JISによらない機械製図

JISの機械製図に規定されていない描き方の説明と、偏見的な解説をしています。

寸法公差及びはめあいの方式ー第1部:公差,寸法差及びはめあいの基礎

    寸法公差及びはめあいの方式―

     第1部:公差,寸法差及びはめあいの基礎 

               (抜粋)

          JIS B 0401-1

 

 この規格は、寸法公差及びはめあいについてのものである。これらを図面にする場合

は、製図ー公差表示方式の基本原則(JIS B 0024)の規定に基づくことになるので

ここでは概要を述べる。なおJISハンドブック 製図 では一部省略されて掲載され

ているのでさらに省略して記載する。

 

 

 序文  ・・・・・・(省略)・・・・・・特別のはめあいの状態が二つのはまり合う

加工物の間に要求される場合には、必要なすきま又はしめしろをもたすために、基準寸

法に対して正又は負のどちらかの許容差すなわち、“寸法差” を持たせることが必要で

ある。

 産業及び国際貿易の発展に伴って、公式な寸法公差及びはめあいの方式を開発するこ

とが、最初に産業界で、次に国家レベルで、最後に国際レベルで必要となった。

・・・・・・・・・・・・(省略)

1. 適用範囲  この規格のこの部は、寸法公差及びはめあいの方式の基本事項に加

えて、基本公差及び基礎となる寸法許容差の計算値について規定する。公差方式の適用

に際しては、これらの数値を用いる(付属書AA.1も参照)。

 この規格のこの部は、用語及び定義とともに関連する記号についても規定する。

2. 適用分野  寸法公差及びはめあいの方式は、単純形状部品用の公差及び寸法差

の方式である。分かりやすくするために、主として円形断面の円筒加工物にこれらを用

いる。この規格に示す公差及び寸法差を円形断面の加工物以外にも等しく適用すること

ができる。

 特に、一般的な用語である ”穴” 又は ”軸” は、溝の幅又はキーの幅のような加

工物を挟む平行二平面(又は正接平面)の問題をも意味する。

 また、この方式は、はまり合う円筒形体のはめあいに、又はキーとキー溝との間のは

めあいなどのような平行二平面をもつ加工物のはめあいについても適用する。 

  備考 この方式は、単純な形状以外の形体をもつ加工物のはめあいだけに適用する

ことを意図するものではない。この規格のこの部では、単純な形状は、円筒表面又は平

行二平面からなる。

3. 引用規格 (省略)

4. 用語及び定義 (省略)

4.1 shaft) 円筒形でない形体も含み、加工物の外側形体を表現するために、慣

例によって使用する用語(2.も参照)。

4.1.1 基準軸(basic shaft)  (省略)

4.2 穴(hole) 円筒形でない形体も含み、加工物の内側形態を表現するために、慣

例によって使用する用語(2.も参照)。

4.2.1 基準穴(basic hole)(省略)

4.3 寸法  (size) (省略)

4.3.1 基準寸法 (basic size) 上の寸法許容差及び下の寸法許容差を適用することに

よって、許容限界寸法が得られる基準となる寸法(図1)。

     備考 (省略)

4.3.2 実寸法(actual size) 測定によって得られた形体の寸法。

4.3.2.1 局部実寸法(actual  locai size) ある形体の任意の断面上の個々の距離、す

なわち、相対する2点間で測定した寸法。

4.3.3 許容限界寸法(limits of size) 実寸法がそれらの間に存在するように定めた、

ある形体の許容することができる二つの極限の寸法。

4.3.3.1 最大許容寸法(maximum limit of size)  ある形体の許容することができる

最大の寸法(図1)。

4.3.3.2 最小許容寸法(least limit of size)   ある形体の許容することができる最小の寸法(図1)。

4.4 寸法公差方式(limit system) (省略)

4.5 基準線(zero line) 寸法の許容限界及びはめあいを図示するときに、基準寸法

を表し、寸法許容差及び寸法公差の基準となる直線(図1)。

 便宜上、基準線は、正の寸法許容差が上側に、負の寸法許容差が下側になるように水

平に引く(図2)。

 

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4.6 寸法差  (deviation) (省略)

4.6.1 許容差  (iimit deviations)   上の寸法許容差及び下の寸法許容差。

4.6.1.1 上の寸法許容差   (ES,es)  (upper deviasion) 最大許容寸法と対応する基

準寸法との代数差(図2)。

4.6.1.2 下の寸法許容差 (EI,ei)  (lower deviation) 最小許容寸法と対応する基準

寸法との代数差 (図2)。

4.6.2 基礎となる寸法許容差  (fundamental deviation)   寸法公差及びはめあいの方

式では、基準線に対する公差域の位置を定める寸法許容差(図2)。

     備考 これは、上および下の寸法許容差のどちらかであり、慣習的に基礎とな

        る寸法許容差は基準線に最も近いほうの寸法許容差である。

4.7 寸法公差(size tolerance) 最大許容寸法と最小許容寸法との差、すなわち、上

の寸法許容差と下の寸法許容差との差。

    備考 寸法公差は、正負の符号をもたない絶対値である。

4.7.1 基本公差(IT) (standard tolerance) 寸法公差及びはめあいの方式では、こ

の方式に属するすべての寸法公差。

    備考 記号ITの文字は、”International  Tolerance"  の等級を表す。

4.7.2 公差等級(standard tolerance grade) 寸法公差及びはめあいの方式では、す

べての基準寸法に対して同一水準に属する寸法公差の一群(例えば、IT7)。

4.7.3 公差域(tolerance zone) 寸法公差の簡略化した図において、寸法公差の大き

さと基準線に対するその位置とによって定まる最大許容寸法と最小許容とを表わす2本

の直線の間の領域(図2)。

4.7.4 公差域クラス(tolerance class) 公差域の位置と公差との組合わせに用いる用

語。例えば、h9,D13など。

    備考 公差域クラスを寸法公差記号といってもよい。

4.7.5 公差単位(ⅰ,I)  (standard tolerance factor) 寸法公差及びはめあいの方式で

は、基準寸法の関数とする係数であり、この方式の基本公差を定めるための基礎として

使用する。

    備考1. 公差単位ⅰは、500mm以下の基準寸法に適用する。

      2. 公差単位Ⅰは、 500mmを超える基準寸法に適用する。

4.8 すきま(clearance) 軸の寸法が穴の寸法よりも小さい場合の、組み合わせる前

の穴と軸との正の寸法の差(図3)。

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4.8.1 最小すきま  (minimum clearance) すきまばめにおいて、穴の最小許容寸法

と軸の最大許容寸法との正の差(図4)。

4.8.2 最大すきま(maximum clearance) すきまばめ又は中間ばめにおいて、穴の

最大許容寸法と軸の最小寸法との正の差(図4及び図5)。

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4.9 しめしろ(interference) 軸の寸法が穴の寸法よりも大きい場合の、組み合わせ

る前の穴と軸との負の寸法の差(図6)。

4.9.1 最小しめしろ(minimum interference) しまりばめにおいて、組み合わせる

前の穴の最大許容寸法と軸の最小許容寸法との負の差(図7)。

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4.9.2 最大しめしろ(maximum interference) しまりばめ又は中間ばめにおいて、

組み合わせる前の穴の最小許容寸法と軸の最大許容寸法との負の差(図5及び図7)。

4.10 はめあい(fit) 組み立てる二つの形体の組み合わせる前の寸法の差から生じる

関係。

    備考 はめあいで、はまりあう二つの部品は、共通の基準寸法をもつ。

4.10.1 すきまばめ(clcarance fit) 穴と軸とを組み立てたときに、常にすきまができ

るはめあい。すなわち、穴の最小寸法が軸の最大寸法よりも大きいか、又は極端な場合

には等しい(図8)。

4.10.2 しまりばめ(interference fit) 穴と軸とを組み立てたときに、常にしめしろ

ができるはめあい。すなわち、穴の最大寸法が軸の最小寸法よりも小さいか、または極

端な場合には等しい(図9)。

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4.10.3 中間ばめ(transition fit) 組み立てた穴と軸との間に 、実寸法によってすき

ま又はしめしろのどちらかができるはめあい。すなわち、穴と軸との公差域が全体又は

部分的に重なり合う(図10)。

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 4.10.4 はめあいの変動量(veriation of fit) 省略

    備考 省略

4.11 はめあい方式(fit system) ある公差方式に属する軸と穴によって構成されるは

めあいの方式。

4.11.1 軸基準はめあいshaft basis system of fit) 種々の公差域クラスの穴と一つの

公差域クラスの軸を組み合わせることによって必要なすきま又はしめしろを得るはめあ

い。

 寸法公差及びはめあいの方式では、軸の最大許容寸法が基準寸法と一致する。すなわ

ち、軸の上の寸法許容差が零であるはめあいをいう(図11)。

4.11.2 穴基準はめあい(hole-basis system of a fit) 種々の公差域クラスの軸と一つ

の公差域クラスの穴を組み合わせることによって必要なすきま又はしめしろを得るはめ

あい。

 寸法公差及びはめあいの方式では、穴の最大許容寸法が基準寸法と一致する。すなわ

ち、穴の下の寸法許容差が零であるはめあいをいう(図12)。

 図11 軸基準はめあい  図12 穴基準はめあい方式

      図省略

4.12 最大実体寸法  省略

4.13 最小実体寸法  省略

 

 

 この規格の中で混同されて使用されているのは、公差と許容差あるいは許容寸法であ

ろうか。よく公差は、±0.02などといった言葉を耳にするが、この規格で述べられてい

るように、公差は絶対値であるので、この場合は公差は 0.04 となるのが正しい。

 上の許容値が+0.02 で、下の許容値が-0.02 が正確な表し方とわかっていても、つ

い簡単に公差と言ってしまうことが多いのは致し方ないか。

 上がいくつ、下がいくつ、と話していると、他の人から、「なに、血圧の話です

か。」と聞かれてしまう。