JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

図形の省略

  このブログは、JIS規格の製図、なかでも機械製図に関するものを掲載しています。 

 この頁では、JIS規格の機械製図を説明し、JIS規格とは違う観点からの解説や

コメントを述べています。

 

 一般事項

  図示を必要とする部分を分かりやすくするために、次のように示すのがよい。

a) かくれ線は、理解を妨げない場合には、これを省略する。

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かくれ線の省略例(B矢示部)

b) 補足の投影図に見える部分を全部描くと、図がかえって分かりにくくなる場合に

   は、部分投影図または補助投影図としてあらわす。

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部分投影図の例1

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部分投影図の例2     補助投影図の例

 

 以上の項目は、このように描きなさい、ではなく、次のように示すのがよい、とやや緩やか。

 図面の目的は、製図総則にあるように、図面使用者に要求事項を、確実に伝達することにある。確実に伝達するのにはわかりやすさが第一である。わかりやすくするために、必要でないもの、余分なもの、は描かない。したがって省略できるものは省略してよいのだが、省略したものを、描き忘れていると捉えられてしまう恐れがある。

 特に製図の初心者はその傾向にあるだろう。最初に教わるのは正し描き方、というか基礎の描き方き方、省略を教わるのはその次の段階と、どうしてもなってしまうので仕方のないことではある。

 図面にこの部分は省略図ですといちいち記入するわけではないので、作図者の意図ははっきりと伝わるわけではないが、図面の全体がしっかり描かれていれば、なんとなく図面とはこういうものだと伝わると思う。自信をもって省略してもらいたいものである。

 

c)  切断線の先方に見える線は、理解を妨げない場合には、これを省略するのが良

   い。

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切断面の先方に見える線の省略例

 

 これも同様である。省略できるものは省略すべきである。省略したほうがわかりやすくなるのは間違いない。

 

d) 一部に特定の形を持つものは、なるべくその部分が図の上側に現れるように描く

   のが良い。例えば、キー溝をもつボス穴、壁に穴若しくは溝を持つ管又はシリン

   ダ、切割リをもつリングなどを図示する場合には下の例によるのが良い。

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特定の形を上側に現れるように描く例

  Zの法則なるものがある。人はチラシなどを見る場合、視線は左上ー右上ー左下ー右下のようにZ形の順に動く、というものである。したがって、特定の形のある部分は上側にしておいたほうが目に留まりやすい。ということなのだろうが、これがどうして図面の省略の項に入っているのか不明。

 また、上に描くのが良いと、なっているので必ずしも上に描かなくてはならないということではない。

 

e)ピッチ円上に配置する穴などは、側面の投影図(断面図も含む。)においては、ピ

  ッチ円が作る円筒を表す細い一点鎖線と、その片側だけに1個の穴を図示(投影関

  係にかかわりなく)し、ほかの穴の図示を省略することができる(部分投影図の例

  2及び下図参照)。この場合には、穴の配置はこれを表す図に示すなどの方法で明

  らかになっていなければならない。

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側面図に現れる穴の簡略化の例

 

 穴などの図示は 側面図の場合、片側は省略してかまわない。もちろん省略せずともよい。ただし位置は示さなければならず、細い一点鎖線で示す。スペースのないところでは、一点鎖線でなく細い実線の簡略表示でもよい。

 

  対称図形の省略

  図形が対称形式の場合には、次のいずれかの方法によって対称中心線の片側を省略してもよい。

 

a) 対称中心線の片側の図形だけを描き、その対称中心線の両端部に短い2本の平行

   細線(対称図示記号という。)を付ける。

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対称図示記号の指示例

b) 対称中心軸の片側の図形を、対称中心線を少し超えた部分まで描く。この場合に

   は対称図示記号を省略する。

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対称図示記号を用いない例

 対称図形の片側を省略するときは、以上のa)かb)のどちらかになる。a)の場合は対称図示記号が必要。b)の場合は対称図示記号は省略だが、つけていると間違いかは微妙なところ。わざわざつけて間違っていると思われても癪なのでつけておかないほうが良いか。

 

  繰り返し図形の省略

 同種同形のものが多数並ぶ場合には、次によって図形を省略することができる。

a) 実形の代わりに図記号をピッチ線と中心線との交点に記入する。ただし、図記号

   を用いて省略する場合には、その意味を分かりやすい位置に記述するか、引出線

   を用いて記述する。

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図記号を用いた図形の省略例

 

 ピッチ線も中心線も細い一点鎖線で表す。この場合縦と横どちらがピッチ戦でどちらが中心線か明確でない。おそらく長いほうがピッチ線なのだろう。縦横のピッチ線または、縦横の中心線でよいと思うのだが。

 

b) 読み誤るおそれがない場合には、両端部(一端は1ピッチ分)若しくは要点だけ

   を実形または図記号によって示し、他はピッチ線と中心線との交点で示す。ただ

   し、寸法記入によって交点の位置が明らかな場合には、ピッチ線に交わる中心線

   を省略してもよい。

    なお、この場合には、繰り返し部分の数を寸法とともに、又は注記によって指

   示しなければならない。

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中心線を用いた繰り返し図形の省略例

 上図c)の場合、横の一点鎖線がピッチ線、縦の一点鎖線が中心線。この程度の図形の形状なら、一か所だけ描いておくだけで充分。

 ピッチ線と中心線は、前述の線と文字の項で、線の種類及び用途の表中で説明されている。ピッチ線は、繰り返し図形のピッチをとる基準をを表すのに用いる、と定められており、線の用法の図例では下図の、4.4で示されている。

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線の用法の図例

 但し、Z8114製図ー製図用語では同じ図で短いほうの線がピッチ線となっている。

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寸法記入によって交点の位置が明らかな繰り返し図形の省略例

 

 

 この場合、Φ8の穴が、上側と下側、ピッチ12mmで14ピッチぶん。左右両側同じくピッチ12mmで7ピッチぶんできる。

 ▢X▢ の場合前が数で後ろ側が寸法となる。紛らわしい場合、全体の個数のところを42個XΦ8と表示してよいのでは。ピッチ寸法はP12などとも表示される。

 

  中間部分の省略

  同一断面形の部分(下の例1参照)、同じ形が規則正しく並んでいる部分(例2参照)、または長いテーパなどの部分(例3参照)は紙面を有効に使用するために中間部分を切り取って、その肝要な部分だけを近づけてて図示することができる。

  例1 軸、棒、菅、形鋼

  例2 ラック、工作機械の送りねじ、橋の欄干、はしご

  例3 テーパ軸

 この場合、切り取った端部は破断線で示す。

 なお、要点だけを図示する場合、紛らわしくなければ、破断線を省略してもよい。また、長いテーパ部分またはこう配部分を切り取った図示では、傾斜が緩いものは、実際の角度で示さなくてもよい。

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中間部分の省略例

 機械製図の規格なのに、わざわざ工作機械の、と入れていたり、橋の欄干やはしごを例に出しているのが面白い。他に適当な例はなかったのか。

 切り取った端部の 破断線は省略してよいので、普通の場合省略して差しつかえない。破断線は2種類ある。同一図面で両方の使用は特に否定されていないので、特別の意味がある場合は変えてもよいのだろうが、統一しておくべきか。

 旧規格で円筒部の破断部を下図のようにしていたが、現在でもいまだに使われているようである。

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中間部分の省略例(旧規格)

 テーパ部は傾斜が急の場合、テーパ部の長さはさほど長くならないので、ほとんどb)の描き方になる。

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テーパ軸の中間部分の省略例