点:”すき間・点・すき間”、二短:”短線・すき間・短線”、
二点:”すき間・点・すき間・点・すき間”、
三点:”すき間・点・すき間・点・すき間・点・すき間”。
3.2 線の基本形の変形 表1の線形の変形を表2に示す。
3.3 同じ長さの線の組み合わせ
3.3.1 平行な2本以上の線の組合せ 図1の例参照。
3.3.2 異なった2本の線形の組合せ
a) 異なった太さの線を重ねる場合 図2の例参照[図2a)は実線と点線、図2
b)は実線と跳び破線を重ねた場合]。
b) 交互に配置する場合 図3の例参照[2本の跳び破線の両側に実線を配置した
例]。
3.3.3 平行な2本の実線間に図形要素を規則的に繰り返し配置する組合せ 図4の
例参照[図4a)は黒色の円形要素、図4b)は黒色の台形要素を繰り返し配置した
例]。
3.3.4 実線に記号要素を規則的に繰り返し配置する組合せ
a) 実線 図5の例参照。
b) 断続した実線 図6の例参照。
4. 線の寸法
4.1 線の太さ すべての種類の線の太さdは、図面の大きさに応じて次の何れかにす
る。この数列は、公比を(約1.4)としている。
0.13 mm,0.18 mm,0.25 mm,0.35 mm,0.5 mm,0.7 mm,1 mm,1.4 mm,2 mm
極太線、太線及び細線の太さの比は、4:2:1 である。1本の線の太さは、全長にわ
たって一様でなければならない。
4.2 線の太さの許容値 隣接する異なった太さの2本の線が明瞭に区別できれば、線
の太さは4.1に規定した値からずれてもよい。線の太さを一様にできる製図器具を用い
る場合には、線の太さのずれは ± 0.1d以内でなければならない。
4.3 線の要素の長さ 手書きによって図面を作成する場合には、線の要素の長さは表
3による。
いくつかの基本的な線形及び線の要素の算出式が ISO 128-21 に与えられており、
CADシステムによる製図に便利なようになっている。
5. 線の表し方
5.1 線の間隔 平行な線の最小間隔は、他に規定がない限り、0.7 mmより狭くして
はならない。
備考 CADによって作図するような場合、図面上の線の間隔は、ねじの図示など
のように、実際の値にはなっていない。このことは、例えば工作機械の制
御などのためにデータセットを作成する場合、考慮しなければならない。
5.2 線の交差
5.2.1 種類 線形番号 02~06 及び 08~15 の線は、線分の部分で交差させる(図7
~12参照)。
線番号07の線は、点の部分で交差させる(図13参照)。
5.2.2 線の描き方 5.2.1の要素は、線を交差する点から描き始めるか(図14参
照)、又は線分によってつくられる完全な十字形(図15参照)若しくは任意の交差形
(図16参照)から描き始めることによって満たすことができる。
図14 図16
5.3 平行線の2番目に描く線(副線) 二つの異なった2本の平行線の表示法を図
17に示す。図17a)が望ましい方法である(2番目の線を1番目に描いた線の下側又は
右側に引く。)。
参考 2番目に描く線を副線と呼ぶ。
6. 線の色 線は、背景の色に応じて黒色又は白色で描く。他の色を使用してもよい
が、その場合には色の意味が説明されていなければならない。
7. 線の種類の指示法 基本的な線の種類の指示は、次の順番に従った各項目からなっ
ていなければならない。
a) "線"又は"Line"
b) JIS Z 8312(又は ISO 128-20)の引用
c) 表1の線形番号
d) 4.1による線の太さ
e) 色(必要に応じて表示)
例 線形番号03,線の太さ 0.25 mmの場合の指示
線 JIS Z 8312-03×0.25
(原規格による指示:Line ISO 12B-20-03×0.25)
線形番号05,線の太さ 0.13 mmで白色の場合の指示
線 JIS Z 8312-05×0.13/白色
(原規格による指示:Line ISO 12B-20-05×0.13/white)
附属書A(参考)
参考文献
(1)~(9)の ISO規格、省略
※ 線については、この後の、製図―図形の表し方の原則 JIS Z 8316 の3. 線 の項
目で規定されている。これは、機械製図、JIS B 0001 6.2 線の種類及び用途 で
も同じ内容となっており、以前のページで紹介している。
この規格では、線の太さ、線の要素の長さが規定されており、線の交差について図で
説明がされている。
線の太さを、細線 0.13mm、太線 0.25mmとして、太線の破線を考えた場合、短線
は 12d=3,すき間は、3d=0.75 となる。
実際に図面を描く場合、例図のように単純なことばかりではないので、この規定と、
線の交差の規定の両方を守ることは困難な場合が出てくる(以下参考図参照)。
対処法はあるのだが、そこまで考えることはない、些細なことなので規定どうりでは
なくても正しく理解されれば問題はない。
1)は、線の要素の長さを規定どおりにしたもので、すき間の部分が公差部になって
しまうことがある。2)は、短線の長さを変えて、公差位置を調整したものである。規
定どおりの長さではないが、手描きの場合はこの方法で構わない。3)は、部分断面図
にして、破線をなくすことにより、解決したものである。普通ここまでする必要はな
く、1)のままでも間違って理解されることはない。