このブログは、JIS規格の製図、なかでも機械製図に関するものを掲載しています。
この頁では、JIS規格の機械製図に関係する規格を説明し、JIS規格とは違う観
点からの解説やコメントを述べています。
歯車製図(続き)
JIS B 0003
歯車の図示
部品図の要目表及び図の記入事項
歯車の部品図は、要目表及び図を併用し、それぞれの記入事項は、次による。
a) 要目表には、歯車諸元を記入する。必要に応じて、加工、組立て、検査などに関
する事項を記入する。
JIS B 1701-1 及び JIS B 1701-2 また、精度については、JIS B 1702-1, JIS
B 1702-2, JIS B 1702-3 及び JIS B 1704 を参照。
b) 図には、要目表に記載された事項から決定できない寸法を記載する。また、必要
に応じて基準面を記入する。
c) 材料、熱処理、硬さなどに関する事項は、必要に応じて要目表の注記欄または図
中に適宜記入する。
d) 前頁に、各種歯車の部品図の例を示す。形状、数値、注記内容などは、全て例示
であり、歯車特有の寸法以外は、記入を省略したものである。
注記 バックラッシについては 、JIS B 1705 及び日本歯車工業会規格 JGMA
1103-01 に、また、歯当たりについては、JIGMA 1002-01 に例が記載さ
れている。
なお、要目表にある*印をつけた事項は、必要に応じて記入する。
e) この規格の図の寸法には、寸法許容差を省略したものがあるが、実際の図面に
は、必要な寸法許容差をすべて記入する必要がある。
図示方法
線の用い方
線の用い方は、次による。
a) 歯先円は、太い実線で表す。
b) 基準円は、細い一点鎖線で表す。
c) 歯底円は、細い実線で表す。ただし、軸に直角な方向から見た図(以下、主投
影図という。)を断面で図示するときは、歯底の線は太い実線で表す(前頁図、
及び下図参照)。
なお、歯底円は記入を省略してもよく、特に、かさ歯車及びウオームホイール
の軸方向から見た図では、原則として省略する(前頁図参照)。
d) 歯すじ方向は、通常3本の細い実線で表す(前頁図及び下図参照)。
e) 主投影図を断面で図示するときは、外はすば歯車の歯すじ方向は、紙面から手前
の歯の歯すじ方向3本の細い二点鎖線で示す(前頁図)。内はすば歯車の歯すじ
方向は、3本の細い実線で表す(前頁図参照)。
歯面形状の詳細の図示
歯面形状の詳細の図示については、前頁図はすば歯車に示す。
歯厚の詳細及び寸法測定の方法の図示
歯厚の詳細及び寸法測定方法を明示する必要があるときは、図面中に図示する。その一例を下図に示す。
歯の面取りの図示
歯の面取りの図示については、その一例を、下図に示す。
歯の位置の図示
歯の位置を明示する必要があるときは、下図の例による。
歯車の図示は、前頁でも述べた様に、要目表と図で一つの図面となる。
要目表に記入する項目は、最後に附属書で参考文献に掲げられている規格を参照する
ことになる。
線の用い方で注意が必要なのは、歯底円である。細い実線で表すのだが、主投影図を
断面で表す場合太い実線となる。断面とそうでない場合で線の太さが違う。
主投影図は軸に直角な方向から見た図だが、歯車以外であったら、側面図になることが
多い。
歯底円は、かさ歯車、ウオームホイル、では原則省略であるので、他の歯車でも特に
必要がある場合以外は、描かなくてよい。
歯の面取りの例図は、端面側にも10度の面取りがあるので、解りずらいものとなって
いるが、歯面を歯すじ方向に45度の面取りをするということであろうか。
かみ合う歯車の図示
かみ合う一対の歯車の図示は、下図の例による。かみ合い部の歯先円は、共に太い実
線で表す。主投影図を断面で図示するときは、かみ合い部の一方の歯先円を示す線は、
細い破線又は太い破線で表す。
なお、かみ合う歯車の簡略図は下図の例による。
附属書A
(参考)
参考文献
JIS B 1701-1 円筒歯車ーインボリュート歯車歯形―第1部:標準基準ラック歯形
JIS B 1701-2 円筒歯車ーインボリュート歯車歯形 第2部:モジュール
JIS B 1702-1 円筒歯車ー精度等級 第1部:歯車の歯面に関する誤差の定義及び許
容値
JIS B 1702-2 円筒歯車ー精度等級 第2部:両歯面のかみ合い誤差及び歯溝の振れ
の定義並びに精度許容値
JIS B 1702-3 円筒歯車ー精度等級 第3部:射出成形プラスチック歯車の歯面に関
する誤差及び両歯面かみ合い誤差の定義並びに精度許容値
JIS B 1704 かさ歯車の精度
JIS B 1705 かさ歯車のバックラッシ
JIS B 1723 円筒ウオームギヤの寸法
JGMA 1002-01 歯車の歯当たり
JGMA 1103-01 歯車精度―平歯車及びはすば歯車のバックラッシ並びに歯厚
かみ合う歯車の、主投影図を断面で示すとき、かみ合い部の一方の歯先円を示す線は
細い破線又は太い破線である。線種が限定されずどちらでもよい場合はまれな例であ
る。
歯車は普通単体では使用されず、組み合わされて使用されるので、部品図にするとき
は、相手歯車との組み合わせ状態がどのようであるか必要となる。これを説明するもの
が簡略図であろうか。したがって詳細の寸法の記入は必要ない。
インボリュート歯形とサイクロイド歯形
歯車の歯形は、インボリュート歯形とサイクロイド歯形の二つが代表例として挙げら
れ、それぞれその特徴などが述べられていることが多い。
しかしインボリュートとサイクロイド、実は同じ種類の曲線である。言いかえればサ
イクロイド曲線の特別な場合がインボリュート曲線である。
インボリュートは、円の周りに巻き付けた糸の一端を緩みなくほぐすときに糸の端が
描く曲線である。
サイクロイドは、一つの円(転がり円)が他の円(基礎円)の上を転がる場合、その
円周上の一点が描く軌跡である。
ここで、サイクロイドの転がり円の半径を無限大にしたとき、すなわち、直線が基礎
円を転がるとき、これの軌跡は、巻き付けた糸をほぐす場合に他ならない。つまり、イ
ンボリュート曲線は転がり円が無限大になったときのサイクロイド曲線の特別な場合と
言える。
サイクロイド曲線は、時計歯車によく使用され、歯形の歯末(歯先側)はサイクロイ
ド、歯元(歯底側)は中心に向かう直線である。しかしこの直線も直線であるがサイク
ロイドである。
転がり円が基礎円を内転する場合、転がり円の半径が基礎円の半径の1/2なら、軌跡
は基礎円の直径となる。したがって、これもサイクロイドの特別な場合。
以上のことをまとめると次のようになる。
基礎円と転がり円の大きさと歯形曲線
基礎円半径 転がり円半径 外転による曲線 内転による曲線
R r=1/2R エピサイクロイド 直線(直径)
R r=∞ インボリュート -
なお、歯末のサイクロイドも実際には、円弧に置き換えたもので、もち論そのほうが
都合が良いわけであるが、いわば近似サイクロイドである。
サイクロイド歯車と称しているもののほとんどがこのタイプのものである。
この辺の詳細は、「小型歯車」(仙波正荘 著 日刊工業新聞)などの歯車専門書を
参照してください。