JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

図形の表し方



  投影図の表し方
 

  一般事項

a) 対象物の情報を最も明りょうに示す投影図を、主投影図又は正面図とする。

b) 他の投影図(断面図を含む。)が必要な場合には、あいまいさがないように、

   完全に対象物を規定するのに必要、かつ、十分な投影図及び断面図の数とする。

c) 可能な限り隠れた外形線及びエッジを表現する必要のない投影図を選ぶ。

d) 不必要な細部の繰り返しを避ける。

 

 上記についてコメントすると、”対象物の情報を最も明りょうに示す投影図が、主投影図又は正面図になる”ということ。図面にこれが正面図、これが側面図と記入するわけではない。

 ”必要、かつ、十分。可能な限り゛は、どこまでが必要、どこまでで十分といえるか、設計者や図面製作者の能力、センスが問われるところである。

 不必要な細部の繰り返し、は次に述べる部分投影図や局部投影図などが、これを避けるための方法である。この項目は十分に理解されているとはいいがたい。前述したが、製図では必要ないものは描かない。

 

  主投影図

a) 主投影図には、対象物の形状・機能を最も明りょうに表す面を描く。

   なお、対象物を図示する状態は、図面の目的に応じて、次のいずれかによる。

 1)組立図などでは、対象物を使用する状態。

 2)部品図など、加工のための図面では、加工に当たって図面を最も多く利用す

   る工程で、対象物を置く状態。

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旋削加工の場合の例    フライス加工の場合の例

 

 3)特別な理由がない場合には、対象物を横長に置いた状態。

 

 組立図から部品図を起こす場合、組立図と逆向きになることは多い。逆向きにすることで寸法記入に間違いが起きる。間違いを避けるために無理に向きをかえなくてもよいと思う。加工者はその辺の事情を理解しておく必要がある。

 加工に当たって図面を最も多く利用するとは、加工工数か加工時間か、どちらを選ぶか、また特別な理由に当てはまるのは何か、これも図面製作者のセンスである。

 

b) 主投影図を補足する他の投影図は、できるだけ少なくし、主投影図だけで表せる

   ものに対しては、他の投影図は描かない。

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少ない投影図の例

  例図に示したような部品は実際にはまずない。面取りはどの部分でも行われるし、首部には逃げ(ネッキング)がつけられることがある。そのそれぞれに寸法が指示されるし、他の寸法には許容値が記入される。さらには、加工方法、表面性状(面粗さ)幾何公差、などを記入する。これらを記入するため、必要でない投影図を追加することはままある。

 

c)互いに関連する図の配置は、なるべくかくれ線を用いなくてもよいように示す。

  ただし、比較対象することが不便になる場合には、この限りではない。

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かくれ線を用いない工夫の例     比較対照する穴の例

 

 

  この場合も同様で、かくれ線がないようにしたほうがいいか、比較対象がわかりやすくなるか、どちらを選ぶかは図面製作者のセンスである。

 

   部分投影図

 図の一部を示せば足りる場合には、その必要な部分だけを部分投影図として表す。この場合には、省いた部分との境界を破断線で示す。ただし明確な場合には破断線を省略してもよい。

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部分投影図の例(破断線省略)

 

 

   局部投影図

 対象物の穴、溝など一局部だけの形を図示すれば足りる場合には、その必要部分を局部投影図としてあらわす。投影関係を示すためには、主となる図に中心線、基準線、寸法補助線などで結ぶ。

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局部投影図の例

 


   部分拡大図

 特定部分の図形が小さいために、その部分の詳細な図示、寸法などの記入ができないときは、該当部分を別な箇所に拡大して描き、表示の部分を細い実線で囲み、かつ、ラテン文字の大文字で表示するとともに、その文字及び尺度を付記する。ただし、拡大した図の尺度を示す必要がない場合には、尺度の代わりに”拡大図”と付記してもよい。

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部分拡大図の例(拡大図と付記する場合)

 

 拡大する部分を細い実線で囲むときは、円で囲むのが一般的。規定には形状は指定されていないので四角でも三角でもよいのだが、例図が円であるからだろう。

 

 

  回転投影

 投影面に、ある角度をもっているために、その実刑が現れないときには、その部分を回転して、その実刑を図示することができる。

 なお、見誤るおそれがある場合には、作図に用いた線を残す。

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アームの回転図示の例アーム

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作図に使用した線を残さない例   作図に使用した線を残した例

                回転投影図の例

 

  補助投影図

 斜面物がある対象物で、その斜面の実形を表す必要がある場合には、次によって補助投影図で表す。

a) 対象物の斜面の実形を図示する必要がある場合には、その斜面に対向する位置に

   補助投影図として表す。この場合、必要な部分だけを部分投影図または局部投影

   図で描いてもよい。

b) 紙面の関係などで、補助投影図を斜面に対向する位置に配置できない場合には、

   矢示法を用いて示し、その旨を矢印及びラテン文字の大文字で示す。ただし、図

   に示すように、折り曲げた中心線で結び、投影関係を示してもよい。

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補助投影法を用いた例

 

 

 補助投影図(必要部分の投影図も含む。)の配置関係が分かりにくい場合には、表示の文字のそれぞれに相手位置の図面の区域の区分記号を付記する。

 

 補助投影図を使う場合は上記のa)が一般的か。b)の場合は寸法線などが入れにくくなるし、区域の区分記号は、これを使うほど離れた位置には描かない。そもそも格子参照方式などまず使わない。

 

 今回の項目ではJIS規格から外れた描き方は見受けられないようである。規格が長い間変更されていないからであろう。