この頁では、今まで公開したJIS規格の機械製図の中で、規格には関係しない話を
まとめてみました。一部編集してあります。
製図―幾何公差表示方式ー位置度公差方式 の頁
この規格は、製図とタイトルがついているが、内容は、方式が付いているように、や
り方、つまりは、設計である。
以前にも述べたが、これらの公差表示方式、最大実体公差などは、多くの方が解説し
ているのでそちらを見ていただきたい。
では、この規格、どの程度適用していくべきか。
この公差方式の利点の一つが、図6に示すように公差域が大きくできることである。
図では公差域は、57%も大きくなるが、これは言葉の綾ならぬ数字の綾であって、対角
線上(45°の方向)の公差域は同じである。誤差が一方向だけということはないで、こ
のことにあまり期待はしないほうが良い。
それよりも、肝心なことは、どのような測定をするのか、どのような測定ができるの
かということである。
このことを抜きにして、公差域を大きくしたいために、位置度公差方式を適用しても
意味はないといえる。位置度公差方式の適用は特殊な場合を除いて,考える必要はない
のでは、というのが一般の人の感覚であろうか。
製図ー姿勢及び位置の公差表示方式ー突出公差域 の頁
突出公差域とは、部品そのものに公差を指示するのではなく、組み付けられる部品
の公差を指示するものである。
コストの増大を抑えるためのものであるが、位置度公差方式と同様に、どのような測
定ができるか、どのように測定できるかがポイントとなる。測定器や測定装置にコスト
がかかってしまっては意味がない。
この表示方式も、位置度公差方式と同様に、特別な場合に適用するものと考えておい
てよい。規格文中の表現も、突出公差域を指示してもよい、となっている。むやみに突
出公差域を指示するのは、混乱のもととなる。
規格本文中にあるスタッドとダウエルピンはそれぞれ、植込みボルトとノックピンの
ことである。
ダウエルピンは JIS B 1355 がその規格であるが、呼び方としては今でもノックピン
のほうが一般的である。
スタッドは規格そのものが植込みボルトとなっており、スタッド(stud) という語
は、規格名称 植込みボルト の下に Studs と記されている(JIS B 1173参照)。
また、JIS B 0101 ねじ用語 でも参考としての対応英語として出ているだけであ
る。
規格で説明されていない語彙が規格文中に突然出てくるのは、批判ばかりの政党にか
かれば、いかがなものかとなる。
ついでながら、冬用タイヤでおなじみのスタッドレスタイヤのスタッドは、同じ英語
の stud であるが、日本語では、鋲 となる。
製品の幾何特性仕様(GPS)ープリズムの角度及びこう配の基準値 の頁
プリズムは、一般には三角プリズムに代表される光学素子のことになるが、この規
格でのプリズムは本文中にあるように、交差する二つの平面によって区切られた部分の
ことである。
この規格の名称に使われているプリズムは、光学素子のプリズムと誤解されるので
あろうか、現在はくさび形体と変更になり規格そのものも、第一部:角度及び勾配の基
準値 JIS B 0615-1 第二部:寸法及び公差の指示方法 JIS B 0615-2 と、二つに
分けられている。この頁では旧規格をそのまま掲載した。
くさびはプリズムという名称よりはよいと思うが、イメージ的には角度の大きいもの
に対してはどうかと思うところはある。この規格でも、くさびは小さい角度をもつプリ
ズムと規定されている。もともとは三角形を意味する言葉らしいので、くさび形体とし
ているので良しとしておきたい。ただし小さい角度と、大きい角度の境界は示されてい
ないようである。
規格名称に使われている"勾配"という語は、以前の規格では"こう配"とひらがな
混じりの表現になっていたが、今回は、"勾配"となった。これはよいことなのだが、
どうせなら"くさび"も"楔"にしておいてもらいたかった。
幾何特性仕様(GPS)は、国際規格の翻訳であるので、時折おかしな表現が出てくる
ことがある。このことは以前にも述べたが、そのほかにも、妙にひらがな表記のことが
あったりする。規格の内容以前に日本語の表現はよく検討してもらいたいものではあ
る。このブログの以前の記事を見てみると、下手な表現、まずい表現、おかしな表現は
ないわけではないので、そのようなことは言えた義理ではないのだけれど。
製品の幾何特性仕様(GPS)ー円すいのテーパ比及びテーパ角度の基準値
の頁
表2 特定用途の円すいの選択 の適用欄には、ジャコブステーパ、モールステー
パ、ブラウン&シャープテーパの三つの名前がある。
モールステーパは、一般に広く使われており、JIS規格にも上記の関連規格以外に、
B 3301 テーパゲージ―モールステーパ及びメトリックテーパ
B 4302 モールステーパシャンクドリル
B 4306 モールステーパシャンクロングドリル
B 4401 モールステーパ及びメトリックテーパ用リーマ
B 6163 モールステーパスリーブ及びモールステーパシャンクソケット―形状・寸法
の規格がある。
モールスとは、これを発明した機械工の名前であるが、規格化するときに実際に使わ
れていた寸法をそのまま使用してしまったため、テーパ角度はばらばらである。統一さ
れていれば、製作、測定、などで有利な点があるだろうし、現在 JIS で規定されてい
る、0~6番の中でも多少の互換性が出てきたはずである。
その反省からだろうか、メトリックテーパができたようである。メトリックとはメー
トルのこと。メートルねじなども今はメトリックねじと呼ぶらしい。
テーパ比が、1:20で統一されていて、呼びは、METが使われる。寸法は MET 4
及び6が MT0より下のサイズ、MET80及び 100 が MT 6より上のサイズとなって
いる。MT0~6にあたるものは規定されておらず、したがってさほど普及はしていな
いものと思われる。
ブラウン&シャープは、工作機械メーカーの名前である。テーパ比は1:24である。
略語は、BSが使われ、JISではBS1~3が規定されているが、実際はもっと多くBS18
まであるようである。
ジャコブステーパは、主にドリルチャックに使われている。略語は JT だが名前の
由来は全く不明である。JIS B 4634 ドリルチャックの規定では、テーパ比は同じでな
く番号も、0、1、2、2S、21/2、3、4、5、6、33,と様々である。
表2の適用欄に、フライス盤主軸端など、と記載されているテーパ比 7:24 のも
のは、B 6101 7/24テーパの主軸端及び及びシャンク で規定されている。呼び方は
7/24テーパになるのだろうが、ナショナルテーパと呼ばれていたもののためか略語
は NT が使われているようである。
工作機械などに使われているテーパは、種類も多く、実際に使用されているものを規
格にしたことが出発点である。そのため規格自体もいまだにまとまりがないようであ
る。したがって今後は、論理的な観点からの整理がなされていくものと思われるし、大
胆な変更がされことを期待したい。